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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第四章 エルフは祟《たた》られる
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4-4 金狂いの者

優太郎からのメール


『件名:Re:また悲惨な目にあっているな……

 本文:

●スキル封印解除条件

 スキル無くスキルと同等の結果を得る事で、封印解除された可能性あり

 『暗躍』は魔界でモンスターに見つからずに一晩過ごしたからだと推定

●精神操作系対処

 マッカル金貨一万枚相当の金を稼いで、捨てろ

 それで本来、お前が持っていたスキルが封印解除される

●『淫魔王の蜜』

 レベルダウンはデメリットばかりではない

 余裕があるのならパラメーターを厳選可能か確かめろ

●携帯は『暗器』で

 携帯は命綱だ。普段は『暗器』で隠し持て

●救援を待て

 既に救援部隊が異世界そっちに向かっている

 彼女達は四色の魔法使いだ

●忘れるな

 お前は助けられる人間ではなく、助ける人間だ』

 せっかく上昇した『魔』を守るために更にレベルアップして、現在はレベル5。


==========

“●レベル:5”


“ステータス詳細

 ●力:9 ●守:3 ●速:11

 ●魔:1/1

 ●運:5”


“スキル詳細

 ●実績達成スキル『吸血鬼化(強制)』

 ●実績達成スキル『淫魔王の蜜(強制)』

 ●実績達成スキル『記憶封印(強制)』

 ●実績達成スキル『凶鳥面(強制)』

 ●アサシン固有スキル『暗視』

 ●レベル1スキル『個人ステータス表示』(強制解放)

 ●実績達成スキル『正体不明(?)』

 ●アサシン固有スキル『暗器』

 ●アサシン固有スキル『暗躍』

 ●実績達成ボーナススキル『経験値泥棒』

 ●スキュラ固有スキル『耐毒』

 ●????固有スキル『暗?』

 ×他、封印多数のため省略。封印解除が近いスキルのみ表示”


“職業詳細

 ●ノービス

 ×アサシン(?ランク)(封印中)”


“アイテム詳細

 ●黒い携帯電話(『異世界渡り』実績達成済)”

==========


 多少はレベルが上がったので、今はトレントに頼らなくても経験値を入手可能だ。

 ゴブリンは経験値がショボ過ぎるので積極的には狙っていない。野犬似のハウンド系モンスターや、一メートル未満の虫型モンスターを見つけた際には襲っている。

 ただし、仲間からはぐれて一匹でいる奴限定だ。俺とて無謀ばかりに挑戦している訳ではない。

 『吸血鬼化』が発動するたびに己の腕に牙を突き立てて耐えているし、『淫魔王の蜜』が発動するたびに弱くなっているが、そういう現状に慣れてきていた。

 次のステップに移るとすれば、今だろう。



「『暗器』解放。黒い携帯電話っと」



 スキル発動後、手の平に長方形の感触が生じた。

 亜空間で大切に隠し持っている携帯を取り出すと、紙屋優太郎からのメールを改めて確認し始める。

 優太郎のアドバイスは怖くなるぐらいに適切だ。流石は優太郎である。

 例えば、『暗器』で携帯電話を隠せという指示。手持ちの武器は小回りの利くナイフ一本なので、スキルで隠す必要がない。武器ではないが、生命線たる携帯電話を隠す方が正しい。流石は優太郎だ。


「とはいえ、数日経過しても救助が来る気配はなし。居場所を教えていないのだから当然か。四色の意味も不明だしな」


 だが、救助を待てという指示だけは的外れなようだ。完璧超人よりも少し抜けている方が、親近感が湧くものである。さすゆう。



「では、予定通り金貨集めを開始するか。……で、どこで集めるんだ?」



 異世界は笑えない程にゲームな世界であるのに、何故かモンスターを倒しても金銭がドロップされない。モンスターが通貨を持っている方が可笑しいと言われればそれまでなのだが、そこだけリアルにされても納得し辛い。

 文句を言っていても始まらないので、とりあえず歩き始める。

 バッドスキル対策で必要なマッカル金貨を所持しているのは、モンスターではなく人間族の方だ。となれば、人間の気配が一切しない森にいても金貨は決して集まらない。

 正確には、マッカル金貨一万枚“相当”という事なので、価値ある宝を発見するだけでも良いのだが、森のどこを探しても宝箱は配置されていない。やはり不条理だ。

 ……まあ、あのエルフの里ならばお宝があるかもしれない。関わりたくないのでパスであるが。

 この森を去り、人間を探す。これは決定事項だろう。


「西へ行くか。東へ行くか」


 空の上には、丁度南中している太陽が見えている。

 異世界の法則を知らないので、東西の見分けは便宜的なものでしかない。えーと、太陽が沈むほうが……どっちだっけ、西?

 東西どちらを目指せば良いのか一切の判断基準はない。

 ならば、と俺は枯葉に紛れて落ちている小枝を手に取り、垂直に立てらしてみる事にした。

 小枝から手を離せば、不安定な足場の所為で西や東のどちらかに倒れる。ようするに、『運』任せだ。


「……ふむ。意外、北か」


 杖は西も東も嫌いなようで、まっすぐに俺から離れていくように倒れてしまった。

 少し釈然としてないものの、出てしまった結果には従おう。日頃の行いが良いか悪いか、向かう先で結果が分かるというものだ。

 小枝が示す方向へと進路を変えた俺。

 その先で待つ者が、俺を助けてくれるような良い人間である事を期待しながら足を進めた。





 全身に伝わる衝撃で、アイサは目覚めた。

 肩に担がれた状態から、荷袋を放るように土の地面へと落とされたのだろう。


「おい、もっと大事にしねぇか!」


 人間族の盗賊に囚われた後、アイサは薬で眠らされて運ばれた。

 そこは、薄暗い洞窟だ。ご苦労にもモンスターの巣を盗賊共が制圧し、略奪品の収集場所として活用しているといったところか。

 松明に照らされる範囲には、六人の野蛮な顔付きの男達がたむろしている。

 破れた服と小汚い顔と禿面、何かしらの身体的欠損が共通項である。盗賊職か山賊職に属しているのはまず間違いない。


「エルフか!?」

「マジかよ! 初めて見た。げへへ、可愛い顔しているぜ」


 装備はすべて取られてしまい、アイサに自力で盗賊共の魔の手から脱する方法は残されていない。

 魔界の古樹より切り出された強靭なバネを生み出す弓。

 エルフが用いるトップヘビー形状の独特なナイフ。

 不埒者を毒殺するための丸薬。

 外套や皮鎧も、エルフ特有の耳飾りさえも余さず奪われた。そのため、アイサは緑のワンピースのみの格好となっている。里を出る際の完全装備から、今はただのすっぴん状態だ。


「女か? 女だろ!」

「いや、それがよ。こいつは――」

「男でもエルフなら構わねぇよ! 俺に貸せ」



「大事な客が来ているってのに、五月蝿いぞッ! 馬鹿共!」



 洞窟の奥から怒号が響き、大柄の男が現れた。見せ付けるように大型シミターを肩に担いで、盗賊共を叱咤している。

 横柄な態度と、他の盗賊がこびを売る顔を作っているので、大柄の男が盗賊集団の頭であるのは間違いないだろう。


「頭ぁっ。エルフを捕まえてきやした!」

「馬鹿共の癖して上出来じゃねえか。手も付けてないとは、馬鹿が一回りして利口になったか」

「それがですね、頭ぁっ。こいつは――」


 アイサを捕まえた恐持ての盗賊職が、弱った顔付きで盗賊頭に答える。



「――男の娘なんでさ」



 盗賊頭は、地面に倒れていたアイサの腕を掴み取る。そのまま力任せに立たせた。

 盗賊と話すつもりはないと無言を貫くアイサであったが、酒臭い男と至近距離と向かった際には可愛い声で咳き込んでしまう。


「男の子? やっぱり、お前等は馬鹿か。こんな可愛い子が男の子の訳がないだろうが」

「いえ、男のなんですって」

「まどろっこしいな」


 そして、大柄な盗賊頭の大きな手で股座を捕まれた際には、流石に悲鳴を上げてしまった。


「なっ! なぁっ!? 何をする、の! ……じゃなくて、何をする! こ、この人間族!」


 盗賊頭は、大柄が繰り出す握力でアイサの股間を潰そうとしている訳ではない。健康のために二つの玉を手の内でグルグルまわすように、優しくでているだけだ。


「ひぃっ、離せ。ぼ、僕に触れるな! ひぃっ、この」

「けっ、本当に男か……ん?」


 アイサの震える非難の言葉を無視して、盗賊頭は触診を続ける。

 アイサは恐怖に縮こまっていたが、小さく身を固めているだけで質量が消えてなくなる訳ではない。盗賊頭はアイサが男性である証拠を既に掴んでいるのに、何が気になるのか診断を続けている。

 気色悪く伝う指の動きに対する最後の防波堤は、紐と一枚布から出来た下着だけ。あまりにも薄い。

 下半身から伝わる悪寒は十秒と続いていなかっただろう。が、アイサの体感時間は数十倍に延ばされていた。



「玉だけじゃねえな。両方付いてやがるっ!」



 エルフ様は変わっておられる。と、盗賊共は唾を飛ばしながら爆笑する。

 幼精としての身体的特徴を恥じる事は、これまでのアイサであれば決してなかったはずである。無知な他種族が、エルフの種保全機能を知らないからと無視できたはずなのだ。

 しかし……アイサの脳裏に浮かぶのは、里長の怒り狂った顔である。

 同じエルフの、それも里を一つ任される程に高位なエルフの思考は、盗賊共と似通ってはいなかっただろうか。

 喜怒哀楽の喜びと怒り、里長と盗賊は正反対の態度をアイサに向けているが、意味するものはうり二つだ。

 要するにそれは、アイサという個の否定である。


「売れんのかよ。奴隷商人に安く叩かれねぇか?」

「良いじゃねえか。両得だろうが、がはは」


 気にする程の価値のない盗賊共からの嘲笑に、アイサは目の端に涙をにじませてしまう。人間族に泣かされるエルフという絵面がみじめで、涙の液量は更に増した。

 これ以上のどん底はないのではないか。

 こう、アイサが錯覚しかけた時、新たな笑い声が洞窟に木霊した。



「ぐふぇふぇ。そいつ、高値で売れる。マッカル金貨が、ざっくざくだァ」



 盗賊頭が現れた洞窟奥から、盗賊共に野太い声が掛かる。

 閉塞感ある洞窟とはいえ、大柄の盗賊頭がシミターをかつぎながら歩けるスペースがある。

 だというのに、新たに現れた野太い声は狭苦しそうに身を縮めて歩行していた。

 それでも頭がつっかえさえており、髪のない頭頂部を天井にこすらせている。体長三メートル強と、人間族離れした身長を持っている。


「すいません。オルドボの旦那」

「おで達の間柄だ。良いって事よぉ」


 人間離れしているのは当然である。

 なにせ声の主の正体は、紫色の肌に、金色の目を持つオーガだからだ。


「大手柄じゃねぇか。おでの盗賊団は優秀が過ぎるぜぇ」

「オルドボの旦那がいての、俺達ですぜ」


 それにしても、奇妙な構図だった。

 人間族とモンスターが一緒の空間にいるというのに、争いが生じない。特に、同一種以外は潰すか千切るか犯すかしか能のないオーガが、友好的にも盗賊頭の肩に手を置いて軽く叩いている。

 何よりも、オーガの癖に人語を解する程に知能が高いのが異常である。


「両性ぐ、具有ぅふふ。幼精のエルフはァ、高く売れるぞぉ」


 知能高く低俗な事を口走るオーガはアイサへと下品に笑い掛ける。

 高価な商品に向けるような、唾液が口元から垂れ出る笑顔だ。


==========

“●レベル:56”


“ステータス詳細

 ●力:287 守:205 速:47

 ●魔:162/162

 ●運:0

 ●金:???万枚マッカル金貨相当”


“スキル詳細

 ●レベル1スキル『個人ステータス表示』

 ●オーガ固有スキル『力・良成長』

 ●オーガ固有スキル『クリティカル率上昇』

 ●オーガ固有スキル『突撃無痛』

 ●実績達成ボーナススキル『ゴールド・アーマー』

 ●金融業者固有スキル『計算能力上昇』

 ●金融業者固有スキル『パラメーター追加(金)』

 ●金融業者固有スキル『個人金庫』

 ●金融業者固有スキル『高利貸し』

 ●金融業者固有スキル『経営的カリスマ』

 ●実績達成ボーナススキル『成金(強)(強制)』

 ●金融業者固有スキル『ギルドマスター』

 ●盗賊固有スキル『宝察知』”


“職業詳細

 ●オーガ(Bランク)

 ●金融業者(Sランク)

 ●盗賊(初心者)”

===============

“『成金(強)(強制)』、両手から溢れ出る金にほくそ笑むスキル。


 金銭感覚が麻痺するが、持ち資産で実現可能な欲望に対する耐性が百パーセントになる。

 往々にして、人は現在資産以上の金を求めてしまうため、スキルを有効活用できる場面は少ない。

 強制スキルであるため、解除不能”


“実績達成条件。

 マッカル金貨一万枚分の金を一日で稼ぐ”


“≪追記≫

 実績達成後も金貨を稼ぎ続けて一日でマッカル金貨十万枚分の金を稼いだため、スキルが強化されている。

 瞳は黄金色に変色し、常に金の事ばかり考えるようになってしまう。モンスターでありながら、金を稼ぐために人間族と協力し合うぐらいに極まる”

==========


「おでは、オルドボだぁ。短い間になるが、よろしくなァ」


ついに敵幹部の登場です。

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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミカライズ「魔法少女を助けたい」 1~4巻発売中!!◆  
 ◆画像クリックで移動できます◆ 
 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない


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