第2話 ロリな大人を救助へ
「よし」
気持ちを切り替えるため、自慢の黒髪をポニテにまとめ上げてからダンジョンアラートの場所まで走る。
私の配信が伸びていないから、ダンジョン間連絡通路の件は後で報告が必要だろうけど、それはそれとして人命優先だ。
「こっちのはずなんだけどな」
大体の方角は合っているはずだけど、奥まった小部屋なのか、なかなか辿り着けない。
ダンジョンランクはA。層は下層。少しの油断が命取りになる。
「どうにか耐えてて」
視界のオーバーレイを配信画面から捜索用に変更。
そうは間違えていないはずだし、この辺のはず……。
「やっと見つけ、うわぁ……」
件の場所はモンスターハウスにしてもやり過ぎなほど、満員電車以上のすし詰め状態となった一室だった。
ダンジョン内のスペースと言えど、これほどまでのモンスターハウスは、おそらく今まで一度も報告されていないだろう。コボルト、リザードマン、オークなどなど。亜人と言われるようなモンスターが部屋の中でひしめき合っている。
集団恐怖症の人は見ただけで気絶してしまいそうだ。
:これは確かにうわぁ、だね
「うん」
どんな低ランクモンスターでも、現象としてはSランクすら屠ってしまいそうな勢いがある。
思わず、ごくりとつばを飲み込んでしまうほどだ。
「やっぱり、私1人なら全然問題ないんだけど、人がいるからなぁ」
番狂わせがあるのがダンジョン。Sランクが亡くなったニュースはまだ記憶に新しい。
「ただ、迷っている暇はないよね」
「……! ……ちょ、しま……、……ねやがった」
中にいる探索者のスキルによってモンスターが通路側へ弾き飛ばされたのを見て、私はモンスターの群れへと突っ込んだ。
指示厨:入り口から右奥の角にあるスイッチを押してください
「右奥の角?」
オーバーレイの隙間からコメントが見えた。
私よりもダンジョンに詳しそうなことは先ほどの一件で判明している。
ただ、モンスターが多く、人を巻き込まずに行くには工夫が必要。
「助けに来ました! 猪瀬のぞみです!」
「これ見て本当に来てくれたの……? って、子ども!? わたしはそんなことしたくないんだけど」
「え、え!?」
中にいたのは、見た目10歳くらいのもこもこした可愛らしいピンク色のパジャマを着ている黄色い髪の女の子。片側だけ結んでいるけれど、髪の雰囲気からして、左側がほどけてしまったツインテールだったのだろう。
いや、それよりも! 私より小さな子に子ども扱いされた!
「あ、あなたが1人で戦ってたの?」
「そうよ。わたしもこれでAランクだからね」
ませている子なのかもしれない。
なんとなーく大人な雰囲気を出そうとしているのがわかる。
「わたしは重畳寺萌葉。あー嫌になる。帰りにちらっと小部屋に寄っただけなのに」
「そうなんだ。……くっ。もう迫ってる」
ちょっと話しただけなのに、そんな短時間でも吹き飛ばされていたモンスターたちは体勢を整えたらしい。わたしたちに迫ってきている。息ができないほど詰まった空気で胸が苦しい。
萌葉ちゃんもAランクということだけど、 杖を持っているところを見れば魔法使いのようなスキルセットなのかもしれない。となると、吹き飛ばした技はおそらく魔法だろう。
主に遠距離が多い魔法使いを考えると、戦闘は不意打ちで終わらせるソロ探索者か。でも、年齢感からすれば、習い事や自主勉強の途中とかではぐれたり、迷子になった可能性もある。
いずれにしろ、早く助けなくては。
「ちょっといいかな?」
「何よ。このままじゃ共倒れとかって言いたいの?」
「ううん、そうじゃなくって、入り口側から右奥に何があったか覚えてない?」
「何その話し方」
「思い出せないかな?」
「そんな、急に言われても……いや、うーん? どうしてそんな的確にわかるの?」
「何かあったんだね?」
まっすぐ一列を殴り飛ばしながら私は一瞬だけ萌葉ちゃんの方を振り返った。
萌葉ちゃんは少し不思議そうな目を私に向けていた。
「あったわ。その位置には箱があったわ。その箱を開けたらこうなったのよ」
「つまり仕かけのきっかけが右奥にあると」
「え、わたしの配信見てたの? あんたも配信者みたいだけど」
「ビンゴ」
「ビンゴ?」
萌葉ちゃんの記憶が確かなら、指示厨さんの内容もおそらく本当。
そして、萌葉ちゃんが言ったようにこのままじゃジリ貧。
2人がかりでモンスターを倒すだけじゃ、湧きスピードを上回ることはできない様子だ。
1人なら全てを吹き飛ばすこともできようが、今は萌葉ちゃんを巻き込んでしまう。
そもそも、今回のモンスターハウスはきっかけを潰さなくてはどうあがいても終わらない。
「萌葉ちゃん、私が入ってきた時に使ってたあのノックバックさせる技、もう一回できるかな」
「あんたなんか馴れ馴れしくない? わたしたち初対面でしょ?」
「できるかどうかだけ教えてくれない?」
「で、できるけど……あれ、今のわたしじゃあと一発しか使えないし、今さら使っても焼け石に水よ?」
「大丈夫。空間ができれば巻き込まずに済むから」
「は、はあ?」
伝わったかどうか自信はないけど、私は萌葉ちゃんの目を見てうなずいた。
状況は一刻を争う。
こんな状況にならないように、私は基本1人で探索をしている。
理由は、連携を受け入れてもらえないから。でも、今ならできそうな気がする。
「今、お願い!」
「あーもう! 無理だったら一緒に死んでもらうからね? 『暴発・爆風』!」
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