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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夜明けの夕方

作者: 初月・龍尖

 

 オレンジ色の太陽がゆっくりと地平線へと吸い込まれるのを俺はベンチに座って眺めていた。

 潮風を吸い服がべたっとしているが俺はその場を離れる事が出来なかった。

 周囲がだんだんと薄暗くなってゆくが左耳に入ったイヤホンからは何も音は聞こえなかった。

 ポケットから端末を取り出して確認してみるが着信の履歴は無い。

 時間はもう夜のはじめ頃に突入していた。

 汗と潮とイライラで不快感が最大まで引き上げられる。

 溜息を吐いて貧乏ゆすりをすはじめるが視線を感じてそれを止める。

 そんなことを何度も繰り返していた。

 

 狂ったように座り続けて夜の闇が周囲を覆いだした頃、イヤホンから軽快な電子音が流れた。

 すぐさま通話を繋げると機械音声が流れた。

 

「待機、ごくろ、ウ、さま、デ、す。カ、ねを、モッ、て――――――へ移動し、ナサ、い」

 

 口を開く前に通話は一方的に切られた。

 大きく息を吸ってから俺はベンチから立ち上がった。

 足の間に置いてあったバッグを担ぎ指定された場所へと走る。

 俺はただの下っ端。

 裏で何がどう動いているかは知らない。

 指定場所のボックスに入って目と手を動かす。

 こういう時はきっと台の裏にメモがある。

「ビンゴ」

 貼り付けられたメモにさっと目を通し指で擦る。

 摩擦の熱でメモが自然発火しチリとなる。

 そうやって移動して、移動して、移動を繰り返して目標に辿り着いた時にはもう日付が変わっていた。

 

 CLOSEの板がかかったバーへ鍵を開けて入る。

 人通りが無いわけではないが堂々としていれば以外に気づかれない。

 電気の落とされた室内で人の気配がする。

 バーの奥、カウンタの方から「バッグを投げな」と声がした。

 機械をかませているのだろう違和感のある声だった。

 言われた通りバッグを投げてついでに両手を上げる。

 俺の行動に相手の気持ちが緩んだ、そう感じた。

 行動を起こすのは今だ、直感で俺は左の奥歯をかみしめた。

 左から頬を殴られ俺は壁に叩きつけられた。

 大きな影が俺に覆いかぶさり何度も何度も俺の顔を殴りつける。

 直感に従ってかみしめていなかったら意識が飛んでいただろう。

 左の奥歯をかみしめながら俺は防御せずに殴られ続けた。

 殴ることに酔っていた大きな影はその後ろに立った影に気が付かなかった。

 俺を殴り続けていたこいつが最後のひとりだった。

 こいつは殴るのに集中し過ぎていたせいか警棒で電流を流され一発で意識を失った。

 顔をしこたま殴られた俺は担架に乗せられ病院へと運ばれた。

 救急車に乗る時に視界へ入ってきたのは建物の間から顔を出したオレンジ色の太陽だった。

 俺は「ああ。また、徹夜か」と呟いたがその言葉に何の意味もない。

 俺たち下っ端に時間の概念など無いんだ。

 

 

 

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