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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第ニ十章 人類国家の挑戦
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20-4 胃袋攻略済みです

 取っ組み合いの結果、見事に新入りの帝国騎兵部隊の撃滅に成功する。要塞内という閉所で騎馬が活躍できるはずもなく、帝国の皆さんは揃ってノックアウトされた。

 いや、魔王とも戦う勇敢なナキナ兵、近接戦では人類屈指の獣の種族、後方には弓と精霊魔法でサポート可能な森の種族と人材豊富な我々にただの人類が敵うはずがなかったのである。


「蛮族共ッ、せ、責任者を出せ!」


 兜を付けていた所為で分からなかったが、騎士団を率いていた先頭の人は女性であった。

 帝国の良い所のお嬢さんらしく、危機にひんした祖国を立て直そうとかつぎ上げられた人のようだ。今は髪がぼさぼさで鎧が脱がされた半裸状態と無残であるが、帝国戦闘姫などと呼ばれて評判の人らしい。

「よし、アニッシュ。出番だ」

「都合の悪い時だけ余に頼ってくれるなっ!」

「そう言うな。俺には女難の相がダークエルフの姿となって現れている。これ以上のフラグは恐ろしいので、当分は女に近寄りたくない」

 アニッシュの背中を押してやる。

 しぶりながらもアニッシュは愛想笑いを作りつつ、倒れる帝国戦闘姫へと手を伸ばした。


「余がナキナ王にして人類国家をまとめるアニッシュであるが、ようこそ?」

「蛮族が人類国家だと! 辺境の者共が勝手に代表を気取るなど何事か! お前達が盾として役立っていれば我々がこのような窮地に――」


 アニッシュが伸ばした手を帝国戦闘姫が打ち払う。と、帝国騎士団をのした兵士達が全員ガンを飛ばした。

「アァ?」

「どうやら歓迎が足りなかったらしいな」

「こりゃあ、ナキナ式の歓迎会を開くしかないか。塹壕堀り競争に絶食我慢大会、モンスター狩人ダブルクロスと続くが……まずは軽く二十四時間城建築からだ」

 無駄に関節を鳴らして威嚇するナキナ兵達。獣の種族と森の種族も乗りが良いので一緒になって帝国人を脅す。


「――ひぃ!? 自軍の教育ぐらいしておけ!」


 人類同士もう少し仲良くできないものなのか。せっかく合流したというのに、さっそく精神的な溝が生まれてしまっていた。




 今回合流してきた帝国軍残党は騎兵二百を中核とする小部隊である――広大な領土を有した帝国の中では、であるが。ナキナからすると中部隊程度。

 小さな城に拠点として必死に魔王連合と戦い続けていたらしく、数に反して士気は高い。とはいえ、十万単位の魔王軍に立ち向かえる戦力ではない。今後の大反抗のためには人類国家との協力が必要だと考えて、はるばるオリビアの新設要塞までやってきた訳である。

 到着時に起きた多少の誤解により人類国家に不信感を持ったようだが、戦闘力については一目置いてくれた事だろう。

「たった二百で二ヶ月も戦えたのは素直にすごい。あの態度も納得だ」

「正確には歩兵や補給部隊も含めて千人単位の部隊のようであるぞ。難民を連れているため遅れて到着する。それと、帝国人は他国に対してあれが普通であるのだ」

 要塞内の執務室でアニッシュは頭を抱えている。追加で態度のでかい帝国人難民が増えるとなれば、不安を抱えずにはいられないのだろう。ナキナの多民族化は加速度的だ。

「難民まで抱えて戦っていたのか。残党に補給線なんてなかっただろうに、よく戦えたな」

 戦って敵に勝利する事以上に敵と戦い続けるのは難しい。補給線が途絶えれば、どんなに強力な武器を有していても使用不能になってしまう。ナキナでも以前オリビア・ラインによって補給が途絶え、塩不足や食料不足が深刻化していた。

 しかも、合流してきた敵国部隊は騎兵だ。騎兵であれば、馬の分の食料や水を確保しなければならなかったはずである。更に難民をやしなえたとなれば、帝国という国はよほど裕福だったに違いない。

「その補給について気になる事があって御影を呼んだのだ」

 遠くから、開門、と大声が上がる。難民達が到着したらしい。

 徒歩移動によって難民達は疲れ果てている。要塞の備蓄が減るのをアニッシュは気にしているのだろう。……そこで俺が呼ばれる関連性が見えないが。

「いや、帝国部隊は物資的には恵まれておったのだ。今から到着する補給部隊が輸送している食糧は、この要塞の総備蓄よりも多いかもしれぬ」

「残党部隊の方が正規軍よりも恵まれているなんてありえないだろ。ナキナはそんなに貧乏だったのか??」

「せめて帝国が裕福であったと言って欲しいものだが、根本的な問題は国力差ではない」

 アニッシュが言う通り、門を潜り抜ける馬車や荷車の数は多い。すべての荷台に箱が山のように積まれている。


「彼等に補給路はあったのだ」


 荷台の箱には共通の焼印が押されている。牙を持つ男の顔をデフォルメしたような形だ。

 地球でもトラックの荷台に会社名やマークが印刷されているが、箱の焼印も宣伝効果を狙って付けられたものか。


「高額であるが、金さえ払えば何でも揃える商会が残党部隊に物資を届けていたらしいのだ」


 ちなみに、牙男の焼印の箱はナキナでも見かけた事がある。塩不足が深刻化した際、アニッシュとヘンゼルの商談が成立後、密林通販並みの速度で王都へと塩が届いた時だ。塩を入れていた箱にも牙男の焼印が押されていたらしい。

「まさか……オルドボ商会、か?」

「そうだ。オルドボ商会が補給線の役割を担っている。ただ一つの残党部隊だけではないぞ。帝国、いや、人類圏のほとんどに販路を有して流通面より人類全体を支えていると言っても過言ではない」

「いや、待て待て。オルドボ商会がどうして人類支えるんだ??」

 戦時成長を果たした新進気鋭の謎の商人職ギルド。

 彼等の名前は、オルドボ商会。

 ぼったくりな値段でのみ取引を行う金の亡者のようなギルドであるため評判は悪い。だが、オルドボ商会には他の商人には真似できない特殊性が三つも存在する。

 一つ、お客様がいるのであれば地下迷宮であろうと合戦場であろうと営業。

 二つ、お客様が望むのであればどんなに入手困難な物でも注文受付(ただし別途手数料がかかります)。

 三つ、お客様をお待たせしないため全世界へと伸びる独自販路で即時配達。


「オルドボ商会のギルド長は迷宮魔王の幹部、オーガのオルドボだぞ」


 謎のオルドボ商会。その実体は、魔王連合の下部組織である。ギルド長たるオルドボと一戦交えた俺が言うのだから間違いない。

 以前から人類と商売する妙なオーガだと思っていたが、人類圏の半分を征服した今も続けていたとは思わなかった。魔王連合に抵抗する残党を魔王連合が助けるのは理解しがたい。

 いや、金で食料を敵が分けてくれるのであれば悪くないでは……などと、アニッシュは能天気に考えてはいない。


「御影よ。これはゆゆしき事態かもしれぬぞ。人類は既に流通面から支配されてしまっている」


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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミカライズ「魔法少女を助けたい」 1~4巻発売中!!◆  
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 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない


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