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青の亡霊ー真実を暴かない探偵は、正しさを後悔している―  作者: 天水 こうら
第二章 青の亡霊

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5/8

青の亡霊 後半 真実を暴いてしまった日

とりあえず今月のノルマの5話更新が間に合いました。

危ない。

ある日、僕は夏蓮がイジメに遭っていると聞いた。

夏蓮に告白をした男がイジメている女の子の好きな子だったとかそんな中学生らしい理由だったのを覚えている。


僕は彼女を救いたくてすぐに証拠を集めた。

相手を完膚なきまでに叩きのめしてやろうと思った。


僕はあの時、夏蓮に恋をしていたんだと思う。


友人が、好きな人が、イジメられていると聞いて僕の苛立ちは限界だったのだと思う。


だから証拠が集まったら直ぐに教師に密告をしたし、友人の間で噂も広めた。


その結末なんて考えずに。



放課後の部室は、いつもより広く感じた。

机の数も、椅子の位置も変わっていないのに、

そこにあるはずの熱だけが抜け落ちている。


「……奏」


先に来ていた夏蓮が、こちらを見て言った。

いつもみたいに笑わない。

ただ、ちゃんと目を合わせてくる。


「例の件、先生に話したんだって?」


声は落ち着いていた。

責める響きも、怒りもない。

だからこそ、胸が少しだけざわついた。


「うん。証拠も全部出した。

 これで、もう――」


「終わる?」


夏蓮はそう言って、小さく首を傾げた。


「……終わるといいね」


その返事は、あまりにも軽かった。


「夏蓮?」


呼ぶと、彼女は視線を逸らす。

窓の外、グラウンドの方を見ていた。

運動部の声が、遠くで弾んでいる。


「ねえ奏。

 正しさってさ、ほんとに大事?」


「どういう意味?」


「正しさで動く事は、傲慢な事だと思うの。

正しさなんて個人の尺度で、正しさに従うことは、

他人に自分の尺度を強いるってことで、人の事を思っているはずが人を縛る事になっていると思うんだ。」


夏蓮は机の端を指でなぞる。

爪が当たって、かすかな音がした。


「だからさ、」


その指が、途中で止まる。


「苦しいって言うのも、

 怖いって言うのも、

 ……わがままになる」


胸の奥が、嫌な音を立てた。


「夏蓮、それは――」


「奏は悪くないよ」


即座に、はっきりと。

逃げ道を塞ぐみたいな速さで。


「奏は、ちゃんと考えて、

 ちゃんと正しいことをした」


だからね、と彼女は続ける。


「これ以上、気にしなくていい」


その言葉が、

なぜか“さよなら”に聞こえた。


「……最近、笑わなくなったって言われる?」


「言われるよ」


夏蓮は笑った。

でもそれは、知っている笑顔じゃなかった。


「でもね、みんな優しいよ。

 急に、すごく」


優しさ。

その言葉が、重く沈んだ。


「だから大丈夫。

 ちゃんと、終わったんだよ」


本当にそうなら、

どうしてその声は、そんなに静かなんだ。


「今日は先に帰るね」


鞄を持って、夏蓮は立ち上がる。


「また明日」


その「また明日」が、

約束じゃないことを、

僕だけが気づいていなかった。


引き戸が閉まる音がして、

部室には、僕一人が残った。


ノートを開いたまま、

ペンを持ったまま。


その日、

初めて思った。


――もしかして、

僕はもう、答えを出してはいけなかったんじゃないか。


この時、夏蓮はイジメをした子とその子の親から罵倒を受けたと聞いた。

夏蓮のせいで推薦がなくなったらとか、そんな事を散々言われたらしい。


そしてイジメをした子は僕の流した噂のせいで逆にイジメを受けるようになって、自殺未遂をしたと耳にした。


この話を聞いて僕はざまあみろと思った、起きた事の深刻さに気付かず。


この一件を受けて、夏蓮は限界だったのだと思う。


そして、僕のもとに一通の手紙が届いた。




奏へ。


これを読んでいるってことは、

たぶん私は、ちゃんと話せなかったんだと思う。


先に言っておくね。

あなたは、何も間違ってない。


あの日、あなたがしたことは正しかった。

証拠を集めて、真実を見つけて、

誰かを守ろうとした。


私はそれを、隣で見てた。

だから分かる。


それでもね、

正しさって、時々、人の心より強すぎる。


私は弱かった。

確かに私は被害者だった。

でも私のせいで自殺未遂をしてしまったんじゃないかとも思ってしまう。


でも、それをあなたのせいにはしたくなかった。


あなたが真実を選ばなかったら、

きっと、もっとたくさんの人が傷ついてた。

だから私は、あなたを誇りに思ってる。


……それでも、

少しだけ、怖かった。


あなたの目が、

真実だけを見てしまう人の目に変わっていくのが。


だから、お願い。


これからは、

全部を解かなくていい。

全部を暴かなくていい。


守れない真実も、

知らないままでいい答えも、

きっとある。


誰も悪くないから。

恨まないで。

あなたは、優しい人。


私の分まで、

生きて。


真実よりも、

誰かの心を選べる人でいて。


さようなら。


夏蓮より 




もう今ではこの手紙の中でしか彼女とは会えない。



この手紙を読んだ瞬間、僕の青が死んだ。



そして今、僕の隣にはーー

あの手紙と同じことを言う少女がいる。





シャドバの新弾、今の所ウィッチが一番楽しいです。

カルギデンスラで上振れた時の気持ちよさがパナっす。

あとライオちゃんが好きなんでピン刺ししてます。



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