表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/24

4 ハテナ学園の裏校則

 教室に戻る廊下を歩きながら、ガイドは説明してくれた。


「ここは、精霊の宿る地に建てられた学園なんだ」

「ふーん」

「精霊のイタズラがしょっちゅうある。それがいつしかワルサ団と総称されるようになった」

「うん」

「学園の裏校則。高校2年生がワルサ団に対応すること。学園公認。生徒皆で、仲良く楽しくやりなさいと」

「はい」

「それさえ精霊の悪ふざけの気がするんだけど、2年生になると、生徒の中に、学園内限定の特殊能力を持つ者が現れ始める」

「へえ」

「毎年、テイストが違う。去年は、戦隊モノだった。今年はひねりがきいてて、ナヅケがあだ名をひらめくと、それが特殊能力になるんだ」

「ほほう」

「特殊能力を悪用することはできない。能力の発動は、時を選ぶ。基本的には精霊の関与があった事象において発揮される。まあ、みんな、退学になるのは嫌だし、楽しい方がいいし、あまり変なことにはならない」

「うむ」


 ガイドは不思議そうな顔をして、私を見た。

 何、そんなきれいな顔で。


「シルコは驚かないの?」

「めちゃくちゃ驚いてます」

「そう見えないね。俺の話、ちゃんと聞いてた?」

「ものすごく興味津々です」


 私は嘘じゃないことを知らせたくて、力強く言っておいた。

 ガイドは目をぱちぱちとさせた。



 ガイドは言った。


「えっと。ちなみに、さっきは中庭で何が起こったか分かる?」

「塩が大量に混ざった花壇で、早送り。察するに、植物を塩分濃度の高過ぎる土壌で育てると、育たない、枯れる、ということでもって、ひまわりお化けを退治したのでしょうか」

「そういうこと。ひまわりは塩を吸収するなんて話もあるけど、さすがにあの量ではね。特殊能力だけど、それぞれ個人が使える力は限定的なんだ。事件に合わせて、それを指揮監督するのがシキ」

「そう」




 私たちは教室に着いた。

 荷物をまとめるシキと、もう立ち去りそうなシオと、どうやらシオを待っていたらしいナヅケしか、もう教室には残っていなかった。



 鞄を持ちながらガイドが言った。


「シルコは、俺の説明で納得した?」

「はい」

「ええと。疑問はないの?」

「特には」


 ガイドは怪訝な顔をした。


「うちみたいな学園、そうそうないと思うけど」

「はい。でも、そうなんですよね」

「そうなんだけど、感想はそれだけ?」

「世の中、私の知らないことの方が多いですから」


 私は謙虚にそう言った。

 ガイドは腕組みした。


「何だか、物分かりがよすぎて、案内しがいがあるような、ないような」


 私はハッとした。

 説明を受けて何の質問もしないなんて、まるで話に興味がないように誤解されてしまうかもしれない。

 せっかく親切に案内したのに、その甲斐がない、ガイドがそう思うのなら、それは違う。


 私は慌てて話した。


「ガイドが案内上手だから、いろいろ納得した。ありがとう。あれかな。やっぱりガイドは、昔から案内が上手なのかな?」


 絶望的である。

 たぶん、大事じゃないことを聞いている。

 分かっているけれど、生来、不器用な性質なのだ。


 ガイドはクスッと笑って言った。


「学園とか精霊とか特殊能力とかより、俺の案内に興味があるの?」

「た、たぶん」


 引けない。

 ここで引けるなら、ここまで不器用に生きてない。


 何となく、シキとシオとナヅケに見られている気がする。

 恥ずかしいから、余計に引けない。引けないから、同じことを繰り返して言ってしまったりして。


「ガイドに案内してもらって、いろんなこと安心した。案内上手は、もともと?」


 ガイドは結局、絞り出した私の質問には答えず、鞄を持って歩き出した。


「一緒に帰ろう」


 私は誘われてガイドと一緒に帰ることになった。

 転校初日、上出来だと思う。


 質問を無視されたのだけど、嫌な感じはしなかった。

 てんぱってたのを、スルーしてくれたような気がする。


 ガイドって、優しい人だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ