バグった
同作者作品『黄鳳伝』の方も宜しければご覧ください!
『黄鳳』→『黄色い鳳』→つまりオカメ!!
あ、こっちは連日投稿します!
「千尋さん! 大変ですよ!!!」
オレ──如月 境夜(17歳)は、社長室のドアを蹴り破り中へと足を踏み入れる!
「──はいはい、どうしたの〜? また勝手に会社の設備を使ってゲームを作ったの? そんでまた、そのゲームがバズったりしたの??」
いつもの事だと言わんばかりに、大手ゲーム会社社長こと──百鬼 千尋(3★歳)は言葉を返す。
「──おしいッ!!! 設備を勝手に使ってゲームを作った……までは正解ですが、『現実にモンスターが出てくる』という深刻なバグを発見したのでまだリリースは出来ていません!」
「スゲェなにそのバグ!?」
オレは自身のスマホを操作し、件のゲームアプリを起動する。
「まずはコレを見てください」
そう告げて、スマホの画面に表示されているモンスターの一体をタップした……。
『ランクE/フェアリー』
──瞬間、スマホの画面が淡く輝き……先程、タップしたモンスターが『現実』にその姿を現す。
「……(O_O)」
蝶のような翅を背に生やした親指大の少女を見て、なんか千尋さんがフリーズした。
『ねぇねぇ、キョウヤ……この人はだぁれ?』
オレが召喚したフェアリーが、千尋さんを指差して問うてくるが……オレが答えるよりも先に、
「Σ( ゜д゜) ハッ! ──い、いやぁ〜ん、めちゃくちゃ可愛いじゃないこの娘!! あ、私は百鬼チヒロって言うの! よろしくね〜!」
──速攻で我を取り戻した千尋さんは、これまた素早く乙女スイッチをONにし答える。
しかし……、
『……それは『可愛いって言ってる自分が可愛い』って思っているだけでしょ? オバさん』
「──ヴフッッッw!!! し、失礼……」
……ふ、妖精ぃぃいいいいいいッッッ!?!? メッ! そんな事言っちゃメッ! でも……グッジョブ!!
フェアリーは瞬時に女性全般に見られる特性を理解し、冷たく言い放つ!
その言葉を受け……千尋さんは心の底から爽やかな笑顔( ゜д゜)→( ^ω^ #)を浮かべると、
「──あらぁ、本当に可愛い事を言うのね……この娘は。でもね? 一つ忠告しておいてあげる──次に私を『オバさん』とか言ったら握り潰すわよ? 羽虫が……」
ドスの効いた声でそう告げたのだった。
◆◆◆
取り敢えず、問題児をスマホに戻し……再び、千尋さんと話す。
「確かに……これは面白そ──いえ、大変な事態ね!」
なんか聴こえたような気もするが……深刻そうな顔を浮かべ、千尋さんは言う。
だが──。
「いや、これは一昨日から起こっている現象で……これだけなら別に大した事では無いんです」
そう、別にこの現象は『大変』というワケでは無いのだ。驚きはしたけどね?
「は……? 一昨日から?」
「はい。オレがテストプレイをしている時にいきなりモンスターがスマホから飛び出してきて、ホントにビックリしましたよ!」
いきなりギシャーって出て来たモンだから驚いて、思わず釘バッ──こほん。若りし頃の思い出を片手に現実でモン●ター●ンターやってたわ。
「──どうしてその時に言わなかったのよ!? こんな面白そうな事を!?!?」
……千尋さん、やっぱりアンタ……口では『大変な事態』だとか宣っておいて、頭では『面白そう』って思ってたんですね? 流石です!
「だって言ったら、千尋さん仕事しなくなるでしょ?」
「もちろん! 世界征服とか企んで、変な組織とか作っちゃうと思うわ!! というか、する? しちゃう?? 組織作って、世界を我がモノにって!!!」
ノリノリで千尋さんは答えるが……それよりも、
「──正解です!! 千尋さん!」
「うぇ!?」
先に何が『大変』なのかをこの社長に説明しよう。
オレは再びスマホを操作すると、とある動画を再生した。
「コレを……ふっw」
表情筋を殺し、オレは千尋さんにスマホの画面を見せる。
「え、なによコレ? 動画?」
不思議そうな顔で千尋さんは動画を見る。見てしまう。
■■■動画開始■■■
『『『──我々は組織『黙示録』!!
我々は此処に、この世界を支配する事を宣言する!!
我々に従うのであれば『生』を……だが、我々に従わぬのならば『死』を与えよう!!
我は『黙示録』のリーダー……『帝王』佐藤!!
この世界に住む者達よ、我を崇めよ!!』』』
・
・
・
■■■動画終了!!!■■■
「〜〜〜〜〜ッッッ……え、ちょッ…なに……こ、このイタい映像はwww」
千尋さんはプルプルしながら、震えた声でオレに問う。
「さっき千尋さんが言ってた事を実践しちゃった人が製作したモノです……くっwww」
あ、ダメだ……また思い出してきたw。
「……というか、あのカイザーとかいうイタい奴どっかで見た事あるんだけど……? アイツってまさかw」
「──はい、幹部の佐藤さんですね。あ、今はカイザー佐藤って呼んだ方が良いですかねwww??」
……佐藤さん……アンタは神だよ──笑いのw!
「カイザーって……黙示録て──佐藤www」
「その気持ちは良く分かります。オレも最初に動画を視聴した時、爆笑しましたwww」
「アイツ本当になにやってんの……? 仕事しなさいよ馬鹿イザー佐藤www」
◆◆◆
お互いの腹筋が崩壊するまで笑い合い、漸く……オレは本題に入る。
「──というワケで、カイザー佐藤さんは厨二病を拗らせてしまいまして……」
自身の口角がつり上がるのを感じながら、オレは言葉を続ける。
「オレ……そんなカイザー佐藤さんにヘッドハンティングされてるんです。それも莫大な金額で!! この会社、今日限りで辞める事って出来ますかね!?」
いや、マジで『大変』な事態だわ!! あんな金額チラつかされたら、即決するに決まってんだろ!!
「………………は?」
オレの問いに、千尋さんは固まる。
「ヘッド……ハンティング? え? カイザー如月になるってこと?」
「それはちょっと……いえ、かなり嫌ですねw」
──千尋さんは全く話しが理解出来ていないのか……目を見開いていた。
ふむ、もっと分かり易く言おうか。
「……実はですね? このアプリが完成した時に、カイザー佐藤さんを始め……バイトの田中、久保と、幹部の鈴木さん、大平さんの計五人にテストプレイをお願いしたんです」
「社長の私をハブにするなん──」
「──そしたら例のバグが発覚しまして……テストプレイをお願いした方々はもれなく全員が、厨二病を発症させてしまいました」
全員が何かしらの『組織』とか『秘密結社』を作ってたからね、もうさ……お腹痛くって膝から崩れ落ちたよオレは。
「え? カイザー佐藤だけじゃなかったの!?」
「はい。他には、『教皇』鈴木さんと『神』大平さん、『全知全能』田中、『世界王』久保が居ます」
「──アイツらwww」
全員が堂々と名乗ってきたからな。コイツら羞恥心とか無いのか!? ……って思ったわ。
「それでその全員が、オレを自陣営に引き入れようとしてきたんですけど……一番金払いが良かったのがカイザー佐藤さんだったんです!」
『教皇』や『神』より金払いが良かったからね、『帝王』は!
「成る程ね? ……因みに幾らだったの?」
「それはですね……★★★万です! いやぁ、いい金づるを手に入れましたよ本当に!」
オレの言葉を聞いて……千尋さんは不敵な笑みを浮かべる。
「ふぅ〜ん、なるほどね。……ねぇ、如月くん?」
「はい? 何ですか千尋さん?」
──ぬッ!? 匂う……匂うぞ! 香ばしい金の匂いだ!!!
「なら、それ以上の金額を私が出せば……貴方は私に付くという事でいいのかしら?」
「──もちろんです!!!」
千尋さんの言葉に、オレは即答する。
……仕事の内容が同じならば、一番良い給料を出すところで働く!! 常識だ!!
………………………………いや、カイザー如月になりたくなかったっていうのもあるけどね? さすがにイタいアダ名は勘弁願いたい。
「そう、それなら良かったわ──カイザー佐藤が提示した額の二倍出すから私に付きなさい! 如月くん!」
「──イエス、マイロード!!!」
そりゃあ即決しますわ。だって二倍だよ二倍!!! さすが大手ゲーム会社の社長! 金払いが良くて助かる!
──とまぁ、こういうワケで……オレは『社長』こと、千尋さんの陣営に付いたのだった。
◆◆◆
「まったく……貴方も悪ねぇ。最初に『商品』をチラつかせてから、『交渉』に入るなんて……あんなアプリ見せられたら、私が買わずにはいられないって知ってるクセに!」
千尋さんのスマホに、オレは件のアプリをインストールする。……無償で。
「ハッハッハッ、そりゃあ千尋さんの金払いの良さは知ってますからね〜。『バイトが作った何の変哲も無いゲームアプリを一目見ただけで、大金出して権利の全てを買い上げる』だなんて、普通の人ならまずしませんから」
いやぁ、あの時は下手をうったからなぁ。目先の欲に釣られて、その後の利益を考えなかった。だが、同じ轍は踏まない。
「──ねぇ、如月くん? そのアプリの権限なんだけど……?」
「……売りませんよ。盗みも警戒して厳重にロックもしてますし、その他全ての可能性も考慮してます」
当然だろう? もう煮湯を飲まされるのは御免だ。
「……むぅ、学んだわね。会社の設備を勝手に使って作ったクセに」
「だからそのお詫びに、無償でアプリを『あげた』じゃないですか……充分にお釣りがきてると思いますけど? カイザー佐藤さんなんて一人につき★★★払ってくれて、その他『組織』や『結社』の連中も皆んな気前が良かったなぁ」
オレはシミジミ言う。そのお陰でだいぶ儲けさせてもらったよ。
「──ん? 一人につき? 皆んな? あ、貴方まさか!?!?」
千尋さんは驚いたように言ってくるが、何を驚いているのやら。サッパリ分カラナイナ〜?
「……ん? ナンデスカ、千尋サン??」
「ッ、売ったのね? 一人一人にアプリを!」
そりゃあ、プレイヤーは多い方が戦闘アイテムとか高値で──ごほんッ!
「──そりゃあ、『欲しい』と言われましたからねぇ? ホラ、オレって良い人なんで『それなら売ってあげる』べきかなぁって? それに、ゲームは参加してるプレイヤーが多いほど面白いですから☆」
他意? そんなの──無イデスヨ、ヤダナァ。
「くッ……まさか一度の失敗でここまで学ぶなんて! ──ッ、いいわよ! やってやるわよ!! 全てのプレイヤーを捩じ伏せて、私が『世界征服』する為の礎にしてやるわぁあああッッ!!!」
「その意気ですよ千尋さん!」
……まぁ、オレは世界征服とか興味無いし、其処はお好きにどうぞ。って事で!
◆◆◆
……この日、大手ゲーム会社を隠れ蓑に──『世界征服』という大きな野望を掲げる一人の女社長が爆誕した。
後に、『世界』を大きく変えてしまうこの人物だが……オレを含め、本人はまだ──その事を知らない。
この度はご覧いただきありがとうございました!
面白かった、続きはよ! と、思われましたら是非ともブクマなどをお願いします!! 作者のオカメ脳がフル回転し、作業効率が上がっ──たらいいなぁ。