第3話 ロリな大人を救出完了
「『暴発・爆風』!」
萌葉ちゃんの魔法は、萌葉ちゃんを中心にして突発的に強風を放つ魔法だったようだ。
「くぅ。強風だねぇ」
私ごと吹き飛ばされそうなほどの猛烈な風が小部屋全体に四方八方へ吹き荒れる。
体が軽く浮かび上がるほどの風は、モンスターの物量によって壁付近にいるモンスターを圧死させるほどで、一瞬にして息ができるだけの空間を作ってくれた。
前後左右、私が全身で技を放つだけの余裕。そして、私を吹き飛ばしてくれたからこそ、萌葉ちゃんとも十分距離ができている。
「今まで使ったことないけど、重畳って感じ?」
:来るんだね? これはあたしでもわかるやつ
:やったれのぞみん!
「言われなくても!」
「コメントと会話して、やっぱりあんた配信中でしょ。そういえば、えっと、のぞみ、だっけ? あんた、何するつもりなのよ」
「当然、これですよ」
私は萌葉ちゃんにガッツポーズでもするように右の拳を握って見せた。
それから、両足を広げて深く構える。
目指す先はモンスターハウスを作り出した元凶。
「え、ねぇ、何する気? 拳に魔力を込めてるけど、それ、体術系のスキルじゃないわよね? そのままだと手が爆発するんじゃないの?」
「ええ。その通り、みんな大好きなアレですよ」
「何? 爆発? やめてよ。わたしこれでもかわいいで売ってるんだから、アフロとか本当に勘弁だからね!」
なんだか訳のわからない文句を言われている気がするけれど、私は構わず拳に魔力を貯め続けた。
全身全霊、全力の一撃を放つため。
ここまで準備が整えば、あと1メートルくらいまで迫られても問題はない。
「準備完了」
私は溜まってきた魔力を握り込み、目の前のモンスター軍団めがけて突き出した。
「拳、ビーッム!」
真っ直ぐに正拳突きをすると同時、その先へ魔力が拳状となって射出される。
「サークル!」
続けて、拳状の魔力がパーの形状になると私と萌葉ちゃんを中心にして一回転するように全てのモンスターを横チョップの要領で薙ぎ払った。
なんの抵抗も感じさせないほどあっさりと大量のモンスターたちはあっけなく弾け飛び、足元には大量のドロップしたアイテムだけが残っている。
私の目の前では、拳ビームによって壁に穿たれた穴と、チョップによって削られた跡が広がっていた。
そしてその下、モンスターがいなくなり見晴らしのよくなった部屋の角には開かれた宝箱が口を開けていた。
私はモンスターが湧くより早く跳び、カチッとスイッチを押した。
「ふぅ、これにて一件落着ですな。よかったよかった」
:おつのぞみー
「おつのぞみー」
:ってか壁崩せるじゃん
「間のところは別よ」
未だパラパラと崩れてくる壁から離れながら私は部屋の中央へと目をやった。
萌葉ちゃんはぺたんとその場に座り込んでいる。
「安心しちゃった?」
「た、助かったの……?」
「一応Aランクダンジョンだからまだまだ危険はあると思うけどね」
私より長く戦っていただけあり、萌葉ちゃんは疲れ切ったようにそのまま背中側へべたっと倒れ込んでしまった。
ちっちゃい女の子だし仕方ないかな。
「ここか! ダンジョンアラートの場所は! 助けに来た、ぞ……?」
ちょうどいいタイミングでプロのダンジョン救助隊の人たちもやってきたみたいだ。
ゾロゾロと小隊規模の方々が警戒しながら先ほどまでモンスターで満ち満ちていた小部屋の中へと入ってくる。
「となると、萌葉ちゃんの実力ならこれくらい耐えられたろうし、私のやったことは誤差みたいなものだったのかな」
「あんた、さっきのやっておいて誤差って」
「それじゃ、萌葉ちゃん、お元気で」
私は手を振って走り出した。
「あ、ちょっと、どこ行く気? 待ちなさいよ。せめて何者かだけでも」
「おっと……」
そういえば名前くらいしか言っていないか。
でも、私は有名じゃないし、『原初のSランク』みたいな二つ名なんてものは持っていない。
「何者か、か。通りすがりの探索者かな」
「通りすがりの探索者?」
「それじゃ、こちらお任せしまーす」
「いや、君? この状況の説明を、おい君ィ!」
人助けは気分がいいね。
そして、部外者は早めに退散するのが吉。
Sランクだとバレるとこういう場では拘束が長くなっていけないからね。
:のぞみんもずる賢くなったね
「りーちゃんに言われたくないな」
肝心なのよ。乗せられやすい私だから、引き際ってやつが。
でもいいことできたし、明日からの配信も全力で頑張るぞ!
「……通りすがりの探索者って、何か知ってるか?」
「いいや。配信中に寄ったみたいだし、どこかで探さないとな」
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