騎馬戦3
◆◆◆いつから『ある』と錯覚していた?◆◆◆
「ふははははッ!!! 人がゴミのようだ!」
上空に映し出されたカメラ映像を眺め、オレは声高々に嘲笑する。
──いやだってお前ッ、アレ見てみ? 馬術部より借り受けた『戦車』が戦場を蹂躙する様を!!!
あーーー、めっちゃ清々しい! 夏のクレーム対応のイライラが消え失せるレベルで清々しいわ!!!
「──お楽しみはそこまでで御座るよ境夜たん! あと、写真良いっスか!?」
「おや、わざわざボコられに来たんですかご苦労様です鈴木さん。気分が良いので3枚までなら許可します」
……特別ですよ?
「3枚も!?? あざます!」
「いやあの鈴木さん? オレ達、たしか先生を止めに来たんじゃ??」
まあまあ。そう急ぐ必要も無いだろうよ。
「──少しくらいゆっくりしても良いんじゃ無いか、久遠? お前達は空から容易く来られたが、地上の奴らはだいぶ苦戦しているみたいだしなぁ?」
いやぁ、良い策だとは思うけど……まだまだ温い。
このオレが、馬鹿正直に城の頂だけを護っているとでも? 敵に上下から挟まれるなんて御免だね!
と、いう事で──ドンッ! わくわくモンスターハウス第二弾を用意してみましたぁ〜〜〜!!!
先日の5徹+キメラの弱体化を代償に、オレの捕食されたモンスター達が帰って来たのさぁ!
「──さぁて、この地獄からいったい何人が此処まで来れるかなぁ? 愉しみだ!!!」
では見せてもらおうではないか、社長軍の実力とやらを!!!
「マジかっけぇで御座るよ境夜たん!」
「いやだからッ! 先生を止めに来たんでしょうが、オレ達は!!! こうなったら二人でやりますよ!」
──ん? 二人だと???
「三人。じゃ、無いのか久遠? あぁ、もしかして戦うのは『二人だけ』って意味か??」
「……ッ!?」
「あちゃぁ〜〜〜、バレちゃったで御座るか」
ハッハッハッ、そりゃあね?
久遠と鈴木、更には地上に展開している奴らをも囮にした作戦か。
──なるほど。
「二人でオレの気を引いている隙に『透明化』を使い、旗を奪取する。うん、悪くない!」
悪くは無いが──
「立案したのは久遠か?」
「そうっス、先生……」
「──そうか。とても誇らしいよ、まさかお前が仕掛けて来るとは思わなかった。オレがモンスターを展開させてる事も読んでたのか?」
その問いに、久遠は口ごもりながら答える。
「まぁ、そうかもしれないって……カメラを、壊したのだって見せたくないモノがあるのかな? って」
ん? あー、アレね。
「そうか、良い着眼点だ。たしかにオレは展開したモンスターが映る事を懸念した」
まぁ、あの壊し方はあからさま過ぎたけどな?
「でも、それだけじゃない。あー、上野くんや……その旗は偽物だから奪ってもPにはならないぞ」
「──へ!? うわッ!!?」
黒い旗が無数の虫となって、解ける様に霧散する。
「ッ! 擬態か!!?」
「そ、正解だ久遠。元々、此処に旗は無かったのさ……それなのに、お前達は旗が『ある』のだと錯覚した」
──オレが懸念したもう一つの理由がコレ。
複数のカメラに姿を晒されれば、如何にキメラの擬態であろうと違和感を覚える奴が居るかもしれないだろ?
唯でさえ、風で旗は靡いてたしな? 無いモノを有るように見せるのは色々と難しいんだよ。
「無いモノを守るフリまでする事になったが……こんだけ敵が集まったのなら、やった甲斐はあったな」
お前達が見事に騙されてくれたお陰で、『他の』軍の奴らをも結果として騙せたからな。
──感謝してるよ。
社長軍に便乗して集まったであろう、その他の軍に向けてオレは笑みを浮かべる。
「ッ、退避──」
「させると思うか? セラフ、『守護結界』を展開」
途端、白亜の膜がドーム状に城を覆い尽くす。
「さて、このままでもオレは一向に構わないんだがそれじゃあ味気ないだろ?」
「……そうっスね。先生はそんなに優しく無いっす」
「いや、漁夫利に来た者共と共闘すればワンチャンあるかもで御座るよ?」
ふむ、確かにソレもあるな。パッ、と空を見ただけでも結構居るし。
「こう見ると……皆、そんだけオレをボコりたいの? ぴぇん。泣いちゃおっかな」
「泣きたいのはコッチっすよ、先生」
オレの教育方針をよくご存知の久遠は、苦虫を百匹ほど噛み潰したような顔を向けて来る。
「コレに懲りたらもっと相手をよく観察するんだな? さて、じゃあオレとモンスター達はそろそろオサラバしようか」
言葉と共に、オレと城内に居たモンスター達は纏めて城外へと転移する。
さて──、
「おいKP」
「はいはい! 何でしょう??」
「この亜空間の外に出れば全て元通り。その言葉に間違いは無いか?」
間違いがあったら早めに言えよ? じゃないと、オレ、大量殺人犯になっちゃうからね。
──もうこのボタンを押したくて、押したくて、ヒャーッ我慢できねぇ!!!
「そりゃあ大丈夫ですよ、何度も校長で──」
「──よし理解ったポチィッッッ!!!」
ん? これは何のボタンかって???
…………汚ねぇ花火が咲くボタンだよ(ニッコリ)
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