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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第ニ十五章 救世主職のお仕事(真)
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25-3 娘の助言

 異世界もきっと丸い球状世界なのだろう。ふっくらと丸みを帯びた地平線がしっかりと見えているので間違いない。

 実に美しい光景だ。貴重な光景でもある。

 パラシュートなしでのダイビングでなければ純粋に楽しめたに違いない。


「何だ。異世界も地球と変わらないのか! これなら重力加速度も9.80で計算できるかもしれないな!」

「それで、着地は!?」

「黒曜は知っているかな! ある程度の高さ以上になると、空気抵抗によって衝突時の速度には差がなくなるんだってさ!」

「で、パパ。着地は??」


 仮面を付けているが、目の部分にカバーがある訳ではない。風で目が乾いて痛い。

 タンデム中の黒曜が背中側なのがせめてもの救いだ。風を浴びている俺の顔は絶賛面白い形になっている。

 山脈や海しか見えていなかった視界が強制ズームされていく。平原が広がり、森の境目が明確化して、小さな大穴が映り込む。

 そして黒くうごめく波が流れ出ている穴がそこにある。

 穴にホールインワンできなければそこで終了だ。鳥のように腕を広げて位置調整に努めるが、基本的には『運』任せに落下を続けるしかない。


「穴まで遠いかっ!」

「パパも案外考えなしだ。こういう場合は――」

「いや、飛行している怪生物を足場にしてしまえば!」

「こんな速度で落下しているのにっ! 衝突したらパパもミンチになるだけだって。そんな難しいやり方じゃなくて『既知スキル習得』で敵の『浮遊』を――」

「えっ、何だって!?」


 風切り音が酷くて黒曜の声があまり聞こえない。悲しくも鈍感系な返事しかできない状態だ。


「だからっ! 救世主職の『既知スキル習得』で!」


 背中にいる黒曜がわめいている。当然だ。百万回『ZAP』されているとはいえ、スカイダイブからの転落死は怖いのだろう。

 着地手段がないと心配させられないので、どうにか頑張ってみる。


「丁度、真下に飛んでいる怪生物を発見!」

「ちょ、ちょっとォお!?」


 皮のない魚みたいな怪生物の頭へと流星の速度で突っ込んだ。


「くらえッ、『非殺傷攻撃』!」


==========

“『非殺傷攻撃』、致命傷にできる攻撃を任意で加減可能。

 攻撃手段が素手、剣、弓、等、それが攻撃であれば種類は問わず スキルは適用される”

==========


 普通なら怪生物の体を貫通していたところを『非殺傷攻撃』で常識をじ曲げる。必殺の衝突エネルギーが怪生物の体に伝達しなかったため、俺達の方がピンボールよろしく跳ねられていく。

 飛行型の怪生物の数は多い。跳ねた先でも衝突を繰り返す。

 跳ねる方向の制御なんてできなかったが『運』を信じて跳び続けた。

 結果、パチンコの玉の気分を十分に味わい、うまく大当たりの大空洞へと跳び込んでいく。


「どうだ、黒曜! 何とかなっているだろ!」

「何でこんなギャンブル手段を試しちゃったんだ!?」

「お父さんがんばったから、もうすぐ穴の中だ。着地までもう少し余裕ができたぞ」

「だから、『既知スキル習得』を使えば良いだけなのに! それに、ここにはオパビニアがいるから俺の『オウム返し』で対処しないと!」

「『既知スキル習得』? オパビニア??」


 大空洞に侵入しても落下は継続しているので、やはり黒曜の声はあまり聞こえない。

 ただ、単語単位であったが重要なヒントを聞いた。

 救世主職の『既知スキル習得(A級以下)』とオパビニア。

 ……この二つをどう組み合わせれば良いのだろうか。



「しまったッ。オパビニアが昇ってくるのが早いッ!!」



 ヒレを使って飛行する姿は竜頭魔王に体付きの似ていた。が、口元から伸びる管はオパビニア特有のものであり見間違えようがない。


「『オウム返し』している余裕がっ。アイツの『マジックハンド』がくる!」


 落下中の俺達へと管は伸びていたものの相対距離は百メートル近く離れている。

 その位置的な開きをオパビニアの『マジックハンド』スキルが超えてくる。見えない手が俺達の体を掴み上げ、握力を高めて圧死させようと――、


「『コントロールZ』ッ! 三秒前!」


==========

“『コントロールZ』、後のない状況をくつがえせるかもしれないスキル。


『魔』を1消費することで時間をコンマ一秒戻せる”

==========

“ステータス詳細

 ●魔:122/122 → 92/122”

==========


 オパピニアのスキルを体で覚えて、ようやく黒曜のヒントを理解する。

 あまり救世主の自覚のない俺は救世主職スキルをうまく扱えていなかった。が、敵のスキルをラーニングして使えるようになるメリットはかなり大きい。強敵の技を自分のものとして使えるようになれば、最終的にはいかなる窮地きゅうちにだって対応できるようになる。

 今もそうだ。

 オパピニアがスキルを使用してくる三秒前に戻って、覚えたばかりのスキルを発動させる。


「『既知スキル習得』発動。対象は『マジックハンド』っ!!」


==========

“『マジックハンド』、遠くの物を掴むスキル。


 『魔』を消費して手で触れていないものを近くに引き寄せるスキル”

==========

“ステータス詳細

 ●魔:92/122 → 91/122”

==========


 俺達の体を手繰り寄せるようにオパピニアの管を『マジックハンド』で掴み取る。

 突如、移動速度と方向を変化させた俺達をオパピニアは反応できず、素通りさせていく。奴が振り返った時には遥か穴の奥である。


「なるほど。オパピニアは『マジックハンド』を教えてくれる救済モンスターだったのか。『魔』を1しか消費しない使い勝手が良いスキルだ。これを使って壁を掴めば落下速度も軽減できる。なるほどっ!」


 ようやく黒曜が何を伝えようとしていたのかすべて理解できて、深く納得する。パパと一方的に呼ばれているだけの関係であるが、スカイダイビング中にもかかわらず本物の親子のように以心伝心できている。


「ねぇッ、馬鹿なのパパッ!! アイツに一度パーティーメンバー皆殺しにされたって分かって言っている?! ホント馬鹿なんでしょ、パパッ!!」




 禁忌の大空洞の底を抜けた途端、むせ返る熱気に膝を付きかける。


「ここからは馬鹿やっている余裕ないから。俺のルートを一歩も間違えずについてきて!」


 黒曜に腕を引っ張られてすぐに移動を開始した。

 黒い空に、黒い大地。

 蟲星の上を二人で慎重に、しかし迅速に隠れ進む。

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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミカライズ「魔法少女を助けたい」 1~4巻発売中!!◆  
 ◆画像クリックで移動できます◆ 
 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない


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