8-8 再会するエルフ
それは数分前の出来事。
第八層にて、彼女は種族特有のロバに似た耳を立てらせる。
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“●レベル:18”
“ステータス詳細
●力:13 守:8 速:8
●魔:50/50 = 42 + 8
●運:1020 = 20 + 1000”
“スキル詳細
●レベル1スキル『個人ステータス表示』
●実績達成ボーナススキル『不老』
●実績達成ボーナススキル『カワイイは正義』
●実績達成ボーナススキル『情けは人のためにならず』
●実績達成ボーナススキル『祟り(?)』
●実績達成ボーナススキル『鑑定』
●魔法使い固有スキル『魔・良成長』”
“職業詳細
●魔法使い(Dランク)”
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“『祟り(?)』、おぞましい存在の反感を買った愚者を証明するスキル。
無謀にも神秘性の高い最上位種族や高位魔族に手を出して、目を付けられてしまった。本スキルはその証である。
スキル効果は祟りの元である存在により千差万別。
本スキルについては次に通り。
一つ、スキル所持者の『魔』『運』に対して、祟り元の存在の『魔』『運』が加算される。
一つ、お互いの位置関係が感知できるようになる”
“実績達成条件。
仮面の男に助けられる”
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「あの階段の下から、あの人の気配が!」
『祟り(?)』スキルに、これまでにない強い反応があった。彼女の探し人が目と鼻の先にいる証拠だ。
モンスター溢れる危険な地下迷宮に潜り込んで二週間以上。ようやく、命の恩人にして想い人のあの人と再会できると悟って、彼女は心を弾ませる。
地下迷宮全体が不穏な気配に包まれている状況は最悪であるが、そんなの、『運』がどんどん増えていき、先ほど一気に四桁に上昇した時に覚悟していた。方法はさっぱりであるが、異変に対してあの人が抵抗しようと頑張っているに違いない。
「あのっ! あの階段の下にっ!」
「――ッ! ラベンダーっ、見たですか! あの角の向こうに!」
「ああ、間違いない。あの黒いマスクを付けている男は、彼ぐらいだ!」
耳の長い彼女の仲間二人組に、階段下に用事があると伝えようとした時であった。
何故か人前だと野暮ったいマスクで顔を隠す二人組の彼女達も、探し人を発見してしまったようなのだ。なんてタイミングなのだろう。
「行きますよ、アイサ!」
「いえ、僕も探し人を見つけてしまって」
「えっ? どこに!」
「階段下。第九層の広場だと思います」
「うわ。どうしよう。私達も彼を見つけたから追いたいけれど……」
「では、ここで別れましょう。これまでありがとうございました。ラベンダーさん、落花生さん」
「ちょっと待ってっ。異常事態が起きているのに、アイサを一人で行かせるのは不味い」
耳の長い彼女、エルフの少女アイサはまったく怖がる事なく、たった一人で階段を下りていく。
「大丈夫です。キョウチョウと一緒なら、何も怖くないから!」
アイサはそう言い残してパーティから離れて、一人駆け出した。
長い階段の途中で苦しい表情をした男女とすれ違ったが、アイサは二人を気にせず一段飛ばしに階段を下りていく。
途中、上の階層からの大きな衝撃に襲われる。足を踏み外して派手に転んでしまったのだが、些細な失敗だ。おでこをぶつけて、気を失っていたとしても数分だろう。
辿り着いた第九層は、おどろおどろしい。エルフとして欲を言えば緑が足りない。ただ、黒い海は初めて見る光景ではないので耐性がある。
アイサを躊躇わすには全然足りない。
『キョウチョウ、僕を置いていくなんて酷いじゃないか』
「……アイサ。去れ。お前はできれば最後に殺したい」
『拒絶したって無駄だよ。キョウチョウが天邪鬼だって知っているからさ』
アイサは迷いなく黒一面の世界へと一歩踏み出す。
当然、魂が引っ張られる気色悪さに股が粟立った。足首まで浸かっただけでも分かり易く体調が悪化する。吐気に寒気。痙攣に心筋梗塞。
それでもアイサは止まらない。
「それ以上、来るな!」
黒い手腕の群衆がピラニアのように反応した。活きの良い血肉を引き千切ろうとアイサに群がる。
魔王とて飲み込まれた相手である。哀れなエルフはなすすべなく、若い命を奪われて――。
『『鑑定』発動! そこの細い腕の持ち主は……カトラさんです!』
最も先頭を征く黒腕は、ピクリ、と名前を呼ばれた事に反応して停止した。
『オーランドさんに、ミックスさん、アーノルドさん、ヘリックさん。止まってください!』
「アイサっ、お前、まさか。悪霊の名前を『鑑定』しているな!?」
先頭集団が停止した事により、黒い手腕の群衆は大渋滞を起こす。悪魔や妖怪は名前を知られると力を奪われるというのが通説であるが、アイサが行ったのはそこまでの大事ではない。
生前の名前を呼ばれた悪霊は、名前から連想される懐かしい記憶を思い出して立ち竦んでしまっただけだ。一時的な発作なのでその内回復する。
ただし、アイサとしてはその一時的な隙があれば十分だ。泥沼のような黒い海を急ぎ渡っていく。
「無茶をするな! 失明するぞ」
『キョウチョウから貰った目を、キョウチョウと逢うのに使って何が悪いの!』
顔のない男に近づくに連れて海は深くなっていく。
股下の高さまで浸ったアイサと顔のない男との距離は十メートルぐらいだろうか。
残る障害は、長い髪を顔に張り付かせた女性だけ。だけ、というには高い障害だ。
生前は高名な氷魔法の使い手だったと思われる。今は生者を羨むただの悪霊。
女性の悪霊は、アイサに対して三節の呪文を放つために口を開い――。
『『鑑定』! 名前は……キョウコイトウ? 珍しい名前。キョウコさんっ!』
「――串刺、発射――」
『名前だけじゃ駄目? だったらもっと深く『鑑定』して何か弱点をっ!』
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●伊藤香子
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“●レベル:60”
“ステータス詳細
●力:25 守:21 速:20
●魔:53/147
●運:1”
“スキル詳細
●レベル1スキル『個人ステータス表示』
●魔法使い固有スキル『魔・良成長』
●魔法使い固有スキル『三節呪文』
●魔法使い固有スキル『魔・回復速度上昇』
●魔法使い固有スキル『四節呪文』
●実績達成ボーナススキル『氷魔法研鑽』
●実績達成ボーナススキル『不運なる宿命』(非表示)(無効化)
●実績達成ボーナススキル『妹探知』
●実績達成ボーナススキル『パラメーター強化(妹)』
●実績達成ボーナススキル『精神異常(妹)』”
“職業詳細
●魔法使い(Aランク)”
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“『精神異常(妹)』、精神に異常をきたした者のスキル。
本来の人格を歪める程のシスターコンプレックス。妹さえいなければまともな人生を送れたはずだが、スキル所持者的にありえない人生。
病める時も――常に病んでいるが――、健やかなる時も、妹を愛する事を誓った真正のシスコン。
既に精神異常状態であるため、魔法やスキルによる精神攻撃を拒否できる”
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『シスコン?! えっと、ぼ、僕はっ、妹!!』
「ぇ、ぁざご?? どご??」
キョロキョロする顔を動かし始めた女性は集中力を失う。完成寸前だった魔法は霧散していく。
難関を突破し、遂にアイサは顔のない男へと抱き付いた。
『何かあったかなんて僕は知らない。でも、僕は信じて。僕は……キョウチョウがどんな姿でも尽くしてみせるから!』
抱き付いたアイサは、顔のない男の反論を許さないように唇を閉鎖する。結合度を高めるために、小さな舌を伸ばして絡める事も忘れない。
同族間でさえ接触が少なく、他種族との交流に対して潔癖なエルフであるが、アイサの愛情表現は止まらない。むしろエスカレートしつつあった。
顔のない男は思う。
我ながら可愛いエルフに抱き付かれた程度でどうかと思うのだが、こうも積極的、情熱的、説得的では仕方がない。というか、ここで折れないとダンジョン内だというのにおっぱじめかねない。
「……なべてこの世はこともなし。所詮、俺の絶望なんてこの程度で終わる規模でしかないか」
海面に漂う鳥面を掴むと、男は顔に装着し直すのであった。




