山戸川高校文化祭準備
「お帰りなさいませご主人様」
俺の名前は山森健一。山森財閥の御曹司だ。今日は、山戸川高校文化祭こと略して山戸川祭。俺のクラスの催しものはメイド喫茶だ。でも、ただのメイド喫茶ではない。その名も、男女逆転メイド喫茶だ。何故、こんなことになったのかと言うと、1学期のHRの時間に遡る。
「さて、皆2学期最初に行われる山戸川祭の催しものは何がいいですか?」
そう言って教卓の所で話しをしてるのは、我がクラス2年3組学級委員薺栞。生徒会の薺楓の姉だ。クラス順位も、学年順位も全学年順位もそこそこだ。おまけに、周りからの信頼も厚く、スタイルも良い。
「それは、勿論決まってるだろ。女子によるキャバクラ風の……」
そんな事を言いかけて女子たちから総スカンを喰らっているのは、綾田義希。このクラスの、4馬鹿の1人に何故か俺も巻き込まれる。女子たちから総スカンを喰らって早くも撃沈した。
「メイド喫茶なんかどうかな。」
ふとそんな事を言ったのは、我がクラスの美人グループの1人、白岩と仲良くしてくれている篠井汐莉。全学年が認める程の美人だ。が、俺が思うに白岩の方が美人だと思う。学級委員の薺栞も、少し困っていて、
「う~ん。まぁ、無くは無いけど、流石に学校で風紀を乱す様な事は出来るかどうか分からないんだけど、生徒会会長の山森君何か良い方法はある。」
「う~ん。いきなりそんな事を言われても、生徒会でもまだ、ほとんどの事が決まっていないから、あんまり言えないけど、まぁ基本的にはクラスの全員が一丸となって出来るなら、問題は無いんだけど……女子だけが、やるってなると難しいかな。」
「やっぱり、そこが問題?」
「うん。大まかに言えば、そんな所かな。」
俺を含めて、クラスの全員が考えている。すると白岩が、
「だったら、いっその事男子も出来る様にすれば良いんだよね。」
「うん。基本的には。」
「じゃあ、男女逆転メイド喫茶何てどうかな?」
「えっと、それって男子がメイド服を着て女子が執事服を着るということかな?」
「うん。そうだよ。」
そう言うと、クラスの皆は数秒間固まっていた。そんな硬直を解くように、学級委員の薺栞が、
「白岩さん、良いアイディアだよ。皆も、それで良いかな?」
「うん。いいんじゃない。なんか、面白そうだし。それに、山森君のメイド服姿見てみたいし。」
「あっ、確かにそれはそうね。」
クラスの女子は、何故か俺がメイド服を着る事を前提に話しをしている。
「ちょっと待て。その前に生徒会に企画書を出しても通さないよ。俺が絶対に!」
「いいじゃない。面白そうだしさ。」
「いや、そうは言うけどね白岩。そもそも、俺がメイド服を着るというのは色々とまずいんですが…」
「別にいいんじゃない。皆が健一のメイド服姿を見たいって言ってるんだから、やってみたら?」
白岩は、俺ににっこりと微笑んでいるけど、
「いや…駄目だ。たとえ、何があっても俺たちはメイド服は着ないぞ!」
俺が、そう言うと周りの男子は「良いぞ!健一言ってやれ!彼女だからって気を抜くな!」と、言って女子は「白岩さん!ここで退いたら駄目だよ!彼氏だからって甘くしたら駄目だよ!」と、そう俺と白岩を煽っている。
「ねぇ、健一。やってみて損はないと思うよ。」
白岩はそう言って、ゆっくりと俺に近づきそっと俺の背中に手を回して来て、
「ねぇ、良いでしょう♪健一のメイド服姿見てみたいなぁ。」
「あっ、いやそれは………」
「ねぇ、良いでしょう♪け ・ん・い・ち。」
俺が返答に戸惑っていると「健一、何やってんだ!ここで退いたら男じゃないぞ!」と男子に言われ「白岩さん!そのまま押さえるのよ!」と女子が言っている。俺はどうすればいい?ここで、白岩を突き放すか、それとも白岩を抱き締めて肯定するか俺はどうすれば。俺は白岩の背中にそっと手を回して、
「はぁ、俺の負けだよ。分かった、俺たち男子はメ
イド服を着よう。それでいいかな?」
「私はそれで良いけど。栞ちゃんも皆もそれで良いかな。」
「勿論よ。山森君のメイド服姿も見たいし。」
学級委員の薺栞がそう言うと周りの女子は「やった。これで、山森君のメイド服姿が見れるんだ。」と口々に言っている。
「てか、白岩お前最初からこうするつもりだったろ。」
「あっ、ばれた?」
「いや…いつもと雰囲気が違ったから……って初めから俺をはめる気だったな。」
「えへへ、健一が隙だらけなんだもん♪」
「白岩………」
その後色々と決めた後に生徒会へ提出され、俺が受理して我が2年3組の文化祭の催し物は“男女逆転メイド喫茶”となった。その後は、当日何をするかを話し合い決めた。メイド服や執事服はクラスの人数分用意するのは、俺の家で用意する事になった。夏休みは、2週間半学校で準備をして9月に入ると山戸川高校の部活動は全て休部となり、山戸川祭の準備期間になる。山戸川祭は9月末に行われる。そのため3年生のクラスは劇の準備、2年生はクラスの催し物の準備、1年生はクラス発表の準備を大急ぎで取り掛かる。因みに、生徒会は各クラスで足りない物の補充や状況、当日の動きの確認をしている。
「矢鳥さん、4組で足りない物はある?」
「足りない物はないから大丈夫。」
「分かった。矢鳥ちゃん、2組で足りない物は?」
「えっと、当日必要な暗幕とドライアイスが足りないんだけど、用意出来る?」
「分かった。えっと、暗幕とドライアイスだね。大丈夫、当日に用意出来る。薺、1年生の方で足りない物は?」
「はい。3組から、照明等の器具が足りないのと、5組から、当日必要な衣装の準備が遅れてて、当日までには間に合わないと、それから私のクラスの1組で、ポスターカラーが足りないです。」す
「1組のポスターカラーは、生徒会室にあるから後で持っていって良いよ。それで3組の方の照明器具は、体育館裏の倉庫にあったから放課後来てくれる?それから、5組の衣装の準備は、家の使用人に話して手伝わせる。それでいい?」
「はい。分かりました。」
「白岩、1組と5組で足りない物は?」
「足りない物はないって。」
「了解。3年生の方で足りない物は?」
「えっと、1組と2組と5組は足りない物はないそうです。それで、3組と4組で机や椅子の許可が欲しいそうです。」
「了解。3組と4組に許可すると伝えてきてくれ鳥桧。」
「分かりました。今からですか?」
「勿論だ。」
「では、いってきます。」
「これで足りない物の補充は終わりか?」
「うん。これで全部終わり。」
白岩がそう言い、健一は一息つく。他のメンバーも、一息をついて伸びをしている。白岩が、紅茶を淹れてメンバーに配っている。
「おっ、悪いな。」
「ん、健一の分は無いよ。」
「えっ、……白岩それ本当?」
「うん。」
「嘘だよね…白岩。」
「…………」
「白岩…………」
「ぷっくくくく。あははははは。冗談だよ、ちゃんとあるよ。」
「ふぅ、良かった。」
「はい。どうぞ。」
「サンキュー。」
俺は、そう言って白岩の淹れた紅茶を飲む。他のめメンバーも同様に配られた紅茶を飲んでいると3年3組と4組に許可を出しにいった、鳥桧勝が戻ってきた。
「ただいま、戻りましたって皆さん酷いですよ。俺が、いない間に紅茶を飲んで。」
「ふふ。怒らなくてもちゃんとあるから。はい、どうぞ。」
「あ、どうも。」
「ふふふ。」
俺は、口には出さなかったが、うわ、出たよ。白岩の悩殺笑顔。俺もあの笑顔に心を射止められたんだよな。とは、流石に言えない。
「さてと、当日の有志はどうなった?」
「はい。後は、オーディションをして20組決めるだけです。」
「分かった。有志のオーディションは、矢鳥3姉弟が担当だったよな。」
「はい。」
「じゃあ、明日から来週の木曜日までに20組決めといて。」
「分かった。」
「今日の仕事はこれで終わり。次に集まるのは、山戸川祭1週間前の日曜日に俺の家で。じゃあ、今日は解散。」
健一がそう言うと皆は荷物を持って生徒会室から、足早に出ていった。
「さてと、俺たちも帰るか。」
「うん。」
学校からの帰り道で健一と白岩は
「明日からもっと大変だよね。」
「ああ。そうだな。明日からは、クラスの準備だからな。」
「本当だよね。こんなに、忙しいとさ…」
白岩はそう言ってチラチラと健一を見ている。健一はその視線に気づいて、
「どうした?なんか、俺の顔に付いてるのか?」
「そ、そうじゃなくて、そ、その、あの、えっと、あのね、こ、こんなに忙しいと、健一とその、デ、デートも出来ないし。」
「ははは、俺も同じさ。白岩とデートしたいよ。」
「け、健一。」
白岩は、頬を赤く染めて健一にそっと近付く。
翌日からは、クラスの準備で忙しくなり生徒会としての活動は有志を残して、全ての準備が終わった。その後生徒会メンバー全員が集まる日曜日になる。AM10:30を回った頃から続々と生徒会メンバーが集まってくる。白岩以外の全員が集まった。
「あれ?白岩は?」
「朝来たときには見てませんけど。」
「おかしいなぁ……ちょっとごめん。」
そう言って健一は携帯を取り出して電話をする。勿論白岩の携帯に。健一が白岩に電話をして5分が経った。すると、呼び出し音が止まり
「もしもし、白岩今何処に……」
『助けて。……一。』
『何してやがる!この女!』
『痛っ。』
「白岩、どうした!」
『もしもし。』
「お前は、誰だ?」
『んなことどうでもいいだろ……早くしないと、この女がどうなっても知らないぜ。1人で来いよ。』
『駄目、健一来たら駄目。』
『うるせぇんだよ!』
『痛っ。うううう。』
「何処にいるんだ!」
『そんなの自分で見つけな。それと、警察に通報したら、この女を殺す。』
「待ってろ!もし、それ以上白岩を傷つけたら許さねぇ。」
『何、警察に通報しなけりゃ。傷つけねぇよ。』
そこで、電話は途切れる。
「おい。どうしたんだ?」
「悪い。皆先に作業しててくれ。そこの机に今日の活動内容の紙が置いてあるから。」
「山森君?」
健一は、クローゼットから段ボール箱に入っていたコートを取り出す。そのコートは、使っていないかの様な新品同様だった。健一は、そのコートを着る訳ではなく持って、自室から出て
「寺坂いるか?」
健一がそう言うとリビングから1人の男がやってくる。
「健一様。どうされました?」
「寺坂、直ぐに車を表に回せ。」
「分かりました。ただいま、用意します。」
そう言って寺坂は、ガレージに行きリムジンを玄関の近くに運転してくる。健一は、後部座席に乗り
「健一様。どちらまで?」
「川越駅まで頼む。」
「かしこまりました。」
川越駅まで信号に捕まることなく着いた。
「ここで、構わない。それと、俺が降りたら直ぐに家まで戻ってくれ。」
「しかし、健一様。」
「頼む。こっちも、用が終わったら直ぐに戻る。」
「分かりました。」
寺坂が、そう言った後健一は後部座席から降りると、健一の言った通り寺坂は家まで戻る。健一は、裏路地に行く。そこには、廃ビルが建っていた。健一は、廃ビルの扉を開くと突如明かりが点く。
「待っていたぜ。」
「白岩は何処だ?」
「そう慌てるな。約束通り1人で来たな。」
「ああ。」
「そうか。おい、連れてこい。」
「はい。」
男の後にいた数名の内の1人が横の部屋に入って、女の子を連れてくる。
「連れてきました。」
「こっちに。」
そう言って男は女の子を自分の側に寄せる。
「ほれ、この女は返してやる。」
そう言って男は、女の子を健一の方に突き飛ばす。健一は、女の子に近付いて
「白岩大丈夫か。」
「健一……来てくれたんだ…」
「白岩……」
白岩の服装は、上着を下から胸の下まで破かれていた。そして、スカートを下着ギリギリまで破かれていた。健一は持って来ていた。コートを白岩に着せる。
「ありがと…」
健一は、白岩をそっと抱き締めて
「許さねぇ。お前たちは絶対に許さない。」
健一は、そう言った後白岩を扉の近くに座らせて、男たちに向き直り
「お前たちは、俺が倒す。」
そう言って健一は、床を蹴り一番高いところに居る男に向かって拳を振り上げると、横から1人の男が健一を蹴る。避けられなかったが、左腕で防御したけど、床に叩き付けられた。
「ぐっ。」
「おいおい。いきなり大将は倒せないだろ。大将を倒す前に、俺たちから相手して貰おうか。」
「でゃぁぁぁぁ」
健一は、拳を振り上げて右の男を殴るが、避けられたが、拳を開き襟を掴むとそのまま反対側に放り投げて、健一は自分も反対側の男たちに向かい蹴ると、放り投げた男とぶつかり3人そして、正面の男を同時にぶっ飛ばして、そのまま高いところに居る男に拳を振り上げる。男は、避けるのではなく拳を健一に振り上げる。健一は、反応が遅れて防御し損ねて、床に強く叩き付けられた。
「ぐっ。」
男は、高いところから降りて健一の側に近寄ると、健一を蹴る。健一は、ギリギリのところで左腕で防御するが、威力に耐えられず後方に吹っ飛ぶ。
「ぐぁぁぁぁぁぁ。」
健一は、左腕を掴んで踞っている。
「どうした?ヒビでも入ったかな。」
「だから何だよ。ヒビが入ったから何だ!左腕が使えなくても、まだ右腕が左足が右足が残ってる。まだ戦える。うぉぉぉぉ。」
健一は左腕の痛みを押し殺して右腕で男を殴り、左足で下から蹴り上げて、右足で男にかかと落としをして、右腕で男を後方まで吹っ飛ばす。
「はぁ、はぁ、はぁ。やったのか?」
「健一!大丈夫?」
「はぁ、はぁ。痛っ。ヒビでも入ったかな。」
「直ぐに病院に行こう。」
「分かった。ちょっと待ってくれ。警察に通報しとこう。」
その後、警察が来て男たちは誘拐ということで逮捕された。その後、近くの病院まで警察の人に送ってもらった。診察の結果、ヒビは入っていないが3日間は安静ということになった。その後、俺と白岩は急いで家まで戻って、最後の作業をした。そして、1週間後の山戸川祭前日クラスで明日,明後日の山戸川祭に向けて気合を入れた。
山戸川祭1日目は、有志ステージの後クラス発表があり2年3組の男女逆転メイド喫茶は大反響だった。特に俺の女装は人気だった。
「ご注文はお決まりですか、ご主人様。」
「えっと、このラブリーオムライスを1つ」
「はい。かしこまりました。」
オムライスを作り持っていく。
「お待たせしました。ラブリーオムライスです。」
山戸川祭2日目は3年生の劇の後有志ステージがあり、その後クラス発表があった。例によって2年3組の男女逆転メイド喫茶は大反響だった。俺は、2日目が終わった後、後夜祭に白岩と一緒に参加した。途中何故か司会に名指しされて周りの生徒に煽られて強制的に参加させられた種目というのが、早飲み競争しかも、決勝戦にだ。あまりにも、炭酸が強すぎる為に発売中止になったという幻の炭酸飲料アウトブレイク。俺は、心の中で白岩に謝っておいた。そして、俺はアウトブレイクを飲む。すると、確かに炭酸が強すぎるが、飲めないほどではない。俺はアウトブレイクを飲み干した。周りの生徒は苦しんでいるのに、俺は全く苦しまなかった。優勝賞品が、アウトブレイク1年分で、俺は白岩のところに戻り一本を渡した。白岩は普通に飲んでいる。俺は思った。もしかして、女の子には一番良い飲み物なのかと。俺は家に帰った後結香にアウトブレイクを渡した。すると、結香は喜んで受け取った。
こうして、山戸川高校文化祭通称山戸川祭は終わった。色々と、準備期間中は大変だったけど、良い思い出になった。その後、白岩を家に送っていったわけだが、白岩の家の鍵が掛かっていてその日は俺の家に泊まることになって、流石に部屋の準備は出来なかったので俺の部屋に泊まることになった。
その後の事は言わないほうがいいだろう。
来年は劇の発表になるのだがそれは、話さないでおこう。今年度末からは生徒会に新制度が加わるが、言わないでおこう。
道はどこまでも続いて行く。明日が有る限り。