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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第七章 暗く続く地下迷宮
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7-20 戦う従者達

 やはり、ダンジョンとはアイツ、迷宮魔王『ダンジョン』を示す言葉であった。

 以前、エルフの集落を襲撃した迷宮魔王に仕える三騎士の一体、オルドボと同格の幹部級モンスター、メイズナーなるミノタウロスが俺の目前にいる。

 記憶を奪ってくれた怨敵の登場。なんてタイミングだ。

 たったレベル6の俺としては、何の準備も整っていない。だから、今はまだ積極的に追ってはいなかったというのに、相手の方からノコノコと現れてしまった。

 ……であれば、諦めるしかない。

 腹をしっかりとくくるしかない。

 代わりに、口元がニタリとゆるむ。


「老人と肥満体型には興味がないわ。メイズナー、殺しちゃって。ワタシはあっちの可愛い男の子が良いわ」

「御意」


 問題は、二体のどちらを狙うべきかだろう。

 メイズナーは襲われた記憶がある。十分に恨みの対象だ。

 だが、メイズナーの手の上で横柄な態度を取っている怪物少女は何者か。迷宮魔王の義娘とか言っていたが、断片的な記憶の中には存在していない。初対面かもしれない。

 爬虫類の瞳孔がしぼられ、俺……よりももっと後方にいるアニッシュを凝視している。餌を発見した肉食獣そのものだ。


「潰れるが良い。人間共!」


 暢気のんきに怪物少女の目線を追っている間に、戦闘が始まってしまう。メイズナーが豪腕で巨大な斧を振り上げると、グウマとジェフへと叩き込んだ。

 手加減とか、器物破損とか全然気にしていない。床は砕かれ、先のドワーフの一団のように二人は血飛沫と肉塊ミンチに分離されてしまう。


『冒険者をよぉ、舐めるなァッ』


 ――と思っていたが、なんとジェフが額から血を流しながらも、手斧を盾にして巨斧の一撃を受け止めた。


==========

 ●ジェフ

==========

“●レベル:42”


“ステータス詳細

 ●力:181 = 121 + 60

 ●守:85

 ●速:5

 ●魔:9/9

 ●運:6”


“スキル詳細

 ●炭鉱族固有スキル『力・良成長』

 ●レベル1スキル『個人ステータス表示』

 ●戦士固有スキル『闘争心』

 ●戦士固有スキル『ダメージ遅延』

 ●戦士固有スキル『馬鹿力』”


“職業詳細

 ●戦士(Cランク)”

==========

“戦士固有スキル『闘争心』、本能により理性を抑え込むスキル。


 恐怖心を和らげ、戦いにおける集中力を高める”

==========

“戦士固有スキル『ダメージ遅延』、本能により神経を鈍化させるスキル。


 本スキル所持者が重傷を負うダメージを、一度に受けるのではなく、一分で平均化しながら負うようになる。一分後の容態は変わらないものの、即時の戦闘不能を回避できるためチャンスが生じる、かもしれない”

==========

“戦士固有スキル『馬鹿力』、本能により潜在能力を呼び覚ますスキル。


 スキル発動時、『力』を五割増しにする。

 スキル効果が切れた途端、ドッと疲れるので注意”

==========


 ジェフは根性で重圧に耐えた。たった一撃で満身創痍にも片膝を床に付いてしまうが、ジェフの行動は大金星と言えるだろう。


『じいさんッ、頼むぜぃ!』


 メイズナーの巨斧をジェフが受け止めている間に、グウマが攻撃をし掛けた。

 足を一歩踏み出した初速からトップスピード。目に止らない速度でグウマは跳躍する。


==========

 ●グウマ

==========

“ステータス詳細

 ●力:58

 ●守:20

 ●速:288 = 188 + 100

 ●魔:23/33

 ●運:4”

==========

“実績達成ボーナススキル『マジック・ブースト』、魔力を速力に置換するスキル。


 注ぎこんだ『魔』の十倍の値を瞬間的に『速』に加算する。

 速度だけ急上昇して筋肉や関節が耐え切れず自滅する、なんて間抜けなスキルではないものの、恩恵が高い分燃費が悪い”

==========


 グウマの残像を追った先には、メイズナーの目を短刀で斬り裂くグウマがいる。


「『速』は恐ろしい限り。しかし、『力』が足りん」


 グウマの短刀はミノタウロスの角膜を削った。だというのに、埃が目に入って痛がるような仕草さえメイズナーは見せない。

 いくら速度で圧倒できたとしても、攻撃が通じないのであればグウマに勝利はない。


『ならば相手を変えよう。お前の手の上にいる魔族だ』


 ただ、グウマは二刀流の戦闘スタイルを好む。一本目による攻撃が失敗しても、もう一本で確実に成果を残せるようにするためだ。

 二本目の短刀は既に投じられている。

 方向は、牛頭からの斜め下向き。短刀の狙いは、メイズナーの左手に腰掛ける化物少女。



「私は迷宮の管理者。メイズナー! 迷いに関する専門家なれば、距離感すら迷わせられるのだよ。『視覚領域のラビリンス』に迷え!」



 短刀は直進し、怪物少女を貫くはずであった。

 短刀は直進しているのに、ぐにゃり、と方向を歪曲させなければ、致命傷を与えられたかもしれない。軌道を大きく外れて、短刀はメイズナーの足元に突き刺さる。どういう理由か、体長十メートルに見えていたはずのメイズナーが縮まって、今は体長五メートルぐらいになってしまっている。関係があるのだろうか。


「……無粋な老人。早く殺してメイズナー」


 結局、グウマは好機を使い果たし、二度の攻撃を無駄に終わらせた。先制してこの程度では、もう後はな――。


『火遁。爆発ッ』


 突如、地面に突き刺さった短刀が爆発する。正確には、短刀の刃に通してあった赤い札がグウマの声に反応して起爆したらしい。


「グレーテル様狙いとは、小癪こしゃくなマネをしてくれる!」


 メイズナーはジェフに受け止められていた大斧から手を離し、遅蒔きながらも振り上げる。グウマを握り潰す絶好の機会だ。爆風に飛ばされ、グウマはまだ空中。羽もないのに空を跳ぶ人間族に回避手段はない。

 迫る手腕を、グウマは一本になった短刀と鉄線で対処する。

 柄に巻かれていた鉄線を解いてから短刀を天井に投げて、突き刺した。グウマ本人は鉄線を掴み、空中で弧を描きながらメイズナーの五指を回避する。

 鉄線を素早く巻き取り、グウマは蜘蛛のようにレンガの天井へと張り付いた。


「グレーテル様。お怪我はありませんか!」

「煙たいし、羽が汚れる。何なのアイツ。あんな枯れた人間族が、こんな動きを見せるなんて聞い、いィっ、危ないわねッ!?」


 グウマの行動は本当に素早い。一息付く暇もなく攻撃を続行。どこぞより取り出した八方の手裏剣を爆煙の中に投げ込んでいる。


「経験を積んだ人類はあなどれないゆえ、グレーテル様。両手を使う許可をいただきたい」

「良いわ。その代わり、ワタシの初体験が終わるまで天井のアイツに邪魔させないで。弱いワタシは大人しく、弱い人間族と遊んできますわ」

「心得ております。グレーテル様も、あまり人間をあなどらぬように願います」


 爆煙が晴れた時、怪物少女は一人で立っていた。

 左手が解放されたメイズナーは斧を両手で持ち上げ、天井を粉砕する。

 天井の崩落よりも先に、素早いグウマは壁へと退避して無事だ。グウマ単独でも、当分はメイズナーの相手を出来そうである。

 ただし、歩き出した怪物少女は俺達へと近づいている――メイズナーの一撃に耐えて、力尽きたジェフの傍を通り過ぎたが完全に無視していた。

『若様は何があっても前に出ないでください。キョウチョウは若の盾となれ! 奴は、私が食い止めます』


(アニッシュ様一番。鳥はアニッシュ様絶対死守)

「って、そんな命令したら俺が前で戦えないだろ!」


 怪物少女に対抗できる唯一の存在である。こういった自負と――余計な命令を残して――スズナが歩み出る。刀を水平に構えながら、片手の指の間には黒く丸い炸裂玉を四つ挟んでいる。


『魔族。これより一歩も進ませぬ』

「ワタシの大事な初めての相手よ。顔は悪くないけれども、同性なのはいただけないわ。そこをどいて、後ろの……仮面? は邪魔だから殺しておいてくれない? ワタシは金髪の男の子に用事があるの」

『イねッ』


 スズナは先んじて炸裂玉を投げ付け、爆発の熱が引かない内から刀で肉迫する。

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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミカライズ「魔法少女を助けたい」 1~4巻発売中!!◆  
 ◆画像クリックで移動できます◆ 
 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない


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