VS 久保&悪魔
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「──大丈夫? 綾ちゃん、久遠??」
どう考えても大丈夫じゃ無さそうな二人に問えば、
「──大丈夫なワケ無いでしょ!? 早く二人の傷の手当てを!」
案の定、社長が噛みついてくる。
……あー、はいはい。じゃあ手っ取り早く、如月印の回復薬でも使いますかねぇ〜〜〜!
「パラサイト、回復薬プリーズ!」
つ回復薬
「はい、ありがとね〜。じゃあ二人とも、コレをグビッとお願いします!」
そう言って、回復薬を綾ちゃんと久遠に手渡す。
「……すみません、如月さん」
「すま、ねぇ──先生…………」
二人は俯いたまま告げ、回復薬を受け取った。
「気にする事無いわよ二人とも! 今回のはコイツの作戦ミスなんだから!!! あなた達は悪く無いわ!」
「──失礼な! オレは今のところバレる様な作戦ミスなんてしてませんよ!!?」
「アンタ目ぇ潰れてんの!? じゃあなに? 久遠くんと綾ちゃんのこの大怪我も作戦通りだって言うの??」
「──いいえ! 二人は大怪我なんてしてません!」
「してるじゃないのよ!?? 怪我を治療すからって事実を無かった事にするんじゃないわよこのお馬鹿!」
「してないもん!!! (ボソッ)……二人とも早く回復薬飲んで……グビッと、一気に!」
そしてこの口煩いBBッ──あ、間違えた。社長を黙らせてくれ!
──大丈夫だ。クッッッソ不味いかもしんないけど、楽にはなるから!
「ぷふッ……はい、では──いただきますね」
「ッ! ぅ、まじぃ…………」
回復薬が入った小瓶に口をつけ、二人ともその不味さにか、顔を顰める。
──だが、飲んでるな。アレを。
「…………よく飲めるわ、こんなの……」
「「「──え? 今なにか……」」」
「んッ⤴︎? どうしたの、二人とも?? ホラ、手が止まってるよイッキ、イッキ♪」
「?? そう言えば、如月?」
「はい? 何ですか、千尋さん」
ふと、千尋さんが眉を寄せ……訊いてくる。
「今更訊くのもアレだけど、あんな蛍光色な回復薬あったっけ? アタシ、見た事無いんだけど???」
「「「──へ?????」」」
「ン"ぶふッッッッッwww!!!」
◆◆◆ファーーー( ^Д^)σーーッwww◆◆◆
「──しゃ、社長www それ普通、回復薬出した時に言いませんw?」
あ"ーーーッ無理www 腹痛いw!
しかも真顔ッ! マジかぁ〜〜!!!!!
「え? 何??? 私、何かおかしな事訊いた!?」
「──い、いえ! 質問自体は予想してました。けど、タイミングですかね!!? ありがとうございます!」
本ッッッ当に、千尋さんのそういう所好きですよ、オレ! マジ愛してるΣd(^∇^ )
「何で感謝されてるの……私???」
と、そう千尋さんが首を傾げたのとほぼ同時に──
「──ッ!? ァ、エ"???」
「──ゥグッッ!!?!? カハッ!」
……綾ちゃんと久遠が苦しみだし…………地面に倒れると、ビクビクと身体を痙攣させる。
「は、ぇ? ち、ちょっと二人共いったいどうし──」
「──ハイ、千尋さんも其処動かない!」
「ぇ?」
そして空かさず、勇者軍から借りた銀の投げナイフを千尋さんの影へと投擲し、その場に影を縫い付ける。
──ま、俗に言うと『影縫い』ですな!
「ッ!? 身体が!!?」
「動かないでしょ? 悪いんですけど、ちょっと大人しくしてて下さいね?」
笑いながら告げ、地面に倒れている二人に近付く。
「……ゥァ、き…………さら、ぎ……さん?」
「………………ガ……ァ…………」
──ふむふむ、久遠の方が苦しそうだな?
と、いう事は。
「ははッ、苦しそうだな久遠? あぁいや、もう久保って呼んだ方が良いか???」
瞬間、綾ちゃんは目を見開き……久遠──久保の身体もビクリと大きく震える。
おッ──正解か。
「どうする? 苦しいのなら今すぐ楽に──」
『──ッッ、ガァ!!!』
「おっと!? おい、綾ちゃんの姿でそんな声出さないでくれないか、バアル?」
いつ召喚したのか、その細腕には不釣り合いな禍々しい大剣を片手に、バアルは力任せに斬り払う!
ので、それをバックステップで躱すと……大剣を支えに、何とかその場に立ち上がったバアルと目が合った。
『ッハァ! グ、いったい……いつ気付いた?!』
吐血混じりにバアルが叫ぶ。
──あー、何だろ? 綾ちゃんの姿だからか……解釈違い感が半端無いな??
「答えても良いが……いいのか? お前のご主人様は大分キツそうに見えるが??」
「──ッ! ゲホッ……ァ、ガ…………」
『主人!? ぐッ──カハァッ……!』
oh、こりゃモザイク必須ですわ。
「うわ…………」
社長? 止めてあげて?? ドン引きするのは理解るけど、その呟きは人を傷付けるよ?
『ッ、クソ……!』
──ぬ!? キュピーーーΣ(^^)ーーン!!?
ナイフの追加入ります!!!
投げナイフを投擲し、今度はバアルと久保の影へとぶっ刺す! そこ、いらん事しない!!!
『ッ"──!?』
そして、カコンッ──!
と、音を立ててバアルの足元に落下するスマホ。あ、アレ久保のじゃん。
──ほほぉ? スマホは久保では無く、バアルが持ってたワケかぁ。成程なぁ???
『…………クソ……ぐ、ぅう…………ッ!?』
「はっ……ハァ──ぁ、ぎぃ…………ッッ!」
おっと、バアルはまだ耐えられそうだが──久保はもう限界っぽいな?
「如月、アンタ……あの二人に何飲ましたのよ!?」
あまりの光景に、千尋さんは顔を青くし問うてくる。
「──え? 校長作の劇物に、オレがちょっと手を加えた何か。ですけど?」
いやぁ、まさかここまで苦しむとは。
しかもモンスターにまで効くとか凄くね!? まぁ、途中で蛍光色になった時には驚いたが……!
あと、粘り気と変な気泡が発生した時も、イケない領域に足を踏み込んでるんじゃ無いかと思ったな(笑)
『ッ"ッ!??』
「!??!?Σ_:(°ཀ°」 ∠):!??!?」
(嘘でしょ!?? と、いう顔)
「……アンタ馬鹿じゃないの…………?」
「──ゑ?」
◆◆◆
なぁ、良い子の皆……なぜ、オレは味方からバッシングされているんだ? しかも素面で。
「何で劇物に手を加えて更に進化させようと思ったのよ……頭イカれてるの?」
↑、暴言じゃないコレ?
オレにも傷付く心っぽいモノはまだ残ってるんだけど? それに、何でって……
「──いや、魔改造が大好きな日本人としての血が騒いだから……としか。騒ぎませんでした? 血??」
「久保。アンタの先輩、頭イカれてるわよどうしましょう?? って、久保? 久保ちゃーーーん???」
『おい主人? 主人ぃいいいいい!!?!?』
「…………_(´ཀ`」 ∠)…………」
最早、久保はピクリとも動かない。
そして、どうやら現実の方で死亡判定が入ったのかキラキラと黄金の粒子となって霧散した。
「──くっ! 惜しい奴を亡くした!!! じゃあ、バアルくんもそろそろ逝っとこっか^ ^」
『ヒッ! や、やめろ……来る、カハァッ!』
おいおい、綾ちゃんの姿で盛大に血反吐ブレスとかマジで止めて欲しいんだが??
「嫌、無理、解釈違いです。退場お願いします」
ジリジリと、再びバアルへと距離を詰める。
あとたった数歩。
それを──ゆっくり、ゆっくり。今までの怒りを上乗せし、嬲る様にジックリと歩いてゆく。
──途端!
『……ハッ…ハハ! 油断したな元主人よ!?』
血反吐を撒き散らしながら、バアルは笑い叫ぶ!
『魔炎よ、燃やせ!!!』
その瞬間、バアルの影を縫い付けていたナイフが黒い炎に包まれ、跡形も無く焼失した。
「へぇ……? 力を残していたか」
『クハハッ! まだだ、元主人よ!!!』
勝ち誇った様に、悪魔は叫ぶ!
『──さぁ、百鬼 千尋よ! 貴様の出番だ、モンスターを召喚し私を助けろ!!!』
「……………………」
再び黒い炎が燃え上がり、千尋さんの影を縫い付けていたナイフをも焼失させる。
そして、悪魔の叫びに呼応する様に、千尋さんの目から光が消え……
──カクリ、と、まるで操り人形の様な虚なモノへとその雰囲気が変化した。
「支配の魔眼か……」
『ククッ……ご名答だ、元主人よ。ハァ、仕込んでおいて正解だったよ──ゴホッ……!』
──オレが知る限り、バアルの魔眼は二種類。
一つ、白神達に使用した『負の魔眼』。
この効果は単純で、相手の負の感情を思うままにコントロールする事が出来る。
そして二つ、千尋さんに使用した『支配の魔眼』。
此方は言葉通り、相手の全てを『支配』する。
……そして『支配』された者は、バアルの物言わぬ人形へと成り下がるのだ。あんな風にな。
「はぁ、やだやだ。ほんっとに面白味の無い能力してるよ、お前は。ま、そう設定したのオレだけど」
本当に何を思ってこんな下らない能力作ったんだろ、当時のオレは? 疲れてたのかな??
もしや、深夜テンションか???
『ッ──ハ、ハハ!!! 相も変わらずこの能力が嫌いか? だが、今! この能力が私を救ってくれたぞ?』
「ところが残念、コレなーんだ??」
『は……?』
そう言って、オレは一台のスマホを取り出した。
明らかにオレの趣味じゃないケバケバしい──失礼。独創的なスマホに、バアルは目を見開く。
『まさか……!』
「そのまさかだよ。ティアマトちゃんカモン!」
『( ^ω^ )?』
「はい、君のご主人様の方を確認!」
『!?Σ( °Д°)』
よしよし、確認したな。
「アレやったのアイツなんだけど、どうする?」
『ムキーーーヽ(°Д°#)/ーーーッ!!!』
「お、やる気だねぇ! じゃ、一緒にボコろっか?」
『(`_´)ゞ』
『は……? ぇ、待て、何が起こ──ッ、百鬼 千尋! 私を守──ッ』
──させんよ?
「はい、では千尋さんグッナイ!」
と、手刀にて千尋さんを眠りの世界へご案内!
「ふっ、突っ立っているだけの棒人間なぞ秒で落としてくれるわ! ふははははッ!!!」
──さぁ、今ですぜティアマトの姐さん!
『シャーーーヽ(怒Д怒#)/ーーーッ!!!』
『ヒッ!!? ま、待て話し合えば理解──あ"ぁーーーーーーーーッッッ!!?!?』
◆◆◆
「──イケメンを統べる者に私はなる!!! ハッ! 此処は何処!? 私のイケメン達は!!?」
「夢の中じゃ無いっすか?」
どんな夢観てたんだろ、この人?
「ぇえ……って、あら? ティアマトちゃん???」
『ヽ(´▽`)/』
『……_:(´ཀ`」 ∠):……』
おっとまだ生きてたか、ホントにG並の生命力してんな、バアルくんや。
「おい、バアル。聞こえてるかぁ〜???」
『………………』
うぅ〜ん、聞こえてるのかコレ? ま、勝手に話すから別に良いけど。
「消える前に、お前の質問に答えておいてやるよ。オレがお前らの擬態に違和感を覚えたのは最初からだ」
聞いているのかどうかはどうでもいい。
ただ、話す。頬を緩めて、笑みを浮かべて。
「お前ら──あの子らの意地を舐めてただろ? あの子らは、あんな無様に助けを求めたりしない」
ソレが主な理由だ。
……こんな不確かで不確実な『信頼』。そんな下らないモノをオレが信じた事。
それと──
「──それとまぁ、お前らの性格と、お前の失言のお陰だな?」
『………………』
ザァァ──と、一陣の風が吹き抜ける。
その風に流される様に、悪魔から溢れ出た黄金の粒子は空へと昇って消えていったのだった。
見てくれてありがとうございます!! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いしますm(_ _)m