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配信初心者の私、プロ指示厨の言いなりで気づけば百合ハーレム完成!?  作者: マグローK


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第24話 指示厨の正体

 突然現れたりーちゃん。

 そして、突然消えた指示厨さんのデコイ。

 どこへ行ったのかわからない。

 とにかく気になることが山積みだ。

 そんなの中でもどうしてりーちゃんがここにいるのか、それが一番わからない。


「疑問がいっぱいって感じだね。のぞみんのそういう表情に出やすいところ、あたしはずっと好きだったよ」


「欠点を好きって言ってくれるのは嬉しいけど、たしかに疑問でいっぱいかな」


 私は慎重に言った。

 それは、りーちゃんがいつもより笑っていなかったからだ。

 心配、というのもあるけど、何か隠していそうな雰囲気もあって警戒してしまう。


「りーちゃんの方から話があるんだよね? 何はともあれ、まずはそれを聞くよ。こんなところでよければ」


「そう。告白したいことがあるんだ」


「こ、告白!?」


 え、え。


 いや、同性でも別にいいし、なんならりーちゃんに言われるなら嬉しいけど、でも、急じゃない?

 告白って、もっとこう、雰囲気のあるタイミングとかにするんじゃないの?


「あっはは。そんな反応してくれるなら、最初から真っ直ぐに気持ちを伝えておけばよかったのかな」


「え、じゃあ。やっぱり……?」


 探索の時よりも心臓の音がドクドクとうるさい。

 考えてもこなかった可能性にいつもなら次の手を考えられる私の脳が止まってしまっている。


 上目使いでりーちゃんの顔を見ると、りーちゃんはこくんとうなずいた。


「あたしはのぞみんが好き。大好き」


「あ、ありがとう」


「その気持ちに気づけたのは、のぞみんが有名になってくれたから」


「それはりーちゃんのおかげだよ。あはは。何から何まで支えてもらって何と言ったらいいか」


「ね。そのことだけどさ。それでもあたしは後悔してるんだ」


「え?」


 りーちゃんは私から不自然に視線をそらした。

 それから、まるで表情が消えたようにりーちゃんの顔が口角だけ上がったような曇った顔になる。


「りーちゃん……?」


「あたし、がんばってるのぞみんが好きなんだと思ってた。でもね。違ったの。あたしはがんばってるのぞみんを、あたししか知らない状況が好きだったんだって」


「なにを言ってるの?」


 急に私の目を見てきたかと思うと無言のまま近寄ってくるりーちゃん。私はそんなりーちゃんを前に、ぶつからないようあとずさった。

 当然、背後には壁。

 すぐにあの独特な感触に背中がぶつかり、視界を覆うようにりーちゃんが両手を突いてきた。


「ねぇ。指示厨ってどこに行ったと思う?」


「指示厨さん? さあ。りーちゃんは見てないの?」


 私の言葉を聞いて、りーちゃんは、ふふっとおかしそうに笑った。


「何か知ってるの?」


「気づいてないんだ。指示してたのはあたし。指示厨はあたし」


 淡々とした印象の受ける平坦な声でりーちゃんは言い切った。

 その声にいつもの元気な様子はない。


「指示厨がりーちゃん?」


「はじめね。あたしも自分でよくわからなかった。何が起こっているのか。これが自分なのか。でも、わかるんだ。やりたいことの有効な手が。見えるんだよ。知らないはずの情報がさ」


「見える?」


「そ。行儀が悪いと分かっていても止められなかった。だって、のぞみんを天才的な探索者にできるんだよ? それに、ようやくあたしものぞみんの力になれるって思えたんだもん。だけど、確証はなかった。だから、少しぼやかしながらやってた。予防線のために。元のスキルじゃ足手まといにしかならないからね。すっごい興奮した」


「ちょ、ちょっと待って? 指示厨さんがりーちゃん? いやでも、りーちゃんのスキルは授業で重宝されてたし、足手まといなんてことはないよ」


 元から先が見える方だったりーちゃんは先導役としてよく授業内でパーティリーダーを任されていた。

 私がどちらかと言えば協力が苦手なタイプだから、そこのバランス調整もよくやってくれていた。

 それに、チームワークが発揮できるよう気を回してくれてもいた。

 私はいつもそんなりーちゃんに救われていたんだ。


「授業では、ね。そう授業では。そして、その時点でもあたしは自覚するべきだった」


「何に?」


「のぞみんが目立たないよう、出る杭を叩いてたってことに」


「出る杭を叩いてた? どういうこと?」


「あたしは、のぞみんのことをみんなに知ってほしくなかった。実力があることを疑われるくらいみんなと変わらないと思っていてほしかった。目立ったら、あたし以外の子と仲良くするかもしれないのが怖かった。幼馴染ってだけじゃ、いずれ誰かに隣を奪われるんじゃないかって」


「そんなこと」


「わかんないでしょ!」


 眼前で大声を上げるりーちゃんは目が曇っていて私じゃない何かを見ているように見える。

 今ももしかしたらスキルの何かを見ているのかもしれない。


「あたしはただの地図スキル。空間認識能力が高いだけ。のぞみんにはいなくていい。絡むのも結局は新規が入りづらい環境を作っていたに過ぎない。意図していないつもりだった。でも、自分で引っ掛かる節がある。あたしはのぞみんの邪魔をしてた!」


「りーちゃん……」


「うっうっ」


 嗚咽を漏らしながらりーちゃんはその場にしゃがみ込んだ。

 背中を震わせて小さくなった。


「でも、それでも伸びてほしかった。有名な人を助けてバズってほしかった。それであたしの勧めた未来が間違いじゃなかったと思ってほしかった。でも、実際に実現したら頭の中ぐちゃぐちゃになって。何かしたかったけど、なにがしたかったのかわかんなくなって。今も自分がなにを言ってるのかわからなくて。遠くに行っちゃうのが怖くって、それが耐えられなくって……」


「りーちゃん」


 ずっと、変わらず応援してくれていると思っていた。

 私はりーちゃんが隣にいると思っていた。

 それが、これからも変わらないと、そう思っていた。


 甘えだった。


 ちょっとずつ、離れるかもしれないことから、私も考えることを逃げていた。


「大丈夫だよ」


 私は目線を合わせてりーちゃんをただ優しく抱きしめた。

 しゃくりあげるような声がより一層近くに聞こえてくる。

 温もりと同時に震えを直接感じる。怖がっていることがより鮮明にわかる。

 いつも私の心を支えてくれていたりーちゃんが、まるで小さい子どものように感じられた。

 私はただ安心してほしくてそっと背中を撫でた。


「大丈夫。離れないよう努力しよう。別に私たちは初めから見る側とやる側で分かれる必要なんてなかったんだよ」


「え?」


「ごめんね。気づいてあげられなくて。そうだよ。探索は元々パーティでやるのが基本なんだから。みんなと一緒に補い合えばいいんだって。足手まといなんかいないんだって。」


「なに? どういうこと?」


 顔を上げたりーちゃんの顔はひどいほど涙でぐしゃぐしゃで、鼻水も垂れていた。

 年頃の女の子がしていい顔じゃない。

 私しか見ない環境でよかった。


「パーティになろう」


「……いいの? あだじ、戦闘はなにもでぎないよ?」


「大丈夫、私が守るから。むしろごめんね。気づいてあげられなくって」


「ううん。あだじがごべん」


「もう。なに言ってるかわからないよ。要は羨ましかったってことなんでしょ?」


「ぢがうぼん!」


「泣いてる」


「ないでないがらー」


「はいはい」


 わんわん声を上げるりーちゃんの背中を、私はただただ撫でてあげた。

 落ち着くまでずっとそばにいて2人で寄り添っていた。

いつも読んでくださりありがとうございます。


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