ポッ●ーゲーム
■■■同日/教室内■■■
──おっとイケね、やり過ぎた☆
壁ドンしようと思ったら、壁をぶち抜いちまったぜ!
ま、でもしゃーないよな! オレに蓄積された怒りがこうさせたんだ、オレは悪くねぇよ。うん。
──それに、最近の恋愛モノのヒロインって色んな意味で強い子が多いからさ! 中には、壁をぶち抜く純愛派のヒロインくらい居るって……知らんけど!!!
本日n回目の崩壊をした壁を目に、ウンウンと一人頷く。壁さん、ごめんよ。
で、まぁ後は適当に──
──目に涙を浮かべ、純愛風なセリフを口にし……最後は抱き締めて終了。
満足そうなお客に笑顔で会釈し、「何でこんなのに数千もの金を払うのだろう?」と不思議に思う。
まぁ、オレは身体が正気に戻るまでは大人しく仕事をするだけなので何とも言わんが──
「──8番席、境子ちゃん指名でポッ●ーゲーム入りましたぁ! ありがとうございます!!!」
「「「ありがとうございます!!!」」」
──う〜わ、マジかよ。
と、8番席へとオレの足が勝手に向かう。
ん、ちょい待ち? 8番席……8番???
オレが8番席に辿り着くと──其処には、某、ゲン●ウなポーズをした綾ちゃんの姿があったのだった。
──あ〜〜〜〜〜(察し)
■■■
「はいオムライス二つお待たせ! ケチャップの方はもう掛けておいたからね☆」
──そう言って、テーブルに乗せられたオムライス。
ティアマトちゃんのには、『可愛いね♡』とケチャ文字が書かれており……
……私のには『色欲の化身』と、書かれていた。
あらぁ〜〜〜^ ^
やっぱあのガキとは一度ゆっくりと話し合って、上下関係というモノを叩き込まないとダメね☆
「あ、すみません、コレ……お願いできますか?」
私の隣から、そう真面目な声で注文する綾ちゃん。
若干まだ鼻声だが……目は、マジだった。
「お、ポッ●ーゲーム? 指名は誰に──」
「──境子さんでお願いします!!!」
食い気味に答える綾ちゃんに、一瞬、久保は憐れむ様な視線を向けるが、直ぐに笑顔で注文を受ける。
さて、私はどうしましょうかね?
──馬に蹴られる趣味は無いし、何なら、間近で青春を眺めたい欲望だってある。
でも、さっきから脳内にチラチラと佐藤(父)の顔が出てくるのよ? サボってないで働きなさい。
↑が鬱陶しいから、止めようか否か迷っていると──
「──やめとけ、佐藤!!!」
と、久遠くんが悲痛な悲鳴をあげる!
……どしたの? と、久遠くんの方へと顔を向ける私と綾ちゃん。
すると、彼は青い顔で一言、
「先生には絶対に勝てないからやめとけ……」
と…………特大の爆弾をぶち込んで来やがった!
その言葉に固まる私と、綾ちゃん。
いえ、綾ちゃんに至っては──宇宙綾ちゃん顔になっていたと言うべきでしょうね?
「あれ? もしかして舎弟くんも先輩にやられた口?」
「も……って事は、久保さんもッスか?」
──何ですとッッッ!!?!?
「先輩、強いよね〜。今のトコ、勝てた人が居ないから無敗王ってウチでは呼ばれてるよ」
「っスね……オレなんて一瞬でやられたッスよ」
──む、無敗王!? い、一瞬で!???
た、確かにアイツは情緒とか多分あんま無いでしょうけど!? こ、後輩と舎弟相手に!!?
「ちなみに、先輩いま30連勝中だからね! 初黒星なるか!!?」
「──いや無理っスよ。オレ、かれこれ先生とは10回近くやってますけど、まだ一勝も出来てないんスよ? 佐藤は、多分初めてだろうし無茶ですって!!!」
30連勝、10回近く……おいおいおいおいッッッ、流れ変わったなぁ!!???
「お待たせ致しました♪」
と、其処へ響く鈴の様な声。
ふと、綾ちゃんの方を見ると、
「──え? どういう事ですかコレ、久保さんと龍鬽くんとポッ●ーゲーム???それはつまりもう二人とはそういうアレでそれなのに私ともポッ●ーゲームをするって事は、いやでも仕事って、え?そういう仕事が???お客さんだったら誰とでもブチュブチュするってことでファイナルアンサーなんですか恋愛ってそういうモノなんですか???どうなん──(以下略)」
……と、某、ゲン●ウさんなポーズでブツブツと呟いていらっしゃった。
「ではですね、コチラの袋の中からポッ●ーを一本選んでください」
が、そんなの関係無ぇ! と、ばかりに境子ちゃんはポッ●ーが大量に入った袋を綾ちゃんに手渡す。
──なんてスルースキルなの!? アンタ、綾ちゃんの死んだ魚の目が見えてないの如月!!?!?
「……コレで」
「おい佐藤!? 悪い事は言わねぇからその隣のにしとけ! そっちの方が多分強度がある!!!」
………………ん? 強度???
「あ、舎弟くんダメだよ助言しちゃ!」
「で、でも!!!!!」
「運命のポッ●ーを選ぶのは当人なんだ……その人自身で決めなきゃいけないんだよ。理解るね?」
「うッ──はい……」
いや──全く理解らんのだが???
なに? 運命のポッ●ーって?????
「じゃあ、私はこの子にしますね!」
え? 何で境子ちゃんまでポッ●ーを選んでるの? そして何で──構えてるの???
と、いうか──そもそもコレ、私が知ってるポッ●ーゲームなのかしら?????
「じゃあ、審判は僕がするね! 両者、構え!」
「佐藤……頑張れよ!!!」
「──?????」
うん。綾ちゃん、その気持ち理解るわ。
(あれ? 何か、私が知ってるのと違う???)
↑、なのよね!? 大丈夫、そう思っているのは貴女だけじゃないわ! 私もよ!!!
──宇宙顔のまま、とりま見よう見まねで境子ちゃんと同じ構えをする綾ちゃん。
「それでは──試合、開始!!!」
久保の開始の合図と共に、境子が動く!
電光石火の早業で、ポッ●ーを持っていた手を躊躇無しに真横へ振るう!!!
互いのポッ●ー同士がぶつかり合い、音もなく──綾ちゃんのポッ●ーのチョココーティングされた部分が折れ、宙へと舞った!
そして、
──コッ、コンッ……。
虚しい音と共に、テーブルの上へと……無惨にも、その残骸は落ちたのである。
(※ポッ●ーは後にスタッフが美味しく処理しました)
うん……だから、どうなのよ???
「勝者、先──境子ちゃん!!! コレで31連勝だね、おめでとう!」
「──はい! ありがとうございます!!!」
満面の笑顔で境子ちゃんは告げる。
「あー、その……残念だったな、佐藤…………」
「………………」
対して、綾ちゃんは何か複雑な表情をしていた。
秒速で終わったゲーム&予想だにしていなかった純粋過ぎるゲーム内容……自分の穢れていた心。
それら全てを内包した表情で──
──彼女は叫ぶ。
「ッ、穢れていたのは──私の心の方でしたッ!!!」
と……暗く、深く沈んだ声で。
──彼女は、自ら、その罪を懺悔したのだった。
………………。
………………………………。
………………………………え? 私???
ねぇ、ボウヤ達……大人はね、もう懺悔しても手遅れな程に穢れている生き物なの。
だから、しないわ。懺悔なんて。
そう、卑怯なのよ。大人はね……(遠い目)
■■■
「──技術部作の人工知能は、この学校の設備の大半を管理しており……」
『『『CQ、CQ!!!!!
全校生徒──そして、本校にご来客の皆様にご連絡申し上げます!
──校長のアホが暴走しました!
もう一度言います、校長のダァホが暴走しました!
なのでコレより、緊急依頼を僭越ながら私──教頭より発注させていただきたいと思います!!!』』』
「──は?????」
見てくれてありがとうございます!! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ