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エッセイ  作者: ロロサエ
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植物界の利他的な利己主義

 あくまで植物界の話です。


 植物の世界は過酷です。

 弱肉強食の極致です。

 それどころか、己の葉を腐らせて微生物に分解してもらい、栄養素を再吸収する様なシビアな世界です。

 植物の世界に自己犠牲といった利他的な行動は一切ありません。

 利己主義の権化が植物です。

 しかし、そうであるからこそ、その行為は利他的となります。

 

 日本の様な穏やかな自然環境の中では実感しづらいですが、熱帯などは結構過酷な環境です。

 例えば熱帯多雨林、ジャングルを見てみましょう。

 天を突くばかりに背を伸ばした木々が生い茂るジャングルは、環境が植物の生育に適しているからと思いがちです。

 まあ、降り注ぐ日光と温度と水と栄養があるからあそこまで成長できるのですが、植物のおかれた環境は、決して甘いモノではありません。


 既に大きく育った木々が作り出すぶ厚い樹冠は日光を遮り、地面付近に草は育ちません。

 高温は有機物の分解を容赦なく進め、今の日本の季節では溜まるばかりの落ち葉も、ジャングルではあっという間に0にしてしまいます。

 多雨は、成長の阻害要因にはなりませんが、豪雨は地面を叩きつけ、折角の栄養を容赦なく押し流し、場合によっては土まで流してしまいます。

 ジャングルの土壌は、意外な程薄く、栄養が詰まった豊かなモノではございません。

 ジャングルは、そんな感じで厳しい環境でもあるのです。


 そんな過酷なジャングルで、1本の大木が倒れた状況を考えてみましょう。

 

 その大木が占めていた空間が突如ぽっかりと空き、地面に日光が降り注ぎます(正午の短い間だけですが)。

 さあ、他の植物にとってのラッキータイムの始まりです。

 ここで他よりも、ちょっとでも早く育たねば日の光は拝めません。

 我先に、一刻も早く、1センチでも高く育とうと、他を蹴落とす競争の始まりです。

 ここで負けたら、日光が当たらずに衰弱してゆくのですから当然です。

 利己主義以外の何物でもありません。


 しかし、ちょっと待って下さい。

 彼らの一見利己的に見える成長は、実は他の為なのです。

 利己的に見えて、結果は他を利する行為なのです。

 ここで一刻も早く育たないと、雨が地面を叩き、土を押し流し、栄養をどこかへ持って行ってしまうかもしれません。

 自分が他よりも早く育つ事によって、長期的に見れば、他の個体が育つ環境を保全する事が出来るのです。

 お手手繋いで、と仲良くやっていては、雨によって環境そのものが激変してしまう恐れがあります。

 グズグズしていては、植物が住めない環境に変わってしまうかもしれない。

 我先に、他を押しのけて育つ個体ばかりな事によって、結果として他が活きるのです。

 利己的に見えて、利他的でもあるのです。 


 ですから、人も利己的でいいのだ、と言いたい訳ではありません。

 あくまで植物の話であり、単純に人間に当てはめる事は出来ません。

 しかし、利己的な人は、本当に迷惑なだけの存在なのかな、と考えてしまいます。

 時と場合によっては、利己的な行動こそ、正しい事もありえるのかもしれません。

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