prologue ~漂う意識の中、私は夢を見る~
幼い頃からよく見る夢がある。
金髪で可愛らしい女の子と、人の言葉を話す不思議なウサギが出てくる夢。
その女の子は、いつも広い中庭で暇を持て余していた。何をすることもなく、ただ両足を投げ出して大きな木にもたれかかっている。
そのうち女の子が春の陽気に誘われ、ふわふわと漂うような感覚に身を委ねようとしたとき、毎回人の言葉を話す兎があらわれて何かを口走った後、彼女を穴の中に引きずり込むのだ。
突然のことに女の子は茫然としたまま、恐怖すらも麻痺させ落ち続けていく。
永遠にも思われる時間が流れた後、やがて暗闇の先に光が見えてきた。
その光の先に見えるものを見つけようと彼女が目を凝らすと―――目が覚める。
そんなことの繰り返し。この夢が暗示しているものは分からない。
幼い、それこそ幼稚園の頃こそかわいい女の子とうさぎが出てくる夢は嬉しいものだったが、小学校も高学年になるとだんだんこの夢に疑問を持ち始めた。高校生になった今なんか、もはや気味が悪い。
しかしいくら見たくないと願っても、彼女たちは定期的に夢の中へあらわれる。
まるで忘れないでほしいと乞うように。まるで、私の記憶に楔を打ち込むように。
そして今日も、漂う意識の中私は夢をみる。暗闇の先にある光を掴むために―――。