†いつもこの場所で-愛しさとともに-
ーーーこれは、とある図書館の先代司書長のお話。
神無月の巫女EDパロ【レオン×ルクレーシャ】
https://www.youtube.com/watch?v=C3MeLa1pg-s
作品に関する感想を聞いて今後の参考にしたいと黒猫氏が言っていますので、作品に関する意見(この作品以外も含む)も随時募集しています。
良くも悪くも何か感想があればその作品のコメント欄に宜しくお願いします<m(__)m>
在りし日の記憶
†いつもこの場所で-愛しさとともに-
「これでよしっと……」
ついに脱稿を迎えた原稿を見て私は満足そうに頷くと
表紙を愛おしそうに指でなぞった。それを見ていたルーディが
「お疲れ様、お父さん。今回はどんな話なの?」
そう云って笑いながら飲み物を差し出してくれた
私はそれを受け取りながら微笑みを返す。これが私の日常
(やっとこの思い出を綴れるような日が来たよ)
私はそっと心の中で最愛の人に語りかける
彼女は今ではもうこの世にいないけれど
ルーディは私に彼女が残してくれた大事な宝物の一つだ
(今の私が生まれる切っ掛けとなったもの)
様々な人達との出会いと別れ。そして生まれた沢山の思い出
この本もその一つである。これはある人物の幸福な物語
私の初恋であり、初めて私を愛してくれた人との思い出
「秘密。別にこの本は出版する訳じゃないんだ。」
「そうなの?」
ある記憶を思い出して苦笑に近い笑みを浮かべた私を
ルーディは不思議そうな顔をして見ている。仕方が無いと思う
(これは私の記憶であり、後輩達へのささやかな贈り物だからね)
楽しい思い出も苦しい思い出も何もかも全て曝け出して今に至る
ありのままの自分を綴った私だけの物語。私自身の伝記そのもの
「自分の人生で得た知識が誰かの為に役に立つと云うのなら
私にとってこれほど嬉しいことはないんだ」
だからこそ私が引退して新しく史書長となった後輩の一織の為に
何か出来ないかと悩んで得た結果がこれだったのである
(さて、彼らはこれを喜んでくれるだろうか?)
全ての命あるものの記憶を本として管理する場所。禁域の書室
その力を推しても知ることが出来ないものが幾つか存在する
それは八侯王の記憶と史書長の記憶。その為、私は自分の意思で
自身の記憶を彼らに残してあげようと本に綴ったのである
(あの日あの場所で出会った人々のように)
例えどんなに望んでも過去には戻れない。今を生きるしかない
もしかしたら自分自身でも知らぬ間にこう思ったのかも知れない
私の過去にどんなことがあったのか。彼らに知って欲しいと
そして出来れば彼らには私のような思いはしないようにと……
「なるほど……なら、私も何時か誰かの為に
私の思い出を本にした方が良いのかな?」
「さぁ?それはルーディの気持ち次第じゃないだろうか?」
それを聞いたルーディが真面目な顔をして思案し始めたのに対し
私は少し茶化すような調子でそう云うと外を眺めた。もう大分、
日が傾き始めている。空は朱に染まり夕焼けが鮮やかに映える
「そろそろ夕飯の時間だ。……とその前に、
少し外に出ても良いだろうか?行きたい場所があるんだ」
「良いよ。いってらっしゃい。父さん」
快くルーディが返事をしてくれて私は微かに笑った。ありがとう
今日は帰ったら君の大好物を作ろう。そう思いながら私は外へ出た
「風が涼しくて気持ちいいな」
目を細め夕日に手を透かして空を見上げた
吹きぬける初夏の風は私の頬を心地よく撫で通り抜けてゆく
家を出て花屋へ向かった後、私はとある小高い丘へ足を延ばした
「こんばんわ。レオン」
「ルクレーシャ。君もここへ来ていたんだね」
先に来ていた彼女に声を掛けられて挨拶を返す私
今日は何時も一緒に居る猫魔王・ミラの姿は見えない
(それもそうかも知れない)
今となってはこの場所を知る者は私とルクレーシャ以外いないからだ
「私達ここで……眠っているのね」
「そうだな。私達はここで幸せを望み夢見ているんだ」
彼女がそう呟くと私も同じように二人の墓を見て頷いた
前世の記憶を以って生まれた私。前世の記憶を取り戻した彼女
(互いに求め合い運命に抗おうとして失った命)
彼女の目の前にある墓は前世の私達そのもの
愛を望み、幸せを探して彷徨った殉教者たちの墓
世間に忌み嫌われ蔑まれた者で寄り集まって暮らした生活
(決して不幸だけではなかった日々)
短気で怒りっぽいけれど仲間想いだった人狼
理屈ぽくって嫌味な面はあるが根は義理堅い竜人
殺戮兵器として地上に生み出された無機質な自分
そして幽玄の力の所為で孤独だった心優しい魔女
(周囲には決して認めて貰えなかったけれど)
それでもひっそりと肩を寄せ合って生きていた私達は
誰にも迷惑を掛けることなく日々を過ごしていった
時には喧嘩もしたけれど。今となってはそれも良い思い出だ
「ここで眠る私達の思い出を本にしたんだ」
「そうなの?だとしたら無事に出版できるのかしら?」
「出版はしないよ。解る人にだけ解れば良いのだから」
そう云って私はそっと目を伏せた。目に焼きついた光景
脳裏に過ぎるのはあの日、最後に見た景色。一瞬の煌きの中
互いに手を伸ばし合い二人が交わした最後の約束
(『もしも生まれ変われるのならば……』)
そこまで思い出すと私は緩く首を横に振った。不毛なことだ
ここへは感傷に浸りに来たのではない。幸福の確認でもない
「それじゃあ、私はもう帰るよ。ルーディを家で待たせているからね
それでは御機嫌よう。また会えると良いね。ルクレーシャ」
「さようなら、レオン。また会える日まで」
墓前に花を置き、少し祈ってから彼女に別れを告げた
ある程度歩いた後、そのまま墓前に佇む彼女に私は振り向くと
「私はあの日々のことを後悔なんてしていない
あの思い出があったからこそ今の私があると思っているんだ」
「私もよ。今も昔も私達、とても幸せだと思うの」
そう云って微笑む彼女に頷くことで肯定する私
最後は悲劇に終わってしまった過去。それですら愛おしいと思えるから
「今も昔もこれからも……ずっと愛しているよ。ルクレーシャ」
二人だけが知る沢山の思い出をこれからも大切に持ち続けよう
何時の日かこの身が朽ちて消え去る日がこようとも。それまでは
この胸に眠る素晴らしい出会いと別れの物語を描き続けよう
何時かきっと誰かにあの素敵な人々のことを知って貰う為に
そして、あの二人の幸せを信じ祈ってくれる理解者が現れるように
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