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監禁

テレビでは、まだ腕輪の使い方ビデオが流れていた。

みんなは、疲れた様子でこちら側のソファへと思い思いに座り、腕輪をいじったりしていた。

伸吾だけがまだ、テレビの前で立って必死に腕輪の操作を覚えていた。

説明といっても、文字と腕輪の図が示された画面を見ながら、案内を聞くだけのことだったので、スマートフォン世代の美沙達なら、一度見たら簡単に使いこなせた。

それでも命に関わるとか聞いたので、美沙は一応、三回も聞いた。

要は、これは通信機器もかねている、とてもハイテクな機械なのだ。

数字キーで、誰かの番号を押せば、その相手と繋がって、話をすることが出来る。

0を押せば、通信が切れる。

誰かから通信が来たら、画面に数字が現れるので、0を押せば応答することが出来る。

ただ、午前0時から午前5時までは、連絡機能が使えなくなる。

今は無いが、各部屋に置いてあるイヤフォンを使えば、通信の音声をそれで聞くことも可能だ。

そんなところだった。

博正と翔が、お互いの番号を押して本当に通信出来るのかと試して騒いでいる。

その他の子達も、珍しげに腕輪に触れていたが、そのうちに飽きて来て、何も触らなくなった。

暇だなあ、今日はどこで寝よう、と美沙が思っていると、伸吾の声が真後ろでした。

「しっかり理解したぞ!これで、話が出来るってことだな?」

美沙が呆れて振り返ると、もうテレビの画面は真っ暗になっていた。一時間経ったのだろう。つまりは、伸吾は一時間もあの説明を見続けていたのだ。

「みんなもっと早くに分かってたわよ?簡単なことじゃないの。」

美沙が少し、八つ当たり気味に言うと、伸吾は少し、傷ついたような顔をしながら言った。

「だってさ…命に関わるとかいうから。何か、見落としたりしたらいけないなって思って。」

気持ちは分かるが、大したことじゃなかった。

何をさせられるのか分からないが、伸吾の作業効率にはあまり期待しないでおこう、と美沙は思った。

すると、ソファに体を預けていた綾香が起き上がった。

「つまるところ、あたし達は今夜ここで寝ることになったんでしょ?あっちのお手洗いの奥に、シャワールームがあったんだけど、使っていいかな?そろそろ化粧も落とさないとさあ。あたし、昨日からこのままだし。」

美沙は、確かにあった、と思い出した。男女に分かれたトイレの向こうに、同じように男女に分かれたシャワールームがあった。シャワーブースは、各三つぐらいだったんじゃないだろうか。

「あ、私も使いたい。」

美沙は思わず言った。すると、京介が皆を見回しながら言った。

「うーん、じゃあオレ達は後でいいや。見た所、男子9人女子9人だから、真ん中の仕切りを開けて男子側も使ったら、一度に6人使えるんじゃないか?最初の6人が出た後で、次の三人が仕切りを閉じて使ってくれたら、オレ達は男子側のを順番に使うよ。きっと、女子ほど時間は取らないしさ。」

綾香が、立ち上がった。

「よし、そうしよう!じゃ、あたし先に行くよ?あと5人だっけ。先に入りたい人、来てくれたらいいから。」

綾香は、さっさと自分の荷物から、何やら出すとキッチンとは別の扉を開いて、入って行く。

美沙は、遅れてなるものかと、誰にも言わずに先に荷物のところへ突進すると、中から洗面道具や着替えを引っ張り出して、綾香の後を追った。


中へ入ると、トイレの男子マークが向かって左、女子マークが向かって右にある。

女子マークのところへ入って行くと、そこは左側にトイレ、右側に手洗い所があるトイレだった。

きれいに清掃されていて、床もぴかぴかだ。

そこを抜けると、仕切り用のカーテンの向こうに、シャワー室があった。

シャワーブースが横一列に並んでいて、三つ並んだ所で、遮るための長いカーテンがあり、それを開けると、男子側のシャワーブースが横に三つ並んでいる。

左側を見ると、簡単な脱衣スペースがあって、綾香がもう、服を脱ぎにかかっていた。

「ああ、美沙ちゃん、だっけ?カゴがあるわよ、使う?」

綾香は、上着を脱ごうとしていた手を止めて、カゴを一つ、美沙に差し出した。美沙は、頷いて受け取った。

「ありがとうございます。」

綾香は、また上着に手を掛けた。

「別に敬語なんていいよ。ここじゃみんな、先輩後輩なしじゃん。みんな初めてなんだから。」

そう言われても、この雰囲気には敬語でなければならないような感じを受ける。

美沙がおずおずと服を脱ぎ始めていると、綾香はさっさと服を脱いで、一番右端のシャワーブースへと入ってカーテンを閉めた。

少しホッとした美沙が引き続き服を畳みながら脱いでいると、ぞろぞろと残りの四人が入って来た。

梓とほずみ、それに美鈴と麻美だった。

「高校生、先に入っておいでって。」

美鈴が言った。きっと、あの後誰が先に行くとか、もめていたのだろう。

「ごめん、なんか先に来ちゃって。」

美沙は、疲れて余裕が無くなって来ている自分を感じた。こんなに長い間、みんなと一緒なのに慣れないのだ。外向きの顔も、限界が来ている。

しかし、麻美が首を振った。

「いいんだよ、こんなことは早く決めないとって。仕事で群れるなって、あの遅れて来た山辺って人に怒られちゃった。誰と誰とが一緒でないと駄目とか、そんなこと言ったら怒られるみたい。」

美沙は、苦笑した。

つまりは、仲がいい二人ずつのこの子達が、別々は嫌とか、そんなことを言ったんだろう。

それにしても、山辺はとても強面な男だった。

きっと、普通の人に言われる以上に怖かったんだろうな。

美沙はそんなことを思いながら、綾香の隣りのシャワーブースへと入ったのだった。


最初の6人が出てから、次の三人が入って行った時に、男子の入浴も始まったにも関わらず、終わったのは男子の方が早かった。

最後の一人が出て来た時には、時計は8時前を指していた。

先に出ていた美沙達は、お腹が空いたのでまた冷蔵庫から冷凍食品を出して、それを温めて食べていた。

いくらなんでも寝るにはまだ早い時間で、しかも綾香は昼間に何時間も寝たので、全く眠くないらしい。

なので、その夜はまた、みんなで人狼ゲームをすることになった。

気が進まないらしい大井真司が、自分が進行役をする、と言ってカードを取ってしまい、博正は仕方なくプレイヤー側になった。

そんなこんなで、全員揃って人狼ゲームをしながら夜を過ごし、それでも夜中を過ぎる頃には一人、また一人とソファで眠り始めて、起きて頑張っていた美沙も、慣れない一日に疲れ切っていたのか、気がついたら役職カードを握り締めたまま、眠りについてしまっていたのだった。


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