1.五月雨と一月遅れの同室者
※このお話は、「なんちゃって」とはいえ、BL要素を含まれています。
「男の子同士の話なんて、ちょっとでもイヤ!!」という方は、ブラウザバックして下さい。
※このお話は、無駄に『萌』た結果、変に勢いづいて書いた、高校生時代(約二十数年前)の原稿です。
※小説家になろう!は、初投稿です。色々手探りでツール使ってますので、不備はご容赦ください。
※これは、部屋の掃除してたら出てきて原稿の懐かしさと、もったいない精神で、テキストに打ち直した作品です。
※若いって凄いなぁと素直に感心しつつ、猛烈に恥ずかしい文体は、かなり勢いダケで書かれた代物です。
意味不明なノリの部分は、フィーリングで感じていただければ助かります(…)
※ちなみに、高校生時代に書かれた原文、ほぼそのままですので、色々おかしな所があると思います。
※誤字脱字も含めて、「これも仕様」と思って、海より広い心で読んで頂ければ、非常に助かります。。
※先生!!!凄い恥ずかしいです!!!!
※先生!!!一人称とか!全然今の文体と違くて、もだもだします!!!
※とりあえず、第一章投稿。
※全9章+エピローグで完結予定です。
出逢いは、春のものとも、梅雨のものともつかぬ、所謂五月雨しのつく五月。
寮の自室を開けたら、あいつが――居た。
「よろしく、市ヶ谷と言います。」
――これが、これから長い付き合いになる、市ヶ谷由樹の第一声だった。
◇◆◇
俺、渋谷真城は、今年春、私立鷺ノ宮高等学校…男子校だ…に、見事入学を果たしたばかりの、ピッカピカの新入生である。
家族構成は、両親と、一つ上の姉が一人。
この学校を選んだ理由は、地元だった事と、かなり自由な校風だと聞いたからだ。
それに……一緒に通う筈だった幼馴染みと見学に来た時に見た、校門から校舎へと伸びる桜並木の見事さに惚れ込んで~と言うのが、大きな理由だったりする。
そして何より、俺が気に入ったのは――この学校には『寮』がある、と言う事だった。
学校の創設者が、古き良き『寄宿学校』に憧れて、創設当初は『全寮制』だったらしい。
今でも、学生の大半が寮生であり、県外からの進学者が大多数という、全国でも知る人ぞ知る名門進学校なのだ。
かなりギリギリだった俺が合格出来たのは、一重に幼馴染みの悪友にマンツーマンで勉強を見てもらったお陰だ。
でなけりゃ、ちょっと…かなり…相当、この進学は怪しかった。
おまけに、隣の敷地には、ななななんと!戦後に創設された兄妹校とも言える、エスカレーター式の女子高が…それもつとに知られた『お嬢様校』なのだ…建っているという、傍から見れば、中々美味しい立地条件!だったりするのだ――!
はぁ…そんな訳で。
色々期待に胸躍らせて入学した学校だが、一緒に受験した幼馴染みは隣にいない。
受験に失敗した――という訳ではない。
合格通知とほぼ時を同じく舞い込んだ、父親の海外赴任が、今ここにヤツが居ない理由だった。
(父一人、子一人だからって、小父さん、まさか一年休学させてまで、一緒に連れてく!絶対、良い経験になる!とか主張するとは…)
もちろん、幼馴染みの悪友は『残る』と主張した。
しかし、悲しいかな…俺達は親の脛を齧って学校に通う『未成年』だ。
例え、悪友が『学費を盾にするなら、奨学制度を利用しても残る!』と言い張っても、学校の理事の一人が小父さんの知人だとかで、赴任先の国にある海外留学の提携校に、鷺ノ宮からの留学生って事にしたからヨロシクネ!とか、爽やかに腹黒い笑顔で言われてしまっては、万事休す。
流石に、小父さんも小父さんの知り合いの理事も、どんだけ?と呆れて物も言えなかった。
いや、首席入学者の休学を、別の良い話題に変換した、学校理事の手腕が見事と言うべきなのだろう。
これは皮肉な笑みを浮かべて、そう毒舌を吐いた幼馴染みの言だ。
俺はそこまで頭は回らない。
無念の表情を隠しもしないで、傍に居ない間の事を心配する幼馴染みは、成田空港まで見送りに行った俺に、『明るい高校生活の為に!よい子の学習計画書』などというふざけたタイトルのノートをそっと差し出してきた。
中身は一学年時の教科書と参考書から、俺用にカスタマイズして書き上げられた、『サルでもわかる式』学習計画だった…その鬼気迫る出来ばえは、見た瞬間、幼馴染みの無駄な『本気』を垣間見た気がして気が遠く成りかけた。
――これから海外にいきなり『留学』扱いになる奴が、他にやる事あるだろう!?
そう思った俺は、何か間違っているだろうか?
生まれてすぐに出逢ってから、これまで数日単位ですら離れた事もない幼馴染みとの別れの寂しさやら、何やら、色々吹っ飛ぶような戦慄を覚えた。
物凄い後ろ髪を引かれるような風情で、出国ゲートを潜っていった幼馴染みを見送って迎えた入学式。
ヤツの心配を一笑にふしてやろう!と一念発起で、俺は勉強を頑張った。
受験の為に底上げされた学力+おさ馴染みの置き土産を武器に、友達作りも頑張って、どうにかこうにか入学後最初の学力テストを無難な成績で乗り切ると、気づけば一ヶ月が過ぎていた。
そんな五月のGWも明けて、次は球技大会か?とか思っていたある日。
2人部屋を1人で悠々と使っていた日々は終わりを迎え、雨と共にやって来た一ヶ月遅れで、同室者が姿を現した。
俺も、同室者は受験直後から入院しているという話だけを聞いていた為、姿を現した同室者を見た時は、「ああ、退院したのか」位の事しか思っていなかった。
実を言えば、多分、入寮当日に聞いた…かもしれないが、同室者について知っている事は、苗字だけという有様だった。
その情報源も、入口横のプレートが『市ヶ谷』になっていたから~という――関心がないにも程があるだろう?という状況だった。
だから、当人と対面して、挨拶を交わした後、とりあえず「退院おめでとう」と当たり障りない話をふったのだ。
すると、一月遅れの同室者は、入院の理由を少々照れながらのたまった。
「入学式の前日に急性盲腸で入院して、ついでに検査したら胃潰瘍も見つかって…結局、完治する迄、一ヶ月以上入院する羽目になっちゃってさ~」
あはははは~と、己の身に起った、玉突き事故のような不運を、能天気な笑顔で笑い飛ばす同室者に、俺は「おいおい、ソレ全然笑いごっちゃね―だろう?!」と心の突っ込みを入れたが、口に出しては曖昧な日本人らしく「災難だったな~、あはははは」と一緒に笑っておいた。
とまぁ、前振りが長くなった。
これが――彼…『市ヶ谷由樹』と、俺…『渋谷真城』の、これから起る波乱含みな未来を案じするような出逢いとはじまりだった。
◇◆◇
心配された勉強の遅れや、既に粗方出来上がっていた友達グループへの参入など、特に何の抵抗も受けず、本人の努力と持ち前の柔らかな人柄で、市ヶ谷は直ぐに暮らすにも、学校にも、馴染んでいった。
これには、その容姿も、大いに貢献したと、俺は思っている。
市ヶ谷の容姿は、その人柄同様、パッと見には少女の様に優しいものだった。
いや、ハッキリ言おう。
『可愛い』と言う形容詞が一番ピッタリくる。
華奢な体つきと、色白なのも手伝って、一部上級生に妙に受けている…らしい。
だが、本人に『可愛い』などと言ったが最後、烈火の如く居借り出して、手がつけられなくなるのでお勧めしない。
なんにしろ、市ヶ谷は物凄く自分の容姿の事を気にしているのだ。
常日頃『男らしくなりたい』と力説して回っている程で、その為に日々の努力を怠らない。
可愛い見た目に反して、実は合気道の有段者であり、師範も目前というから驚きだ。
――いや、話をそれとなく聞く限り、昔から良く襲われたり攫われそうになったりした、幼い市ヶ谷少年を、心配した親御さん達が、必死に頑張った結果かもしれない~とは、予想しつつも、誰も言ってない。うん。
進学先に『男子校』を選んだのも、「男らしく~云々」が理由だと聞けば、もう『そうか。頑張れ』としか言えない。うん。
まぁ、『可愛らしい』という形容詞は、本来『男』に…それも、高校男子に使われるべき類のものじゃないと思う。
――思う、が。
あえてそれでも、『可愛い』と評されてしまうのが、市ヶ谷の凄い(?)所だった。
対する俺はと言えば――市ヶ谷に言わせると、『渋くて、カッコイイお兄さん』lなのだそうだ。
高校に上がるのを機会に、垂らしていた前髪を掻き揚げたのも、一役買っているらしい。
中学時代にニョキニョキ伸びた身長は、今や一八〇cmを越え、更に現在進行形で毎晩骨をベキバキ言わせながら伸び続けている。
その上、骨太で、やたらガタイが良い。
別に、運動をやっていた訳でもないのだが…気がつけば、こうなっていた。
父親もこんなもんだから、きっと遺伝なのだろう。
そんな俺を、市ヶ谷は事ある毎に羨ましがり、悔しがった。
――いや、このガタイの上に、あの少女のような顔が乗ってたら、シュール以外の何物でもないだろう?
と、言えば、関節決められそうなので、もちろん言わない。……なにせ、合気道だけでなく、柔道の絞め技も、市ヶ谷は得意なのだ。
てなわけで。
始まりをものともせず、俺と市ヶ谷は、超上手くやっていた。
遅れを取り戻そうと焦る様子もなく、マイペースにホケホケなんでも笑いながら、いつの間にか何とかしてしまっている、市ヶ谷と居ると、俺は幼馴染みの不在で少し物足りなかった毎日が、酷く新鮮で、慌ただしく、面白く思えるようになっていた。
世間一般で言う『親友』って感じに、驚くほど短期間で、関係が深まっていったのだった。
その頃はまだ、『気が合う』『波長が合う』から、こんなに親しくなれたし、近しく思えるのだ…と、そう思っていた俺だったが―――。
次回投稿は、6/21 00:00 am を予定。
※3話までは、毎日投稿?予定