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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第二章 孵化
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X-3 走馬灯3


「短い人生だ。精々、苦しめ!」


 『吸血鬼化』スキル獲得のポップアップが網膜内に浮かび上がった瞬間、全身の筋肉が痙攣けいれんし始めた。

 スキル名通り、俺の体は吸血鬼と化しているか。体の構造がDNA配列レベルが組み替えられていく。臓器を直接掴まれて、すり鉢で潰されていく激痛。意識がグチャグチャにかき乱される。

 漁獲された魚のようにビクビク震えているのに、拘束されているから倒れる事さえも許されていない。

 吐気が止らず、辛い胃酸を絶えず吐き続けた。



「……お可哀想に。なぐさめてあげましょう」



 そんな酷い状態の俺を、妖艶な気配が包み込む。


「さあ、甘露かんろですわ。お飲みなさい」


 頬を包む女の手は柔らかく温かい。

 対照的に、蛇が獲物を狩るかのように接吻せっぷんは獰猛だ。ネチャクチャ、粘液が鳴り響く。長い女の舌が、口内で俺の舌を奉仕する。

 喉奥へと流し込まれていくのは、甘い異性の唾液。

 蒸していく脳が一瞬だけ正常化し、女は魔王連合の一柱だと気付いて抵抗するが……淫魔王にとって、男を手玉に取るなど造作もない。


「さあ、もっと、味わって」


 舌を噛み千切ろうとする行いは、歯の根元をくすぐる淫魔王の舌先に緩和されていく。

 結局、たらふく唾を飲まされるまで、淫魔王の接吻ディープキスは続けられた。


「はぁはぁ……。無駄だ。俺に毒は通じない」

「そのような無粋な呪いではありませんわよ?」


==========

“ステータスが更新されました

 スキル更新詳細

 ●実績達成ボーナススキル『淫魔王の蜜(強制)』”


“実績達成ボーナススキル『淫魔王の蜜(強制)』、飽きず、枯れず、満たされず。


 性的興奮の対象となった異性の『力』に対し、六割減の補正を与える。性別判定は、本スキル所持者の主観に異存する。欲情できる相手であれば異性と判断される。

 また、一定周期で、過剰なまでの肉欲的衝動に襲われるようになる。どんな相手であっても、異性であれば傷付ける事を後悔する余裕もなく暴行してしまう。

 衝動に抗う事は可能であるが、一度の抑制によりレベルが1下がる。レベル0の場合は獣となるしかない”


“実績達成条件。

 実績というよりも呪いという方が正しい。ある魔王に唾液を飲まされた実績により、人間性を大きく失いかけている。スキルによるメリットよりもデメリットを憂慮すべき”


“≪追記≫

 強制スキルであるため、解除不能。解除したければ、呪いを授けた魔王を討伐する以外に方法はない”

==========


「……貴方が、強い殿方であれば良かったのに」


 新たなスキルに目覚めている間に、淫魔王は俺から去っていく。発情した顔のまま、待っていた吸血魔王と共に木々の向こう側へと消えていった。

 見える範囲に残っているのは、長鼻獣のモンスターだけだ。

 獣の癖に二足歩行しているのが気に入らない。紳士のような口調と声質がなお悪い。


「偉大なる御二人方に呪われて気分はいかがですかな?」

「最悪の気分だ!」

「なんとも、酷い誤解です。貴方は理解されておられない。絶望という沼には、底はないのですから」


 長鼻獣は片手を俺の額へと押し当ててくる。

 こいつも説明文を読むのも躊躇ためらうバッドスキルを授けてくれるようだが、二つも三つも変わらない。

 これ以上、何に悲観すれば良いというのだろうか。


「我等は貴方を恐れます。人間の身でありながら、三柱もの魔王を抹殺した貴方は異常なのですから。生かしてはおきますが、安全対策は完璧でなければなりますまい」

達磨だるまにでもするつもりか」

「もっと利口な方法です。……実はこの私め、記憶を封印するスキルを有しておりまして」


 今日の夕飯の献立を語るかのように、軽々しく己のスキルを語る長鼻獣。

 異世界の常識から言えば、所持しているスキルを語る者は馬鹿と決まっているのだが……今、記憶封印スキルとは言っていなかったか。


「記憶を封じると、副次的にこれまで獲得した経験値やスキルが封じられます。ああ、安心しなさい。魔王の方々からいただいたばかりのスキルについては残しておいてあげましょう。そのぐらいの融通は利かせましょう」


 何でもない事のように重大事実を告げると、長耳獣はスキルを発動させた。



「では、『夢を見ない夜』発動。心安らかに。記憶を失う恐怖すら、すぐに忘れてしまいます」



==========

“ステータスが更新されました

 スキル更新詳細

 ●実績達成ボーナススキル『記憶封印(強制)』”


“実績達成ボーナススキル『記憶封印(強制)』、これまでの経験を封じられる最大級の足枷あしかせ


 自己に関する記憶を封じられると共に、これまでの人生で得た経験値を取得前の状態に戻される。スキルについても封印状態となる。

 頭をフライパンで殴った程度で思い出せるゆるい封印ではない。瀕死の重傷を負った際の走馬灯を見て、ようやく思い出せるか否かの強烈な封印である”


“実績達成条件。

 実績というよりも呪いという方が正しい。ある魔族にスキルにより記憶を封印されてしまっている”


“≪追記≫

 強制スキルであるため、解除不能。解除したければ、呪いを授けた魔族を討伐するのが手っ取り早い”

==========

“ステータスが更新されました

 レベルが10下がりました


 また、以下のスキルが封印されます

 ●実績達成ボーナススキル『正体不明(真)』

 ●実績達成ボーナススキル『魔王殺し』”

==========


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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
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 助けたいシリーズ一覧

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 第二作 誰も俺を助けてくれない

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