医者の居ない世界
「アルファルド様!!」
「何があった?」
「人です! 人が攻めてきました」
「・・・・ごっ・・・・数は?」
「二人です」
「どんな見た目だ?」
「一人は白髪の老人、一人は黒髪の青年です」
「それは私の客だ、敵ではない」
「いや、ですが・・・」
「私の客だ、中へ・・・」
「・・・っ・・・・はっ! 了解です」
「・・・兄様。人を困らせてはいけませんよ」
「二度も聞かれたから腹が立って・・・
それよりもリヴィア、体は平気か?」
「心配は要りません、これでも兄様の・・
妹・・・で・・す・・・か・・・ら・・・・」
「リヴィア!?」
「眠っただけだよ」
「アルヴェン」
「いいのか? 人間をこの館に入れて」
「私は人だからといって、拒みはしない」
「・・・・・ま、幼馴染みは大人しくお前に
従ってるよ、けど、ちゃんと考えろよ」
「分かってるよ。君に言われなくても」
「お前は妹を救ってやれ、俺はお前を守る」
「アルヴェン・・・・。 約束だ、君と私との」
「この約束だけは絶対に破らない」
「私も絶対に破らない」
「どうも、良いところ悪いね」
「じゃ、俺は外で待ってるよ」
「分かった」
「それで、貴方たちは私に何の用で?」
「アルフェルドさん。でしたよね?」
「ええ、合ってますよ」
「協力して欲しい」
「協力と、いうのは?」
「復讐です。私の・・・ いや、俺の。ですね」
「ですが・・・・」
「分かってましたよ、断られるのは!」
「分かりました・・・・ 条件があります」
「条件?」
「妹です。眠っているでしょう」
「本当だ、それに可愛い寝息ですね」
「はは、本当にそう思います」
「だが、彼女に何かあるんじゃな?」
「ええ、まあ・・・・ 妹は母譲りの病弱で
殆どが寝たきりです。妹とだって自由に
生きたい筈なんです。どうかお願いします」
「この国に医者は?」
「居ません。一人も」
「何故、医者が居ない」
「我々はヴァンパイアです。人と違い
自然治癒能力が桁違いに高い。そうなれば
自然と医者は必要とされません。どうか」
「医者が居ればいいのか?」
「妹を、ヴァンパイアを治せる医者が必要です
ですが、人の医者に・・・・
ヴァンパイアを治せるのでしょうか?」
「確かにの」
「一人、知り合いが居る」
「ユリウス、医者の知り合いが居ったのか?」
「爺さんは黙っててくれ」
「その知り合いなら治せますか?」
「ああ、絶対に。ただ問題がある」
「問題があるのか?」
「爺さんは黙っててくれって、言ったろ」
「ほいほい」
「まったく・・・・」
「それで・・・・ 問題というのは?」
「大のヴァンパイア嫌い」
「・・・・・」
「あとは・・・・ ヴァンパイアを見つけたら
欠片も残らずに殺す所とかか? どうだ?」
「・・・・・・・」
「どうしたんだ?」
「気絶しとるんじゃよ」
「どうして?」
「話に耐えられなかったんじゃ」
「でも、解決策ならあるけど」
「本当ですか!」
「ああ、アルフェルドさんの幼馴染み」
「えっ・・・・」
「それが解決策」