表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

異世界の平凡な恋愛

「俺と付き合ってくれませんか?」


 いきなり、大きな宝石の付いたペンダントを差し出された。

 顔を上げると、目の前にAランク冒険者の人がいる。

 名前は思い出せない。


「お断りします」

「なぜですか?!」


 秒で断ると、悲鳴のような声で反論される。


「平凡な人生を送りたいからです」


 私がそう言うと、冒険者はグッと詰まった。

 それから目を瞑って少し考えるような素振りを見せる。


「すみません。ヘレナさんの事、よくわかってませんでした。改めて後日もう一回だけお話しさせてください。俺の名前はカイトです」


 真っ直ぐな目が私を見る。

 私がこの人の名前を思い出せないのは見抜かれていた。

 だけど、私の好みは見抜けなかったのか。

 ギルド事務員をやっているけれど、恋人にするなら安定した職業の人がいい。

 後、私は宝石より食べ物がいい。


 +++


 俺の名前はカイト。

 Aランク冒険者だ。

 ちょっと前までは万年Dランクだった。

 それが、ギルドに事務員として入ってきたヘレナさんに一目惚れしてから変わった。

 綺麗な黒髪に黒い目の神秘的な容姿に恋に落ちた。

 ギルド事務員だから、冒険者が好みなんだろうと死にものぐるいでランクを上げた。

 後、女性はキラキラしたものが好きだからと思って、希少な石でペンダントも作った。

 これでいける!と思ったのに。

 結果は惨敗だった。

 リサーチ不足だ。

 自分に言い訳だが、恋で目が曇っていた。

 どうする、ヘレナさんの好みになれるのか俺。


 +++


 私は、ギルド事務員のヘレナ。

 安定した職業の事務員になったけど、冒険者は好きじゃない。

 なのに、一応若い女だからなのか、冒険者からしょっちゅう声をかけられる。

 正直、うんざりしていた。


 だけれど、この前声をかけてきたカイトという冒険者が面白い。

 平凡な人生を送りたいから、と断ったら行動が変わった。

 まず、朝8時半にギルドを出て5時半には戻ってくる。

 無傷でだ。

 多分、攻撃を全て避けているんだろう、と同僚が言っていた。

 それなのに、どうやってなのか高額な依頼を必ず解決して帰ってくる。

 後は、他の職員から聞いて私の好みが分かったんだろう。

 自作のお菓子をプレゼントしてくれる。

 この前の虹色林檎のタルトはすごく美味しかった。

 気づいたらカイトはSランクの冒険者になっていた。


「俺と付き合ってください」


 いきなり、目の前に宝石苺の水飴が差し出された。

 顔を上げると、カイトの笑顔も飴もキラキラしている。


「はい、喜んで」


 私は思わずそう答えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ