第21話 金策連戦
ダンジョンに来てから2体目のモンスターであるゴールドベアーを討伐すると毛皮から何から、これまた金ピカなアイテムが大量にドロップした。
遭遇したことはない種族のモンスターだから、ドロップ品の正確な価値はわからないけどもおそらくは金塊ゴーレムに負けないだけのものだろう。
「すごいじゃない。あんたの攻撃を少しは耐えるだけのモンスターでしょ? かなり丈夫な体毛じゃない? 防具として有用そうね」
「はい。このまま羽織るだけでもそこらの防具より信頼度が高いと思います」
「判断力がすごかった。改めてありがと」
「ううん。たまたまだよ」
リターン目的の行動だしね。
みんなが無事でかつ今こうしてアイテムを回収できているのが何より。
「ここまできたら、ドローンの修理、いや、新しいものを買えるくらいにはやらないと」
「それ、ドツボにハマるやつでしょ?」
「うん。ギャンブルは良くない」
「ダンジョン探索はギャンブルじゃないよ」
ダンジョン探索はれっきとしたビジネスだ。戦略性を持って取り組める計画的なスポーツでもある。
そう。誰もがスキルを持つ時代。誰もが探索者になれる時代だからといって、誰もが探索者として稼げる訳でもない。
多くの人が稼ぎやすくはなっても、そこに立ち回りの妙がある。
「急に何のポーズ?」
「銃?」
私は静奈ちゃんの指摘通り、手を銃の形にしてから爪の先へ魔力を溜めた。
「バーン」
そして放つ。
まっすぐに直進した魔力弾は先へいたモンスターを貫いた。
重畳寺先輩が使う魔法の劣化互換というところだろう。
指示厨:あれはカネアライグマです。金塊ゴーレムを洗い倒すモンスターで、金塊ゴーレムの天敵です
「アライグマみたいなモンスターらしいですよ。金塊ゴーレムを狙ってたみたいですね」
「え、さっきのゴーレムもオーラでやばかったけど、あんた何してるの?」
「魔力だけじゃ減衰がすごいのに」
「えっへん」
ちょっとしたコツのようなもので使えるようになるものではあるんだけど、やっぱり目の前に褒めてくれる人がいるのは素直に嬉しい。
コメントもついてなくって反応があることが珍しいからやっぱりそわそわしちゃうな。
「それじゃあ回収しに行きましょうか」
「いいけど、あんたってそんなに遠距離からの攻撃もできるの? わたし攻撃の方向見てもどこにいたかわからないんだけど」
「はい。といっても近い方が得意ですけどね」
「ワタシより魔力使用効率よさそう」
「スキルによって千差万別だから比較するものじゃないと思うよ。静奈ちゃんの氷はすごい綺麗だし、スピードが出るでしょ?」
「そうかも。ありがと」
私はたまたま純粋に魔力を変換して操作することが体や探索方針に合ってるってだけで、全員がそうじゃないとは思ってる。
全員おんなじ探索方法じゃ一番やってる人が一番上手ってことになるだろうしね。
「あ、宝箱じゃん。ついてるついてる!」
指示厨:それは罠です。ゴールドタヌキが化けてます
「え?」
宝箱に触れようとしたところで、ガブリとタヌキに指を噛まれていた。
「いったー」
「ちょ、大丈夫? ガッツリ噛まれてるけど」
「止血しないと。ばい菌が入るかも」
「大丈夫大丈夫。とっさにガードしたから」
ほぼ反射だったけど魔力の壁が張れて助かった。牙は指の皮一枚にも満たないところで止まっている。
「たしかに、血が出てない」
「どういうこと?」
「これが探索経験値ってね」
ここで固定できたのはむしろ私としてはよかったかもしれない。
今の状態ならゼロ距離で攻撃を入れられる。
逃さないためにも、噛んできた牙を魔力で縛りつけておこうか。
「さーあ、これで逃げられない」
「何? じゃあ、あえて噛ませたってこと?」
「肉を切らせて骨を断つ作戦」
「せい!」
私はタヌキに気合いの一発を入れた。
タヌキはおとなしくダンジョンへと吸収されアイテムに変化し出した。
「うわぁ。このダンジョン。どれも金ピカなんだね」
「相変わらずどのアイテムも金ってのはなんか趣味が悪いような気もするけど」
「でも、綺麗は綺麗。反射で映り込むくらいだし」
「ね! 一部は普通に持ち帰りたいかも」
指示厨:ゴールラビーですよ。敏捷性が高く逃げます。すぐに倒してください。消えます
指示厨さんのコメントすぐ後に、ぴょこん金色の世界に動く小さな影が視界に入った。
騒いでいる私たちに気づいて様子をうかがいに来たらしい。そして、私たちを見つけてすぐに逃げるように走り出した。
「新手だ」
「発見が早いってば」
「ワタシ、ゴーレムの時しか反応できてない」
静奈ちゃんも見えていないとなると、私がやるか?
重畳寺先輩の攻撃は近い的からで、もう逃げ始めてるとなると、消える、というのに間に合わないかも。
でも、跳ねる動きに左右に振るような身のこなし。遠くからの狙撃じゃ難しい。
「ウサギ狩り。あんまり気分はよくないけども……2人ともちょっと待っててください」
「どこにいるの?」
「何するつもり?」
「まあ見ててくださいよ」
私は徒競走のように構え、スタートダッシュを切った。
距離はまだまだ遠い。
ズンズン詰めていくも米粒程度の大きさが徐々に大きくなってくる程度。
だが、私の方が速い。いける。追いつける。
「え、これ……」
どこかでテレポートでもするのかと思ったけれど違った。
距離が進むにつれ、ゴールラビーの体がうっすらと透け始めた。
動きは衰えない。
このままだと逃げられる?
いや、まだ完全に消えた訳じゃない。
私は左手を前に出した。
五本の指それぞれから魔力弾を放つ。
「くっ、外した」
けど、動きが鈍った。
これなら、私が掴み取る。
「うはあ!」
私はゴールラビーの耳を掴み上げて近くの壁に殴りつけた。
体力がそこまで多くないようでゴールラビーは一瞬にしてアイテムへと姿を変えた。
「す、すごい。装飾に使えそうな高価なアイテムがいっぱい……」
「はっはっ。話半分だったのに、ここまでの遭遇率にアイテムの量。バカにならないわね」
「いつもとは段違いだよ」
今さら疑ってた訳じゃないけど、指示厨さんって、本物……。
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