第九十三話 愚か者
承前
代官の下宿の調査にユーキたちが出掛けて二時間ほどが経った。自室でのんびり休憩していたスタイリス王子はユーキたちが帰還したという知らせを受けて、会議室に戻った。ずかずかと部屋に入って自分の席に音を立てて腰を落とすなり、冷ややかな笑いと嘲りを顔に浮かべながらユーキに尋ねた。
「遅かったな。退屈させられたぞ。で、どうだったのだ? ユークリウス、この時間の掛かり具合では随分と悪足掻きをしたと見えるが、今度こそは自分が愚か者だと、はっきり自覚しただろうな?」
「いいえ、兄上」
ユーキは正使殿下の問いに答えようとしたが、その前にクレベール王子が制して割って入った。そして苦笑いをしながら明るい声で応じる。
「兄上、『愚か者』はむしろ私たちだったかもしれません。ユークリウス殿下は子爵の責任を示す証拠を見出しました」
「何だと? どういうことだ、クレベール」
スタイリス王子が訝しげに尋ねる。クレベール王子はそれにすぐには答えず、代官の下宿の捜査に同行した者たちに指示して種々の資料を次から次へと机の上に並べさせた。その量を見てスタイリス王子は唖然とした。
「何だ、これは……」
そう言った切りで口を開いたままでいる兄の顔を気にする様子も無く、クレベール王子は報告を始めた。
「ユークリウス殿下は代官の下宿で、我々の誰もが気付かずにいた隠し部屋を暴き立てました。その隠し部屋、元は衣裳部屋のようですが、そこからは代官の衣類以外に様々なものが発見されました。まずは、問題となっていたこの契約書。代官が子爵邸から持ち去り、隠匿したのでしょう。内容ですが、このネルント開拓村との契約書は、村でディートリッヒ嬢が調べた結果と完全に一致しました。こちらのクリーゲブルグ辺境伯との契約書も、辺境伯の訴状と一致しています。それ以外の、領内の町村への各種の税に関係する契約書がこちらです。十通ほどありました。先代子爵はきめ細かく税を調節していたようですね。現地調査からするとその契約の殆どが無視されたことになりますが、これだけあって訴えとして表に出てきたのがネルント村と辺境伯の二件だけだった、というのが逆に驚きですね」
「……」
聴いているのか耳に入っていないのか、半ば開けた口を閉じずにいるスタイリス王子の様子を時々見ながらも、クレベール王子は淡々と続ける。
「それから、そちらの山は子爵から代官あての書簡が多数。日付は昨年が大半です。どうやら継爵して最初の頃は少しは打ち合わせていたものの、その後は代官に丸々投げ出していたようですね。内容として、小麦の作付け、増税額や懲罰方針について、代官に対して明確に指示し許可を与えています。『小麦を領全体で大規模に増産せよ』『貴族としての威光を保つのに増税が必要である。領内全ての畑について一エーカー当たり一ヴィンド五十リーグを躊躇せず徴収せよ』『わが権威を知らしめる為に適切とあらば、厳罰を躊躇うな。多少の傷を負わせることがあっても止むを得ないと考える』ですか。但し、税額は代官にがさらに上乗せして二ヴィンドとしていますが」
「……」
「ああ、重要な事を忘れていました。初期の書簡に『其の方からの手紙は全て焼き捨てている。そちらでも間違いなく焼き捨てるように』というのがありました。従来の契約書についても焼くように命じています。代官は従わなかったようですが。あと、文書類の他には、ここにも酒瓶がありました。持って参りませんでしたが、種類は、最上級でした。最後は、この革袋の現金、主に金貨でデール大銀貨も少し交ざっています。隠し部屋の中でも最奥に隠されていました。中身を数えた所、四百九十四ヴィンド七十五リーグ相当でした。代官の身分で、よくまあ貯め込んだものです。尤も、大半は領民から搾取したものでしょうが。それを使えば、出兵に傭兵ギルドを全員連れていくことも簡単にできたでしょうに。恐らく、代官は守銭奴で、金貨を使うことができない性格だったのでしょうね。手に入った金貨は手放せず、全てそのまま貯め込んでいたと思われます。金貨を数えるのを肴に、美味い酒を嘗めていたのでしょうか。ひょっとすると、隠し部屋を作ったのはこの金貨を隠すのが真の目的で、契約書等はそのついでだったのかも知れませんね。金貨は盗まれて使われてしまえばそれまでですから。契約書を領収書等と別にして隠していたのは、子爵の命令に逆らったことが露見するのを防ぐためだったのでしょう。命令不服従は重罪ですから。経理書類の類はもし見付かってもどうとでも言い訳ができるとでも考えていたのかもしれません。私もこのことには思いが到らず、反省しております。……まあそれはともかくとして、纏めると、認否での子爵の説明とは異なり、子爵は明確な意思を持って契約に違背したと言えるでしょう」
クレベール王子は報告を終えると一度言葉を切り、スタイリス王子の方を見た。正使殿下は相変わらず呆け顔をしている。
「兄上、どうなさいますか?」
声を掛けるとスタイリス王子ははっと現に戻ったように弟の顔を見た。
「子爵は監察正使たる兄上に対して嘘を吐いていたことになりますが」
副使が端的に指摘すると卓の上の押収資料をきょろきょろと見ていたが、突然大声で笑い出した。首を振り振り、見るからに明らかな作り笑いだ。
「ハッハッハッハッ」
「兄上?」
「ハッ、そんなことは俺には最初から分かりきっていたことだ。今更何を言っているんだ?」
「ですが、兄上。兄上は子爵がお膝に縋るのを許しておられましたが」
「明確な証拠を突き付けることができなくて、時間を稼ぐために止むを得ずあいつを信じる振りをしていただけだ。俺の勝ちだな。ユークリウス、良くやった。お前ならきっと俺のために証拠を見付けてくれると信じていたぞ」
正使殿下のあまりの豹変振りに一同が驚いて互いに顔を見合わせる中、クレベール王子が訝しげに兄に尋ねた。
「兄上、一体どういうことですか?」
「うん? 何だ? 俺がユークリウスに言ったことか? こいつを発奮させるためにわざと言ったに決まっているだろうが」
スタイリス王子は首を振って大笑いしたために乱れた長い金色の髪を撫で付けながら続けた。
「お前は頭はいいが、理屈の輪から抜け出ることができない。ユークリウスは馬鹿正直で、決まり切ったことを決まり切ったようにやろうとする。これじゃあ、隠れた証拠は掘り出すことはできないと俺は考えたのだ。そこで、まあ、発想を転換させるためにユークリウスを追い込んだわけだな。追い詰められれば、自分の枠を壊してでもなんとかするだろうという策だ。大当たりだったな」
それを聞いて、クレベール王子の表情と声が俄かに硬くなった。
「それでは、殿下がユークリウス殿下とされたこの前のお約束も今日のお言葉も、わざとなされた策の一部だとおっしゃるのですか」
「勿論そうだとも。お前もユークリウスも俺が思った通りに踊ったわけだ。なかなかに面白かったぞ。ここで待っている間は、随分とはらはら苛々させられたが。二人とも、褒めてやる。良くやった。これで子爵はお終いだな。どんな顔をするかお楽しみだ。そうじゃないか? アッハッハッハッ」
スタイリス王子はさも愉快そうにまた高笑いをしたが、追従笑いをする者はもう誰もいなかった。
部屋の雰囲気はぴりぴりと緊張し、彼の側近や従者でさえ、その表情を凍り付かせている。クレベール王子は張り詰めた相貌のまま、ゆっくりとユーキの方を見た。
ユーキはクレベール王子に小さく頷くと、スタイリス王子を真っ直ぐに見て静かに口を開いた。
「殿下、では実は、私は『愚か者』ではないと思っておられたということですね?」
「ああ? 俺の言った事を真に受けていたのか?」
「はい。正使殿下のおっしゃった事ですので、真剣に受け止めておりました」
「そうか、そうか。可愛い男だ。お前のような若者には、効果満点だったわけだ。やはり俺は大策士だな。アッハッハ。これでお前も、大人とはどういうものか少しは理解できただろう」
「つまり、私は殿下の言を真に受けるべきではなかった、と?」
「俺は策士だ。策士の言う事をいちいち信じるとは、甘いぞ。本当に馬鹿正直な奴だ。おっと、これは陛下がおっしゃったのだぞ?」
「殿下の言をいちいち信じる必要はないのですね」
「ああ、そうだとも。王族なら、そのぐらい弁えろ」
「王族なら、殿下を信じるなと」
「そうだと言っているだろう。お前は諄いな」
「殿下、差し出口ながら、それは御自身を……」
「何だ? イザーク、何か俺に文句でもあるのか?」
アルホフ卿が堪りかねて脇から何か言おうとしたが、王子はぎろりと睨んで強い口調で遮った。アルホフ卿は顔を曇らせ、何かを諦めるかのように俯いた。
「いえ、何でもありません」
「もうその話はいいだろう」
もう飽きたと言わんばかりの様子を見て、クレベール王子が下を向いて深く溜息を吐くと、その音をスタイリス王子が聞き咎めた。
「クレベール、どうした?」
「策は策だとしても、ユークリウス殿下は『愚か者』ではないと、形だけでも取り消されるべきではないかと思いまして。約束された事ですので」
「お前は本当に理屈が好きだな。そんな詰まらん事に拘るな」
その言葉を聞いて、クレベール王子は顔を上げた。
眼を厳しくしてスタイリス王子を見る。彼にすれば兄を睨み付けるのはいつ以来だろうか。声も大きく、高くなる。
「詰まらぬ事ですと? 王族同士が多くの貴族の面前で交わした約束事が、詰まらぬ拘りだと言われるのですか? 貴方は国王陛下の御名代なのですよ」
「わかった、わかった。クレベール、そんなに睨むな。ユークリウス、『愚か者』と言ったのは取り消す。お前は愚か者ではない。クレベール、これで良いか?」
「スタイリス殿下、それはユークリウス殿下にお尋ねになってください」
「ああ? そうか? ユークリウス、取り消したぞ。それで良いのだろう?」
スタイリス王子はユーキに向いて軽い調子で言った。
一方のユーキは先程からずっと表情を変えずにスタイリス王子の顔に視線を向けていた。スタイリス王子の側近たちはそのユーキの様子から目を離せずにおり、スタイリス王子が何かを言う度にはらはらしている。
だがユーキは背を伸ばし胸を張ったまま、静かな口調でスタイリス王子に答えた。
「もう一点、よろしいでしょうか? 殿下がおっしゃった村人の件ですが」
「村人? 何のことだ?」
「殿下は、『村人のことなど知らない』とおっしゃいました。それも殿下の策のうちで、御本意ではなかった。貴族だけでなく、村人たち庶民もまた陛下の赤子、そういうことですね?」
「何? 俺はそんなことを言ったのか? 憶えが無いが、まあいい、その通りだ。本意ではない。庶民も陛下の赤子である。これで満足だろう」
「はい。それを伺って安堵しました。有難うございました」
それ以上は求めないというユーキの言葉に、スタイリス王子の周囲にいた者たちは詰めていた息を一様に音を殺して吐き出し、緊張を緩めてほっとした顔で互いを見交わしている。中でもアルホフ卿はユーキに向かって小さく、しかし恭しく頭を下げた。
スタイリス王子はそれに気付かず、この話題はもううんざりだという表情をしている。
「うむ。クレベール、もう良いだろう?」
「はい。ユークリウス殿下がそれで良いのであれば、結構です」
クレベール王子は大きく息を吐き出した。スタイリス王子はそれを聞いて眉間に皺を寄せた。
「クレベール、また溜息か。今度はどういう意味だ?」
「ああ、申し訳ありません。深い意味はございません。どうやら今回の任務も終わりに近付いたかと安堵しまして」
「そうだな。もう調査はいいだろう。子爵も母親もこれで貴族の世界からはおさらばというわけだ」
「……」
相変わらずの調子で能天気に言い放つスタイリス王子に、クレベール王子は答えない。周囲の者の雰囲気はまた暗くなり、憂いに満ちた表情に戻った。子爵はともかくとしても、何の罪も無い母親までもが貴族の座から滑り落ちる。それは同じ貴族として気が咎め、できれば加担したくはないのだろう。
暗い沈黙を落ち着いた声で破ったのは、ユーキだった。
「スタイリス殿下、お尋ねしてよろしいでしょうか?」
「ユークリウス、何だ?」
「はい、私の知る範囲では、今回の件に先代子爵夫人が関与した証拠は見付かっておりません。報告の案を作成させていただく際に、夫人については何の罪を記載すれば良いか、御指示を仰いでもよろしいでしょうか?」
「うん? そうだったか?」
「はい。調査初日に、殿下は夫人と直接面談されたと伺いました。その際に何かがあったのでしょうか?」
「いや、その時には子爵に対する教育不行き届きを謝罪されただけだったな。まあ、罪と言えなくもないが、罰するほどではないか」
「はい、御賢察かと。この領都の市井でも、先代子爵夫妻に対してはその徳を賛美し、感謝と尊敬の声が多く聞かれました。その事を殿下から陛下に御報告され、夫人の身分を保全することを御提案されては如何でしょうか」
ユーキが答えると、ベアトリクスが横から口添えした。
「正使殿下、私共も、ユークリウス殿下のおっしゃったようなことを聞きましたわ。夫人には罪は無いように思えます」
それを聞くや、他の随行者たちも続いて口々に夫人を庇う。
「そうです、先代の遺徳は領内広く知られております」「ユークリウス殿下の御指摘のように、夫人は罰するには当たらないと思います」「正使殿下、是非ユークリウス殿下の御提案をお取り上げください」
一同の声を受けて、ユーキはさらに具申した。
「夫人に大きな罪がないとすれば、その身分を守ることは領民に安堵を齎し、国王陛下の御威光をこの領内に行き渡らせ、乱れた秩序を正すのに役立ちます。引いては、殿下による今回の監察の御成功に繋がるのではないかと考えます」
「要するに、庶民の受けが良くなる、ということだな。ユークリウス、回り諄いぞ。わかりやすく言え」
「申し訳ありません」
「監察が成功し、庶民が喜ぶのであれば、正使である俺としても別に反対する理由は無いな。クレベール、どうだ?」
「はい。それがよろしいかと思います」
クレベール王子が応じると、部屋の雰囲気は明るくなった。随行者たちも皆、感謝の目でユーキを見て、スタイリス王子に気付かれないようにそっと目礼をする。正使殿下はそれを他所に、監察が成功して自分の庶民人気が上がるのならばと満足そうにしながら言った。
「他には何も無いな? では子爵に有罪を申し渡すとするか、クレベール?」
「スタイリス殿下、それは陛下がなされます。我々としては、調査が終了したことを通告し、子爵に王都へ同道を求めることが役割だと思います」
「それはそうだが、件の契約書を俺たちが発見したことぐらいは教えてやっても良いだろう。契約書が見付かったと言えば、子爵にしたら断罪を受けたも同然だろうがな。通告は正使として俺が行う」
「殿下、調査結果を子爵に漏らしすぎないようにしてください」
「ああ、わかっているとも。大丈夫だ」
「では、他の皆は宿の撤収と帰還の準備を始めてくれ」
「待て、クレベール。通告の際に随行員が一人もいないというのは格好が付かない。ああ、ユークリウス、お前は来い。ついでに、悪事を働いた貴族にどう対するべきか、見て学ぶ機会をやる」
「……承知しました」
なぜ正規の随行員ではなく見習を選ぶのか。多くの者が訝しく思ったが、下手に問い質してまた正使殿下の機嫌を損ねてはいけない。ユーキが承諾の返事をするばかりで誰も何も言わなかった。
もう時間もかなり経った。副使クレベール王子は会議を終了することにした。
「それでは申し渡し内容の擦り合わせを致しましょう。それが済み次第、子爵を呼ぶと言うことで」
「うむ」
「では、皆、解散して良い。御苦労だった」
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王子たちが子爵への通告の準備を始めると、随行員たちは王都に帰る準備のために、宿屋の各自の部屋に戻った。
ベアトリクスはアデリーヌと共に自分たちの部屋に入り、アデリーヌが扉を閉めた途端に、両手を握って小声で快哉を上げた。
「んーっ、痛快! さすが、我らがユーキ殿下でしたわね!」
「全くですね、お嬢様!」
「あの姿絵屋の看板野郎、見え透いた出鱈目を並べた挙句に自分は信用するに足りない男だって言わされて、その上、何を言ったか憶えてないって自分から白状したのよ。『愚か者』はどちらよ! あの時の周りの連中の情けない顔と言ったら!」
「お嬢様、私、顔がにやけそうになるのを我慢するのがもう苦しくて苦しくって、堪りませんでした」
「私もよ! それに比べて、敢えて責めないユーキ殿下の器の大きさと堂々たるあの態度! 竜蠅と飛竜ぐらいの違いはあってよ!」
「あいつらが、お嬢様の尻馬に乗ってユーキ殿下にどんどん靡いていくあの場面を思い出しただけで、私、白パン三つ軽くいけそうです」
「私は黒パンでもいただける気がするわ」
「お嬢様に黒パンなんてとんでもない。それもこちらへいただきます」
「私が食べるものがなくなるじゃないの。まあいいわ。帰ったら、スーやウィルヘルムのおじさまにたっぷりとお教えして差し上げましょう。ああ、ユーキ殿下が隠し部屋を暴かれるところ、拝見したかったわね。残念……」
「私も無念です。お嬢様、この際、そこはクルティスさんにお尋ねして、適当に作っちゃいませんか?」
「そうね! それがいいわよね。その場面が無いと、お話が盛り上がりませんもの。ああ、スーに話すの、楽しみ! とっても楽しみ!」
「とても良いお土産話になりますわね、お嬢様」
「本当にそうね! では、帰り支度を急ぐことにいたしましょうか」
「はい! 畏まりました」
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別の部屋では、イザーク・アルホフ卿が従者を前にして椅子に座って考え込んでいた。
「……」
「……」
「……」
「……若様」
「……馬鹿正直で、修行好きの糞真面目。世間知らずで融通の利かぬ、まだ子供の堅物王子。そう言われていたし、私もそう思い込んでいたのだが」
「はい」
「事件の解決に全力を尽くし、その上で場が荒れぬように相手を立てて丸く収めて見せる。あれでは、どちらが正使かわからんではないか」
「はい。現場で重大な発見をなさっても傲られることなく、若様の落ち度を咎めるどころかお手柄を忘れぬようにとお慰めを下さって。私は不覚にも涙を零してしまいました。その上に、御自身のことより庶民を思い、子爵夫人を守られて。子供どころか、私には、最後は正副使殿下よりも大人に見えました」
「……そうだな。恰も人々を真夏の陽射しから木陰に庇う大樹のようだった」
「若様、このままでよろしいのでしょうか。確かに正使殿下の方が陛下にお血筋が近くはありますが……」
「だが、一度仕えた相手からそう容易く離れるわけにもいくまい。忠義にもとることはしたくない」
「ですが、お仕えになる相手を間違えられてはお家の存亡にも関わりかねません」
「……わかった。戻ったら、父上母上に相談してみよう」




