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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第六章 奴隷市場
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6-4 品切れ

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 ナキナ国の勇者候補パーティは、戦闘技能を持った奴隷を探し求めた。

 地下迷宮が他の魔界と比べて死亡率が低いとはいえ、安全という訳ではない。そもそも、三人パーティは迷宮攻略の適正人数を下回る。

 そのため、使えるのであれば奴隷の手も借りようと彼等は考えた。

 荷物持ちとして奴隷を購入だけでは勿体もったい無い。少年はそんな贅沢な金の使い方を、これまでの人生で経験していない。働かない者生きるべからず、は異世界においても地下迷宮においても常識だ。少年等の思考に誤りはなかった。


「う……売り切れ。また、なのか」


 ……ただ、そんな常識、他の候補者や冒険者が考え付かないはずなかっただけだ。


「すみませんねぇ。ここのところ、大量発注が多くてね」

「売っている店を知らないか。できれば、安価で売ってくれる店が良いのだが」

「どこも同じなんじゃないんですかね。正しい奴隷の使い方って言えば正しい使い方で、うちらとしては儲かって良いんですが。使い潰しが多いんですよ」


 気さくな路店主は少年に奴隷不足の理由を語る。扱っている商品は非倫理的であるが、商人らしく客に対しては親切そのものだ。


「使い潰し? 金貨三百枚……いや、奴隷とて同じ人間なのだぞ??」

「単純に一度の迷宮攻略で、捨てる奴隷以上に儲かれば良いだけの事でして。質の悪い奴隷には片道分の食料しか持たせず、迷宮内でヤバくなったら囮にして逃げ帰るんですよ。肉壁用奴隷って言葉知りません?」


 何たる事だ、と少年は天を仰ぐ。

 そして、民とは王の下に平等に扱われるやら、人類は一丸となって魔界に立ち向かわねばならないやら、と説教を開始しそうな雰囲気を少年が醸し始めたため、両脇の老人と女性が無理やり店を後にさせた。




「どうかしているぞ。ここは!」

「若。若は勘違いしておられるので諌言かんげんいたしますが、今の世の中、これが常識なのです。むしろ、貨幣を用いていられる分、まだまだ理性的と言えましょう」

「だがッ」

「若。ボロを着て、人間扱いされていない奴隷だけが可哀想ではないのです。店頭に並んでいる奴隷だけが可哀想ではないのです。今見えている者達だけが可哀想ではないのです」


 たった三人の勇者候補パーティの中に、どうして老人が組み込まれたのか。

 理由は明白。老人が少年を任せるに値する有識者であり、かつ戦闘の達人だからである。


「いずれ、世界の皆が等しく奴隷と同じか、もっと単純に虐殺される。魔界のモンスター共によってです。わたくしは若に期待しています。見えている者も見えていない者も救える偉大な方になって欲しい。そう願っております」


 勇者候補として推薦される程に少年は有望であるが、経験が足りない。その経験不足を補う上で、老人以上の適任者はナキナ国に所属していない。むしろ、所属していた事が奇跡的であると言えた。


「グウマ、すまない。余が浅はかであった」


 老人の指南を受ける少年は、きっと立派な統治者となるであろう。地下迷宮でモンスターに喰い殺されなければであろうが。

 喰い殺されないために、少年達は使える奴隷を求めて店を梯子していく。

 そんな最中、二つの商店から大声が上がった。



「エルフ! 珍しいエルフの奴隷が競りに登場だ! 若いエルフの女が三人。男も三人。午後一からの競売に登場するよ!」

「入荷! 今人気の戦闘技能を持った奴隷の入荷でーす。それも、魔界産の盗賊職! 迷宮に挑む勇者様方! 今来ないと売り切れてしまいますよ!」



 両方共、聞き捨てなら無い情報だ。

 前者のエルフについては、奴隷としてエルフを欲している訳ではない。購入できればエルフは役立つだろうが、世間にうとい少年でも、エルフがたったの三百マッカル金貨で買えないだろうとは想像できる。

 ただし、ナキナ国の関係者としては無視できない。というか、無視した事が発覚すると外交問題に発展する。

 秘密裏にではあるが、ナキナ国とエルフは同盟を結んでいる。先々代の王は随分とやり手だったらしく、気難しく、他種族を見下しがちなエルフと友好条約を交わしたのである。

 その条約には、エルフが人間族に捕らえられた際の扱いも明記されている。

 少年が現ナキナ国王の弟であるのなら、動かない訳にはいかない。


「太陽が南中している。もう刻限ではないかっ」

「若様。お急ぎを」

「いや、スズナはもう一つの方を頼みたい」


 エルフも大事であるが、本来の目的たる奴隷購入も大事である。

 そこで少年は女性に任務を課し、二手に分かれてそれぞれの目的を達成する作戦を立てた。

 エルフの対処には証拠を掴むための調査能力と、最後に権力を行使する二人が必要だ。これには老人と少年が適任だ。

 そして、余ったからではないが、奴隷購入は女性が適任と言えた。

 少年は懐から金貨の入った袋を取り出すと、女性に手渡す。

「勤めを果たせ、スズナ」


「ハッ、グウマ様。この一命にかけて!」


 女性、スズナは首元に掛かるブラウンアッシュを大きく揺らした。

 スズナは胸の前で両手を合わせる独特の一礼を行ってから、宣伝のあった店へと急ぐ。

なお、主人公は重症のため、まだ動かない模様。

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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
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 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない


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