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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第七章 暗く続く地下迷宮
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7-4 VSゴブリン百体

 洞窟ケイブゴブリンの遺品たるスコップを装備してから、リュックを横にずらす。

 ゴブリンが掘り抜いたと思われる横穴は縦幅八十センチしかない。体の小さなゴブリンならば、少し腰を屈めれば通り抜けられる大きさだ。

 一匹ゴブリンを見たら十匹はいると思え。

 そんな言葉が異世界にあるのかは不明だが、次のゴブリンが穴から頭を出してくる。通路に出て来る前に、下に構えたスコップでさっくりと頭頂部を突き刺す。


==========

“●洞窟ケイブゴブリンを一体討伐しました。経験値を二入手しました”

==========


「ゴブリンの亜種っぽいが、経験値には美味しくないのは変わらないか。まあ、手術後のリハビリだと思おう」


 粗悪なスコップは乱暴な使い方をしただけで壊れてしまう。柄の部分だけになったスコップを捨てて、倒したゴブリンから奪い直す。

 そうこうしている間に、三匹目が登場する。

 ゴブリンの鳴き声に気付いたアニッシュが横合いから斬り付けて、ゴブリンの死体が重なる。三匹目もスコップを所持していたので、当然もらっておく。


『壁に穴を開けられたぞッ。余とキョウチョウで対処する!』

『スズナを行かせます。若はスズナの背後に!』


 モグラ叩きよろしく、このままゴブリンを地下道に出さないようにしているだけでも勝てそうな気がするが、終わりが見えない。横穴を量産されても面倒だ。

 だからといって、ゴブリンの背丈に合わせて作られている穴から攻め入るのは無謀だろう。動きが制限される所では、弱いゴブリンとて脅威になる。

 とりあえず、『暗視』スキルを活かして横穴の内部を確認する。

 奥は、俺達がいる地下道と平行に走っている別の地下道と繋がっていた。横穴の長さは目算で二メートルもない。


「……あ、俺なら行けるな」


 最近覚えたばかりのスキルが有能過ぎる。

 『暗影』スキルを用いれば、向こう側の地下道に行く事ぐらい造作もない。本来は身代わり用のスキルらしいが、移動に使った方が便利に決まっている。


==========

“『暗影』、やったか、を実現可能なスキル。


 体の表面に影を纏まとい、己の分身を作り上げるスキル。

 即死するはずの攻撃が直撃したとしても、作り上げた影に攻撃を肩代わりさせる事が可能。なお、本人は、半径七メートルの任意の場所に空間転移できる”

==========


「じゃ、アニッシュ。行ってくる」

『勇者になる余に任せておけ。キョウチョウはそこで見てお……って、どこに消えた!?』


 影だけ残して、俺は横穴の向こう側へと転移する。

 『暗影』スキルの連続使用について明記はされていないが、おそらく気合次第だ。瞬間移動する距離にも依存しているだろう。

 ただ、連続的に使用してしまうと、行ったは良いが帰れない状態になってしまう危険が高い。敵陣へ突撃する際はあからじめの偵察が肝心だ。

 で、なければ、俺のように想定外の数の敵と戦う破目になる。



「はァ!? ゴブリンで道が半分埋まっているッ」



 百体近くのゴブリン共は地下道の左側に集まって、必死こいて穴を掘っていた。俺が元々いた地下道に向けて穴を拡張し続けている。

 これだけの数が雪崩なだれ込める穴が開通してしまうと、グウマはともかく、アニッシュの腕ではしのげない。俺だってレベル4だ。危ういのでこの場から逃げ去りたい。

 だが、アニッシュを守れ、と事前に命じられている。逃げる選択肢はない。右肩の焼印の強制力は相変わらずだ。

 ならば……まだゴブリンが俺の登場に気付いていない内に、緑色の背中に襲い掛かった。


「一体、二体ッ。ええい、まともな武器が欲しい!」


 ゴブリン共はこんなスコップでよく穴を掘れるものである。使ったスコップ二本の内、再利用可能なものは一本のみだ。ゴブリン色の血がべっとりと付いた二等辺三角形を、不用意に近づく三体目の喉に突き刺す。


「クソ、また壊れた」

『キョウチョウの声が聞こえるぞ。逃げたのではないのか。どうやってそちら側に行ったのだ!』

『若様。後はお任せを』

『スズナ、良い所に来たっ! この穴の向こう側にキョウチョウがいる。余も穴を通って援護に行くぞ』

『なりません。『殺気察知』術は、百の殺気が壁の向こう側にいると警告しています。……この横穴から毒薬を放りましょう。火遁かとんで焼き殺しても問題ありません。一網打尽にできます』

『キョウチョウがいるのに、無慈悲であろう!』


 何か、壁の向こうから毒とか火という物騒な単語が聞こえてきた。

 毒の方なら俺には効かない。ぜひ投じて欲しいが、お優しいアニッシュ少年が騒いでいる。期待できそうにないか。

 倒したゴブリンから武器を強奪し、更に一体を倒す。

 だが、そろそろ手が回らない。死体から武器を取っている間に、五体のゴブリンが一斉攻撃を仕掛けてきた。

 一匹、一匹は弱くても、群がられて羽交い絞めされたらお終いだ。ゲームですら、最初の村から飛び出た主人公の半数が最弱のスライムに溶かし殺されている――俺、統計。

 頼みのつなたる『暗澹あんたん』を使うか。

 いや、命綱は最後まで残しておこう。

 今回の危機は、新スキルで切り抜ける。


「『動け死体』発動ッ! 俺を守れ!」


==========

“『動け死体』、死霊を使う魂の冒涜者の悪行。


 死者の魂を冥府より帰還させ、死体に戻し、生きるしかばねとして蘇らせる。大前提として、生前の体が必要である。

 断片化された魂が体に戻ったところで、生前の理性は取り戻せない。

 冥府でも個を失わなかった悪霊が体に戻ったところで、生者の大敵にしかならない。

 本スキルだけでは生きる屍を調伏ちょうぶくできないので要注意。本スキル所持者よりもレベルが低ければ、自由に操作できる。複数の屍を操る場合、屍のレベルは合算して計算するべし。

 屍は五体が欠落する事で死体に戻る。本スキルに防腐処置する効果はないので、屍が暴走しても放置しておけば時が解決してくれるだろう”


“実績達成条件。

 死霊使いとして、人の道を一歩踏み外す”

==========


 スキル発動後、四体の死体が、腕をダラりと伸ばしたまま起き上がる。

 その内の三体が俺の命令に従い、俺を攻撃するゴブリンに抱き付いて羽交い絞めにした。

 俺の命令を聞かない残り一体は、俺を守らずゴブリン本陣に向かっていく。奇声と唾液を垂らしながら、ゆらゆらと生者を求めて暴走を開始した。


「俺のレベルが4で、三体が言う事を聞く。つまり、洞窟ゴブリンはレベル1、痛ッ、やったなッ」


 ゴブリンは二体に数を減らしながらも、果敢かかんに俺の脚をスコップで突き刺した。

 報復で、左脚を刺したゴブリンの顎をひざでかち上げる。顎が割れたのか、舌が千切れたのか、泡を吹いて前のめりになっていく。

 続けて、予備のスコップを掴んで腰だめに構え、突き出す。俺の右脚を刺したゴブリンは悲鳴を上げながら倒れた。

 足元の二体にトドメを刺す余裕をしんで、ゴブリンの大群から数歩後退し間合いを取る。


「ゴブリンもゾンビを嫌う知性はあるのか」


 敵の総数に対して撃破数は極小だ。が、ゴブリン共は俺を追わない。

 中間地点にいる動く屍を気味悪がって、ゴブリン共も一歩、二歩と下がっていく。二十倍の戦力を有しているはずなのに、緑色の群集が目に見えて後退していた。


「持ち直せたかが……さて、どう攻めるか」


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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
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 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない


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