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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第四章 エルフは祟《たた》られる
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4-5 怪しい山賊を監視する怪しい仮面男

 北へ進み続けて半日。そろそろ本日の寝床を確保しなければとキョロキョロ周囲を見渡す。

 大森林地帯は未だ脱出できていない。

 お手上げな自然が東京ドーム数万個分を軽く超える面積に広がっているのだ。そう簡単に目新しい土地へ辿り着かないだろう。歩いて測量していたら伊能さんの一生だけでは終わらない。というか、志半ばでモンスターに食われる。


「それなりに日数が経過しているからだな。多少なりとも地球時代の記憶が蘇りつつある」


 口寂しさを感じたので、そのあたりに生えている怪しい赤い実をもいで口に含む。

 ほのかな酸味とアンモニア的刺激が鼻に付く。

 毒性植物のようであるが……なかなか癖になる味だ。気に入りました。


==========

“『耐毒』、毒物に対する耐性スキル。


 あらゆる毒物に耐え、解毒剤なしに復帰可能”

==========


「地球のドリアンもこんな味だったのかねぇ。美味いには美味いが、そろそろ動物性のタンパク質が欲しいところだ」


 夕食を済ませたので、本格的に夜露を避けられる場所を探し始める。

 定番はやはり洞窟だろう。あまり大きいとモンスターが巣にしているので悩みどころだ。

 『暗視』で洞窟の奥を探り、ドラゴンっぽい姿が見えたなら即退散。まだレベル5なのだ。寝床を探して永眠する事はないだろう。

 それにしても『暗躍』は優秀だ。色々とスキルの封印が解除されているが、気配を隠匿し敵に発見される事のないこのスキルが、今の所一番役立っている。いや、『耐毒』は食の生命線だし、『経験値泥棒』はレベルアップで地味に役立っているのだが。

 ただし『暗躍』にも限界はある。

 例えばせっかく隠れていても、くしゃみをすれば流石に気付かれてしまう。



『ごふぉっ!』



 例えばせっかく隠れていても、姿を直視されれば流石に気付かれてしまう。


『風邪でも引いたのかよ』

『馬鹿は風邪引かねぇってお頭は言っていたのによ。ごふぉっ、たく』


 くしゃみが聞こえた瞬間には、近場の木に寄り添って身をかがめていた。

 モンスターの鳴き声かと思ったが、違和感があった。

 抑揚があり、文脈がある。


『ごっふぉ、ごふぉ!』

『唾を飛ばすな。馬鹿野郎』


 二人以上の人間が、会話している様子だ。

 人気の無い魔界の森で誰かと遭遇する事はないと思っていた。くしゃみをされなければ気付く事はなかっただろう。

 声がした方向を凝視して、二人の男の姿を確認する。

 魔界の森なのでエルフかと想像していたが、違う。薄汚い格好と薄汚い顔付きの中年男性の二人組だ。

 茶色い毛皮を着込む男と、壊れた胸当てを装備した男。

 風呂に入る習慣がないようで、遠くからでもフケだらけな頭が良く見える。


『それにしてもよう。お頭も勿体もったい無い事をするぜ。せっかく捕まえてきたエルフを味見せずに売り飛ばすか? 普通!』


 相変わらず、耳が異世界言語を理解してくれない。ヒキガエルのような声質で行われる会話の内容はさっぱりだ。

 ……ただ、男達は下品なニヤつき方をして、欠けた歯を見せている。

 よからぬ会話をしていると察するのは、山賊の格好をした男達に対する偏見だろうか。


『味見はするんだろう。オルドボ様が』

『ああ、アジトの奥に連れて行っていたよな……。オルドボ様あっての俺達だけどよう。あんな小さな子がオルドボ様に犯されるなんて、可哀想な』

『ぎゃはは、可哀想ってお前、笑わせんな! 短小が初めてよりもマシだろ』

『オーガのと比べてくれるなよ、がははっ』


 悪人面が笑っている。事案発生の臭いが漂い、鼻がぴくぴく動いてしまった。

 魔界で発見した第一、第二人間族なので友好的に接したい。が、不穏な雰囲気がかもしてしまって鼻に付く。

 そも、異世界こちらには俺を助けてくれる者なんて一人もいないから、山賊恰好の二人組が山賊なのは自明だろう。声を掛けた途端、どうせ身包みがされてから殺されるのがオチだ。実にツマラナイ。

 安易な接触は避けるのが賢明だ。

 俺は『暗躍』したまま木陰から二人の観察を続ける。


『オルドボ様がいるのに。アジトの警備って、意味あるのかよ』

『知るか。お頭の命令だろうが』


 二人組が何をたくらんでいるのか興味が湧いた。

 そして、そう時間が掛からず、二人組が奥にある洞窟へとたまに目線を向けている事に気付く。

 地面の地割れが入口となっており、垂直に出入りするための梯子はしごらしき棒が見えていた。


「……日が完全に沈んでから潜入してみるか」


 人間族は知恵がある分、暴力的なだけのモンスターよりも危険度は高いだろう。怪しきに近寄らず、山賊二人組を見なかった事にして去るのが利口だと思う。

 だが、山賊の下卑げびた視線が洞窟の奥へと何度も向けられているのが酷く気になるのだ。

 人間族の中でも質が悪い山賊に、あんな蔑んだ目で見られる人物がいるかもしれない。

 それはまるで『凶鳥面』の俺のようで可哀想だ。こう好奇心を抑える事が、俺にはできなかった。

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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミカライズ「魔法少女を助けたい」 1~4巻発売中!!◆  
 ◆画像クリックで移動できます◆ 
 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない


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