プロローグ
完全に趣味の域で書いてます!他にも書いてる作品は、全く違う作風も多いです!よかったら少しずつ投稿していくので、読んでもらえるとありがたいです!
【序章:告白】
今、この瞬間。一つの高校で愛の告白をしている生徒は何人いるだろう。世界では、一秒に四人が死んで二人の赤ん坊が生まれている。そんな世界規模の事実は分かるのに、どうしてこんな身近な疑問は答えを知ることが出来ないのだろう。近くのものには興味を持ち、対して遠くにあるものには感心を示さない。そんな人の性に抗うように、近ければ近いほど知りたい答えは加速度を増し、遠くへと逃げてゆく…。
彼は小さな声で言葉を呟く。
「…………………」
何を言ったのか、私には聴こえなかった。それから彼は目を瞑り黙ってしまう。
彼が黙っている間、私は自分を騙すように言い聞かせる。
(やり切れ、完璧に。誰にも疑問を抱かせないように…)
私の中の感情がぐちゃぐちゃに混ざり合っていく。
どのくらいの時間が過ぎただろう。ゆっくりと、彼がこちらを向いた。その顔つきは、何だか決意に満ちているようでちょっぴり怖かった。
「あのさ、……」
彼が何か言おうとして、言葉に詰まった。私は間に声を挟もうと思うが、上手く口が動いてくれない。金縛りにでも遭ったみたいに硬直して唇さえ動かせない。どうしてだろう。さっきまであんなに饒舌に喋れてたのに…。
何も言えずにいると、彼は早口で言葉を紡いだ。
「俺、おまえが好きだ!できれば、おまえの気持ちも教えてくれないか?」
ありふれた、陳腐なセリフ。これがドラマだったら速効でテレビの電源を消すレベル。そんな軽々しい言葉なのに、ありったけの覚悟と熱意がこもっているのが感じ取れた。だから、胸が苦しい。ロープで締め付けられるみたいに、痛い。身体が震える。
自然と縮こまった私をなだめようとしたのか、彼の手が私の肩に伸びる。瞬間、私はその手を跳ね除けていた。
私の拒絶と表情を見た彼は、苦々しく顔つきを歪める。
それを目にして初めて、自分は泣いているのだと気がついた。
(なぜ、私は涙を流しているの?なぜ、こんなに苦しまないといけないの?)
それから私は、いつの間にか涙を拭いながら無意識に叫んでいた。
「何で…なんでこっちを選ぶの!?バカじゃないの?あの子…いや、あの《・・》子のような《・・・》子をどうして君は選べないの!?君は……」
そこまで叫んでやっと、私は些か理性を取り戻した。自分はイライラしていたのだ。何も知らない彼の行動と自分自身の愚かさに。外野がざわざわと騒ぎ立てている。私は一度二度と深呼吸をして頭を冷やしてから、慎重に単語を選んで話し出す。それでも、涙のせいか舌足らずな口調になってしまう。
「…たし、君のこと…嫌いじゃあ、ないよ。だけど、君を…恋愛対象として、見ることは、できません……」
そして最後に「ごめんなさい!!」と怒鳴るように言って、私はその場から逃げ出した。
人混みの渦を必死に駆け抜ける。周りの雑音が煩わしい。聞こえなくなるよう、より一層私はスピードを上げた。その雑音全てが、私への非難のように錯覚する。また涙腺が緩んで視界が滲む。屋上から差すライトが、忌々しくも私を照らすスポットライトに見えた。
逃げたら、遠くなる。彼と離れれば、私の中のこの混沌としたものに結論が出るのだろうか。そうやって、今の逃避行為を正当化したがっている自分に無性に腹が立った。