帰宅部少女は帰れない
「はなせー!私は家に帰るんだーー!!」
「いいから大人しくしてろ。寮に帰るぞ。」
校門の前で引きずられながらも懸命に叫ぶ少女とあきれた顔で少女を引きずる男子生徒がいた。
ここ最近、恒例となりつつあるその姿を周りの生徒は笑いながら見守っていた。
「ちょっと!なんで毎回毎回邪魔するんですか!?私は家に帰りたいだけなのに。」
そう言って抗議するのは先ほど帰宅を試みようとした少女、家守茜である。背中には大きなカバンを背負っており夜逃げでもするのかといった格好をしている。
「帰るのはいい。ただここの学校は全寮制だ。いくら実家が学校から徒歩5分だからと言って、許可なく寮以外で寝泊まりすることは認められない。」
この落ち着いた様子で説明する男は茜の通う丘江里学園、通称「おり学園」の生徒会長で寮の監督者をしている堂守誠である。
「もう嫌だ。寮なんていや~。私の愛しのマイルームに帰りたいよ~。」
「いや、ちゃんと寮に自分の部屋があるだろ。」
「ここの部屋にはゲームも漫画もフィギュアも何にも置けないじゃないですか!?大体ここの学校の校則は厳しすぎます。だからプリズンとかおり学園とか呼ばれるんですよ。」
エントランスでは冷静につっこみを入れる会長と絶望した顔を浮かべた少女がなにやらわめき散らしていた。