捨てる神あれば
失ってから気づく大切さと、後悔に苛まれる男の独白です。よろしければお読みになってあげてくださいませ。
彰人は絶望していた。
6畳ひと間のアパートの部屋にはもう、環奈の影はなかった。
彰人は絶望していた。
環奈は小柄な女性だった。学校では身長順の整列で、常に一番前だったらしい。
彰人は絶望していた。
彼女は料理が上手かった。中でも牛すじの煮込みは、ピカイチだった。それが食卓に出されるたびに、彰人は満腹になるまで食べた。歯を磨くのが惜しいくらいに美味かった。
環奈は泣いていた。別れの際に。
━━すべてが俺の所為だ……。彰人は思った。その後、学校でも彼女の姿を見なくなった。真面目な環奈のことだ。講義の出席率は良かった筈だ。出席日数にはまだ余裕があるはずだ。。
この部屋に彼女は居ない。言い訳はしない。すべて俺の所為だ━━。
責任転嫁のしようもない。
頭を抱えた俺には、もはや居場所がなかった。騙され欺かれ、他の女の部屋に転がり込んだ。
━━それからだ。彼女はもういない。
彰人は絶望しかけていた。
この世には捨てる神しかいないのではないか?
彰人は絶望していた。
環奈はいつも遠慮がちな無垢な感じの女の子だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
一時の迷いや過ちによって本当に大切なものを失い、身勝手な後悔と孤独に打ちひしがれる男の姿を描きました。
誰かの選択がもたらす悲哀や、失って初めて気づく存在の重みを感じていただけたなら幸いです。
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