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配信初心者の私、プロ指示厨の言いなりで気づけば百合ハーレム完成!?  作者: マグローK


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第22話 謎の小屋に住む発明家?

 ひとしきり中層まで探索を進めたところで時間がいい頃合いになってきた。

 帰りはテレポートということではあるが、あんまり遅いと静奈ちゃんが心配されてしまう。

 層を移動しても配信もネット環境も改善しなかいってことがわかったし、今回はここまでかな。


「どうです? 切り上げ時じゃないですか?」


「のぞみから提案されるとは思ってなかったけど、少し早くやめておく分にはいいかしらね」


「静奈ちゃんはどうかな」


「うん。持ち帰るのが気になるところ」


「そうだね」


 2人も反対じゃなさそうだしここまでで終わり。


 そもそも、今回は探索を進めた結果がハイライトじゃないからね。

 配信自体はうまくいかなかったけども、それはそれとしてドロップ品で収穫があった。


「それじゃ、終わりにしようとおもまーす」


指示厨:探索後の換金は近くの小屋がおすすめですよ


 カメラも壊れて状況が伝わっていないはずなのに、指示厨さんのコメントはいつも的確だ。


「ありがとうございました。そろそろ出て売ってみようと思います」


「画面がこんなでもあいさつはしとくのね」


「実は届くかも。なーんて思ったりしてますから」


「そうだといいな」






 私たちは配信を閉じてから、そそくさと上層へ上がり、ダンジョンを出た。

 それから、軽く離着陸地点を整備して、指示厨さんの指示のもとダンジョンを出て小屋を目指した。


「帰るんじゃないの?」


「ちょっと寄っていきましょう」


「ま、いいけど。それにしても外でもつながらないわね」


「来たときは意識してなかったけど、この辺一帯がダメなのかも」


 興味深いけども、これもあの特殊なダンジョンと関係がありそうな気もする。

 ノイズってことだけど、ここまでの影響は私も経験がない。


「そうだ。私の件じゃないですけど、帰った時用に記念写真を撮りましょうよ」


「いいわね。ほら、静奈」


「ちょっと待って」


「いきますよ。ってあれ? 写真も撮れない」


「何よそれ。いや、わたしのも」


「ワタシもダメ」


「全員の持ってるスマホがダメだし、どれか特定の機械が不調って訳でもないのよね」


「不思議」


 ダンジョンの世界は不思議がいっぱい。

 とはいえ、一つ一つ前進していくとこういう妙なものとも遭遇するからなぁ。

 面白いところといえばそうだ。


 残念だけど切り替えるしかない。





 しばらく歩いていると、一軒家に付随してる物置小屋のような建物が見えてきた。


「何あれ」


「こんなところにポツンと」


「怪しい」


 とはいえ、これを目指していたのでここで引き返すわけにもいかない。


「ちょっと、やめときなさいよ」


「せっかくです。のぞいてみましょう」


「気になるけど……大丈夫?」


「大丈夫大丈夫。すみませーん」


 ノックしてみた。返事はない。


 再度ノック。返事はない。


 耳を澄ませてみる。

 中で何かの作業音は聞こえるし、人の雰囲気はある。


 だけど、どうにも反応が返ってこない。


「……無視されてる?」


 私は思い切ってガラガラッと扉を開けて中をのぞいてみた。

 するとそこには、くすんだピンク色の髪をボサボサにしたズボラな感じの女性がいた。どうやら何かを夢中になって凝視しているみたいだ。


「あの。すみません。ダンジョンとかそのアイテムを置いてるみたいですけど、何してる方ですか?」


「ん?」


 改めて話しかけると、女性はそこでようやく私たちに気づいたらしく、持っていた金色のビー玉のようなものを無造作に放り投げた。それから私たちの顔をじっとのぞき込んでくる。

 ジロジロと何も言わずに顔を寄せてくる女性からはホコリっぽいにおいがした。


「あの。なんですか?」


「どうしてだろう。初対面のはずだが、全員見たことがあるな」


「はあ……」


「んー。いや、そうだ。君の配信だ」


 ニタっと口を歪める女性。どうやら笑っているらしい。

 そんな顔で私のことを指差してきた。


「そうそう。見たんだよ。ポイズネルキメラ。あれはいいね。画期的だよ。あんな戦い方は初めて見た。ただ、凡夫にゃあれは習得するまで時間がかかりすぎる。多分一生かかっても無理なんじゃないかな」


「は、はあ」


「うっへっへ。ごめんごめん。私の悪い癖だ。えーっと……あれぇ? さっきのどこやったかな」


「あそこに投げてましたけど」


「うへぇ。マジで? これも私の悪い癖。せっかくの発明品だったのに。もったいなぁ。うっへっへ」


 変わった笑い方だ。思わず苦笑いになってしまう。

 なんというか、うん。変わった人だ。


「ごめんごめん。一方的に知ってるからさ。まずは自己紹介だよね。えっと? 猪瀬のぞみ、重畳寺萌葉、それと?」


「ワタシは甘崎静奈」


「そうそう甘崎。私は金井かないラナ。まあ、気軽にラナちゃんとでもカナちゃんとでも呼んでくれ」


 私たちの名前を確認してから、金井さんはようやく名乗った。

 言っちゃ悪いけどズボラそうな感じ時の女性。ノースリーブにブカブカの白衣を羽織っただけの女性だ。


「あの。こんなところで何をされてるんですか?」


「私? 興味があるのかい?」


「端的に教えていただけるのなら」


「釘を刺したね? そういうの大事だ。私はいくらでも話すからね。おっと、もう長いか。ま、発明だよ。端的に言えばね」


「発明」


「そ。作るのは好きだけど、探索は嫌いでね。ただ、私は他の発明系スキル持ちと違って社交性がない。頼れる相棒なんていやしない。だから、一風変わったダンジョンの近くで気が向いたらすこーしばかり探索をしたり、来た探索者を招いて取引したりしてるのさ」


 そう言うと、金井さんはどこからかアタッシュケースを取り出して、2つほど無造作に投げてきた。

 持ったところ、どうやらパンパンらしい。多分、凶器になる重さだ。


「なんです? これは」


「金だよ。金ピカのとこに行ってきたんだろ? 置いていけるだけ置いてってくれ。金が足りないならまだいくらかあるが」


「待ってくださいこれって」


「この交渉も面倒なんだ。私は自分で価値を測る。多いとか少ないとかごちゃごちゃやるなら私の話を一年間丸っと聞かせるが?」


「それは……勘弁願いたいかも」


「だろう?」


 この人なら、本当にやりかねない、というそんな確信がある。

 会って間もないのになんて人だ。


 ただ、私の一存じゃ決められない。

 アタッシュケースいっぱいに何かが入っているのは事実だろうが、それがダンジョンで手に入ったものと同等以上のものかどうかはわからない。

 開けてみようにも、ここは足場がなさすぎる。


 私はより大人な重畳寺先輩を振り返った。


「どうします?」


「あんた次第よ」


「ワタシもそれで大丈夫」


「えぇ……」


 信頼されたものだ。

 嬉しいけれど、こういう時はもうちょっとアドバイスがほしかったかもしれない。

 とはいえ、重畳寺先輩も見た目はロリだ。ここであんまり意見を聞いているところを見せるのもマイナスかもしれない。


「と言っても、そこまでパッと換金できるところなんて他にないだろうし……」


 雰囲気だけ見たら信用できない。

 それでも、どこか言っていることに真実味があると感じる。

 体臭という意味ではなく、同じにおいがする。そんな予感がある。


 ……ただ、もし仮に今持っているものが現金だとしたら、本当に大丈夫なお金か心配になるのも事実。


「ああ。私としたことが、実績を開示してなかった。ほら、これ、発明の方でSランクだ。ま、これも見たことなけりゃ偽物だって言われるんだけど」


「本物だ」


「へぇ」


 私のこぼした言葉に興味深げに金井さんは笑った。


「本物だ、ねぇ。やっぱり持ってるんだ。並外れてるもんなぁ」


「一応、私もSランクですから。ただ、私以外で持ってる人、初めて見ました」


「ふーん。人里に出るのも悪くない、とか思っちゃうねぇ。私も探索者のSランクは初めて見てるよ」


 なるほど。すごい実績だ。これだけのものを見せられたなら、お金の出どころに心配はいらない。


「受けましょう。整理させてください」


「ああ。勝手に置いてってくれ。置き方とか気にしなくていいから」


「いや、それは」


「今のと同じだ。何か綺麗に置こうとか取りやすくしようとか考えるならやめにしてくれ。私はゴミゴミしてる方がやる気が出るんだ」


 確かに、床にはカップ麺のゴミばかり。

 こういうお姉さんというのはかなり参考にしちゃダメなやつだろうなぁ。


「ちなみにネット環境が使えない理由ってわかったりします?」


「さあ? 私は人を避けるために利用させてもらってるけど元々だよ」


「そうですか」


 気になることだけ聞いてから、私たちは置いていけそうなアイテムを片っ端から取り出し始めた。

いつも読んでくださりありがとうございます。


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