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初恋  作者: 坂口 玲
1章
2/20

1-1

2015.09.14 一部修正

 あれは私が小学校四年生の頃だったろうか。近所の子供達と家の前で野球のまね事のようなことをしていた頃のことだ。


 野球と言っても、プラスティック製のバットと、分厚いゴムか、軟性プラスティックでできたボールを使った、子供の野球だ。各塁のベースは電柱やマンホールを目印にし、ホームベースは石でアスファルトにそれらしい五角形を書いた。だから、毎回ホームベースの大きさ、形はまちまちだった。審判がいるわけでもなく、ストライクかボールかなどというのは、いわば多数決で決まった。今から考えるとこんないい加減なジャッジでよく喧嘩にならなかったものだと思う。しかし、私が忘れてしまっているだけで、しょっちゅう喧嘩していたというのが実際のところなのかもしれない。


 毎日、学校から帰ると、約束もしていないのに、いつものメンバーがいつもの「野球場」に集合した。

 大将は私より二つ上の宏樹君だった。そして一学年空いて私がいて、あとは一つ下の雅夫君、吾郎君。この四人が定番メンバーだった。時おりこれに幾人か加わったりしたが、もう私の記憶の中には顔は浮かんでも名前は出てこない。


 大抵はこの四人で野球をした。この人数では守備が希薄であるため、我々の野球では、特別ルールが設けられた。通称「当て殺し」と呼ばれるルールである。本来の野球ならば、タッチしなければアウトにならないが、ボールをぶつけることでアウトにできるという、そんな特別ルールだ。これも、考えてみればめちゃくちゃなもので、球速は明らかに走る速度よりも速いのだから、アウトになる可能性が大きいわけである。


 しかし、攻撃側にも別のメリットがある。ホームグラウンド一周がおそらく五十メートルほどで、少し大きなヒットが出れば、間違いなくランニングホームランにできるのである。また、民家がすぐそばにあるから、少し打ち上げてしまうと、ほぼ間違いなく、民家の中へ入ってしまう。この場合、ホームランではなく、どんなに遠くの民家へ入ってもそれはファール扱いにされた。よく民家に入ったボールをとりにいったもので、何度もチャイムを鳴らされた各家のご婦人がたはさぞ迷惑したことであろうと思われる。


 私達は、何かにとりつかれたように、野球に熱中した。一周五十メートルほどの小さな野球場。それが私達の全てだった。


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