2 ガイドと私
ガイドと私は休み時間ごとに校舎を歩いた。
ガイドは実に案内上手だった。
「学級委員なの?」
「違うよ」
謎である。
隣の席になってしまったからなのか。
親切で助かっているけれど。
それにしても、ガイドって。
あまりにもふさわしい名前だった。
彼は無愛想な私であっても、丁寧に何でも教えてくれたので、本当にありがたかった。
ひとしきり校内を案内し終わった昼休みの終わりに、ガイドは言った。
「本当に知るべきなのは、施設じゃなくてシステムと人だ。ここには他にはないルールがあるし、いろいろな人間がいる」
確かに。
私が最も苦手とすることを言われているようだ。
早く友達を作って、暗黙の了解事項をつかめ、ということだろう。
私の隣の席でガイドは言った。
「シルコから見て教室の対角線。一番前の窓側に座っている女の子」
何の話だろう。
特定の注意すべき人物?
私は、ガイドの言う方向を見た。
友だちとおしゃべりをする赤毛の女の子がいた。
天然パーマらしき長めのショートカットの前髪をゴムで結んでいる。
取り立てて怖い感じはしない、普通の女の子に見えた。
ガイドは言った。
「あの子はナヅケ。彼女にあだ名を付けられると、すべてが劇的に変わるんだ」
特別な感情はこもらない説明だった。
それだけに、余計に意味不明だった。
ガイドは苦笑して言った。
「僕のガイドという名も、ナヅケが付けたあだ名だ」
びっくりした。
顔には残念ながら出てないと思うけど。
てか、本名の前にあだ名を名乗るって、ここでは普通なのか?
本名、聞いていいのかな。
聞かないものなのかな。
戸惑ううちに放課後になった。
そして、事件が起こった。
「大変だ! ワルサ団が中庭を襲撃してるぞ!」
何ですか、それ。