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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第ニ十章 人類国家の挑戦
285/352

20-9 再戦


「アアァァアアアははッ! 肉を献上せよ! 脾肉ひにくをよこせ! この悪霊魔王の腹は常に満たされぬ、アアアアハハハ!」


 カラスの行水がごとく、ドラゴンゾンビは翼を開閉し、黒い粘性ある液体を散らばらしてモンスター陣地で大暴れしていた。軽く一万を超えていたモンスターは既に半減している。このままのペースなら十分も持たず全滅だ。

 要塞内にこもった人類は今のところ被害はないものの、モンスター軍団の次は我が身だと直感していた。

 勇敢な人類国家の面々も、凶悪な魔王相手では動揺せずにはいられない。

「あッ、あのドラゴンゾンビについてッ、分かる者を招集せよ!」

 アニッシュの要請に答えし者は三名。


「俺、ドラゴン姿の土地神様は見覚えないんだが」

 何でも知っているペーパー・バイヤーがせ参じる。


「あの翼長、首が両断されたかのような傷痕、私達の土地神様で間違いないかと」

 城壁の上から跳び下りてきたリリームがエルフの視力で確認したドラゴンゾンビの姿から断定する。


「『魔』の属性は悪へと反転しきっております。いえ、悪竜があの方の本性なので、元に戻ったというべきですわ」

 気配なく現れた月桂花が、魔法使い職としての知見よりリリームの見立てを補強した。


 多くのドラゴンは空を飛び、人間は時々、下から姿を見上げるだけである。住んでいる領域が異なる生物であるため詳細は謎に包まれている。パラメーターどころか名前さえ分からない事が多い。なお、数少ないネームドは基本的に災害を起した元凶として恐れられている。

「時々現れていたが、あれはそなた達の仲間か。ならば、落ち着くように説得してくれぬか!」

 ドラゴンゾンビの正体が判明しているのは実に幸運だ。地球あちらでは土地神として崇められている稀有な善性ドラゴンとなれば尚の事である。見た目は酷く腐っているが、ドラゴンは見た目ではない。


「無理だろ」

 ペーパー・バイヤーは即答した。


「完全に暴走しているご様子なので、無理です」

 リリームも即答する。


「悪い物を取り込み過ぎて正気を失っていますわ。食い意地はあっても拾い喰いはしない方でしたのに」

 説得を最初から諦めている月桂花は別方面に心配するだけだった。


「揃いも揃って薄情な! 御影パーティはどうなっているのだっ」

 仲間意識の欠片もない発言に呆れさせられたアニッシュであるが、ドラゴンゾンビがモンスターをすべて平らげる前に具体的な対策を立てなければならない。

「御影と連絡は取れたのか? そなた達は箱精霊を持っておるはずだ」

「スマフォの事か。それならLIFEで送った。既読は付いたから読んだと思うが、向こうは戦闘中で忙しいのだろう」

 魔王と直接戦闘可能な人材が出払っているのは痛恨だ。もちろん、要塞に残っているメンバーにも職業Sランクの猛者は多いので戦えない事はない。

「アイサ! そなたの眼で見た限り、あのドラゴンゾンビは余達で勝てる相手なのか?」

「……うーん、『鑑定モノクル』してみたら歴代トップのスキル保有数。パラメーターも山羊魔王と戦えそうなぐらいに高いけど、戦ってみる?」

 狙撃銃のスコープ越しにドラゴンゾンビの目の奥をうかがったアイサが、多過ぎるスキルを口頭で伝えるのに難儀する。


==========

“●レベル:102”


“ステータス詳細

 ●力:1910 守:0 速:249

 ●魔:3652/3752

 ●運:0”


“スキル詳細

 ●悪竜固有スキル『暴虐』

 ●悪竜固有スキル『暴食』

 ●悪竜固有スキル『暴君』

 ●悪竜固有スキル『暴走』

 ●悪竜固有スキル『暴悪』

 ●吸血鬼固有スキル『不定形なる体』

 ●吸血鬼固有スキル『ブラッディ・ロード』

 ●オーク固有スキル『弱い者いじめ』

 ●コボルト固有スキル『家事手伝い』

 ●馬固有スキル『足回り強化』

 ●ケラ固有スキル『掘削』

 ●インプ固有スキル『耐魔法(弱)』

 ●骸骨兵固有スキル『超回復(骨折限定)』

 ●ケイブ蝙蝠固有スキル『可聴域拡大』

 ●スライム固有スキル『ヒアルロン酸』

 ●巨大鰻固有スキル『コラーゲン』

 ●大サザエ固有スキル『守強化(弱)』

 ●バトルシャーク固有スキル『ロレンチーニ器官』

 ●サバ固有スキル『青魚』

 ●サハギン固有スキル『海棲生物』

 ●人参固有スキル『カロテン』

 ●ナイトゴーント固有スキル『くすぐり』

 ●キャベツ固有スキル『ビタミンA』

 ●ショゴス固有スキル『漆黒体液』

 ●レタス固有スキル『ビタミンC』

 ●ロック鳥固有スキル『怪力』

 ●ワイバーン固有スキル『飛行速度強化(弱)』

 ●火竜固有スキル『フレイム・ブレス』

 ●魔王固有スキル『領土宣言』

 ●土地神固有スキル『信仰』(無効化)

 ●土地神固有スキル『文化熟知』(無効化)

 ●土地神固有スキル『土地繁栄』(無効化)

 ●土地神固有スキル『天災無効化』(無効化)

 ●実績達成ボーナススキル『勘違い(被害者)』(無効化)

 ●実績達成ボーナススキル『気苦労』(無効化)

 ●実績達成ボーナススキル『肉食嫌悪』(無効化)

 ●実績達成ボーナススキル『弱人間族(極)』(無効化)

 ●実績達成ボーナススキル『神格化』(無効化)

 ●実績達成ボーナススキル『弱勇者(大)』(無効化)

 ●実績達成ボーナススキル『悪霊化』(再開)

 ●実績達成ボーナススキル『従属化(主:御影)』(無効化)”


“職業詳細

 ●土地神(Aランク)(休職中)

 ●従僕ペット(Dランク)(無効化)

 ●魔王(Dランク)”

==========


「スキルが多いのは『暴食』スキルの所為じゃないかな。食べた相手のスキルを吸収できるみたい」

 途中、海辺まで進出していた事が分かるスキル構成である。時々野菜を食べて口直しをしている所まで、アイサの『鑑定』のお陰で丸裸だ。

 幸い、ドラゴンゾンビは攻撃的なスキルばかりを吸収できていない。が、それも時間経過によっては分からなくなる。食べれば食べる程に、より上位の種族スキルを吸収してしまう可能性は高まるはずだ。早めに倒さなければならない魔王であるのは間違いない。

 ただし、スキルを考慮しなくてもドラゴンのパラメーターは異常だ。数値の桁が異なるため、腕の一振りをくらえばSランク精霊戦士のリリームですら即死してしまうだろう。

「アンデッドらしく『守』が0であるのが救いであろうが、戦えば余達は壊滅してしまうであろうな」

 被害を考えず戦ったとしても、ドラゴンゾンビは形勢が悪くなれば飛行して逃げてしまう。これまで数度敵対し、凶鳥を名乗っていた頃の御影が本気で殺しにかかっても生き延びてきた実績を持つ相手だ。

 ハードモードがハーデストモードに難度が強制上昇する事などナキナでは珍しくはない。と、痩せ我慢を言うには相手が悪過ぎる。

「逃げたドラゴンゾンビがついに魔王化して余を狙うか。悪霊魔王という名も当て付けなのであろう。これは……覚悟を決める時がきたという事か」

 ただ、アニッシュの覚悟はまだまだ甘い。ハーデストモードの上にはインフェルノモードがまだ残っているからである。

 状況の悪化に限界というものはないと告げるため、地面がズシリと上下に揺れた。地面に穴が開いて迷宮魔王が追加のモンスター軍団を送りつけてきた……にしては、アニッシュを含むナキナ人は既視感ある揺れ方だ。

 揺れは一度で終わらない。

 巨大な駆動装置を持つ巨体が、高速で近付くように何度も繰り返される。


「これはッ、奴め、いつの間に人類圏へと進軍していた!!」


 要塞の城壁を駆け上がりドラゴンゾンビがいる西ではなく北へと目線を向ければ、山へと脚部をかけて巨大な直方体構造が出現する光景が見受けられる。

 膨大な自重で山肌を潰してならし、墓石魔王が行軍する。

 かつて原型一班オリジナル・ワンの魔法使い職が作成したという人工の魔王は、現れた理由を一切語らず、ただ己が進む道を破壊する。


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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミカライズ「魔法少女を助けたい」 1~4巻発売中!!◆  
 ◆画像クリックで移動できます◆ 
 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない


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