壁さん「あ、無理です」
■■■同日/厨房■■■
「8番、追加でらぶらぶソーダ一つ!」
「了解! 先にソーダ持ってってくれ! オムライスはまだ時間が掛かる!!!」
「OK、僕が持って行くよ!」
──はぁ、早く酔いが醒めて身体の自由が戻らねぇかな? 文化祭連続殺人編をはよ開幕させたいんだが。
自由になった右手をグッパグッパしながら、先に包丁の位置でも把握しておこうと周囲を見る。
──ん?
「……はい、コレ頼まれてたデータ。客の料理に混ぜてみたけど、今のところ変化は無しかな〜」
「おかし〜な? 実験では上手くいったんだが……」
アレは……ヒナちゃん先輩と、科学部の──
「──う〜ん、もしかして単に時間が掛かっちゃってるだけじゃない? ケチャップに混ぜたりとかしてるし」
「そうかな〜? だと良いんだが……あ、くれぐれも分量は間違えないようにな」
何の話だ??? ケチャップ? それに、分量?
「分かってるってば、スプーン一杯分でしょ?」
「──は? いや、スポイド一滴分だぞ???」
「「「………………え?????」」」
ん〜〜〜??? 何の話か理解らんが、なんか面白い事になりそうな気配がプンプンするなぁ〜?
ま、オレは今、身体の制御すら出来ないですし?
偶には、人のミスをニヤニヤと高みの見物するのもアリかなぁ? 身体の自由が戻るまでだけど。
『──主! こんな所でボーとされてどうしたんですか?? もしかしてお疲れに!?』
「ひゃあッッッ!!?!?」
び、ビックリしたぁーーーーーッッッ!!?
──って、何だ、ただの虫か。驚かすなよ、裏切りパパラッチが!
『むぅ! 裏切ってませんよ、コレは昨日の仕返しをしているだけです!!!』
あー、はいはい。
──そういやコイツには意思疎通の能力があったな。たく、変な思考ばかり受信を…………いや、待て。
オレの計画(文化祭連続殺人編)がバレるのは不味い。また酔わされかねん!
『…………計画?』
──チッ!
「2番、境子ちゃんに壁ドンオーダー!」
シャアッッッ!!! 神は我に味方せり!
「は〜い! 今行きます♪」
『あっ、主! …………計画って……???』
■■■同日/教室内■■■
「お待たせしました〜! こちら、らぶらぶソーダになります。オムライスはもうちょっとだけ待ってね〜!」
『ヽ(*^ω^*)ノ』
「──ゆっくりで大丈夫よ。別に急いでないしね」
そう言うと、久保は笑いながら、
「そう言ってもらえると助かるよ。あ、待ってる間──良かったら、特別メニューの方もどう?」
と──メニュー表の一番後ろのページを開け、楽しそうに見せてくる。
「その赤い字で書かれているのが特別メニューで、店員を指名する事も出来るよ」
ちな、一番人気は先輩だよ! とも、久保は自慢げに付け加える。
──すると、
「2番、壁ドンオーダー入ります!」
「「「──ありがとうございます!!!」」」
と、壁ドン?オーダーなるモノに……店員は皆一斉に感謝の言葉を口にした。久保もね。
「では、コチラへどうぞ。あ、念の為にこのプロテクターを装着けて、絶対に動かない様お願いします」
「は、はひ!!!」
──ん? あれ???
あの人って、私達に順番を譲ってくれた人よね?
あんな重装備して、何が始まるの???
「今回はどういう風にされます? あ、前回同様ヤンデレ風でいきます?」
「えと、じゅ……純愛風でぇ〜」
ん? 純愛……風???
「──了解しました! スタッフ、廊下の方は???」
「OKです!!!」
「よし! では、境子ちゃん純愛風でお願いします!」
と、インカムで指示を出すスタッフ。
それと同時に──タッタッタッ、と、誰かが厨房の方から飛び出し、重装備の人の方へと駆ける。
『スチャ──(`・ω・´)つ■』
『スチャ──(`・∀・´)つ■』
「スチャ──( ^ω^ )つ■」
「スチャΣ──( °Д°)つ■」
と、同時に沸くパパラッチ共&厨房から飛び出して来た存在を即座に認識しスマホを構えた綾ちゃん。
──てか、アレ……如月──境子ちゃんよね?
え、なに??? 何すん──ッ!?
──ドギャンッッッッッ!!!!!!!!
「???( ゜д゜)???」
「!?!!((((;゜Д゜)))))))??!?」
「:(;゛゜'ω゜'):つ■…………ピロン」
「ふふ、やっぱ先輩って凄いなぁ」
『きゃーーーーーッ⤴︎ 主ぃーーーーーッッッ♡』
『こっち向いてぇーーーーーッッッ♡』
…………い、今あった事をありのまま言うわよ?
境子ちゃんが駆けてくる
↓
重装備の人の隣に手を伸ばし、壁ドン
↓
壁さん「あ、無理です」
↓
壁さん御臨終。パパラッチ大歓喜
──い、以上よ。
し、しし信じられないでしょうけど、あ、あの娘……す、素手で壁をぶち抜いたのよ……((((;゜Д゜)))))))
「ひゅ──ッッッ」
「…………ッ、ねぇ、お願いだから、私を置いて……い、行かない、で……!」
目に涙を溜め、役者顔負けの演技をする境子ちゃん。
『勿論です、主!!!!!』
『死んでも一生側に居続けてやる!!!』
「はいはい、煩いよぉ〜二人とも」
と、騒ぐ二匹のパパラッチを久保が厨房へと引き摺ってゆく。けど──
──御免なさい。
私には、壁ぶち抜いたゴリラが何か言ってるわ……としか、思わないんだけど? え、これって私だけ???
「も、勿論だよ……き、境子ちゃん…………!」
「──ッ! ありがとう、モブ雄さん!!!」
と、モブ雄さんに抱き付く境子ちゃん。
「………………ぐすッ!」
──!? え、嘘でしょ? こんなクソ茶番で泣いてるの、綾ちゃん!!?
何処の世界にヒロインが壁ぶち抜く純愛風な恋愛があるのよ!? え、私がおかしいのコレ?!!
◆◆◆同日/職場◆◆◆
「──Σ_:(´ཀ`」 ∠):──ぬっ!」
「ん、どうしたんで御座るか?」
「──いま、綾が泣いてる気配を察知した」
「…………ふぅ、仕事のし過ぎで疲れているので御座るよ。顔でも洗ってくるでおすし」
「すみません、追加の書類持ってきたっす!!!」
「「「あ"ぁ"ぁーーーーーーーーッッッ!」」」
■■■同日/学内展示室■■■
「らぶらぶの実──その果汁を水に薄めるだけで、強力な惚れ薬になる。科学部協力、園芸部が作製」
見てくれてありがとうございます!! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ