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風の国のお伽話(改稿版)  作者: 花時雨
第四章 若者たちへの試練

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第六十八話 潜伏偵察

前話同日


 ネルント開拓村から領都に偵察に来ていたマットとライナーは子爵邸に見慣れない豪華な馬車が入るのを見て、顔を見合わせた。

 偵察の拠点としている宿屋の部屋の窓から引き続き邸を監視していると、慌ただしく人が出入りしているのが見えた。何があったのだろうか。

 暫くすると人の動きが止まったが、一時間ほどすると執事や奉公人と思しき者たちがまた盛んに出入りしだした。昨日までとは全く違う。そのうちに代官ニードが出てきて、肩を怒らせながら通りを急いで歩いていく。あっちは衛兵の詰所や傭兵ギルドのある方向だ。


 マットはライナーに見張りを続けるように頼むと、部屋を出て階下に降りた。一階の食堂に宿の主人がいたので、そっと近寄って尋ねてみることにした。


「表が騒がしいようだけど、なにかあったのか?」

「子爵様が王都から戻って来られたようだな。うちの者に様子を見に行かせたんだが、まだ帰ってこない。何かわかったら、教えてやるよ」


 主人は顔を(しか)めて答えた。もっと話をしたくはあったが、今はまだ憶測しかできない。無駄に主人の時間を潰しても仕方がない。マットは大人しく部屋に戻ることにした。


「わかった、よろしく頼む」


---------------------------------


 マットとライナーは十日ほど前にこの宿に来た。

 この宿は領都の一番の大通り沿いにあり、子爵邸から何十ヤードか離れた所に立っている。三階の通り沿いの部屋からは、窓の横から斜めに見下ろせば何とか子爵邸前の様子がわかる。通りの反対側の建物は低くて覗かれることは無く、ましてや子爵邸から逆に様子を見られる心配はない。邸の動静を観察するには絶好の場所だ。


 宿を取る際に宿屋の主人にケンから渡された手紙を見せると、何も言わずにこの部屋に案内された。部屋に入ったら主人が扉を静かに閉めて言った。


「あんたたちの事は聞いている。心配するな。俺以外のこの宿の人間についても余計な心配は無用だが、不必要なことは言わないように注意しろ。いいな?」

「……ああ」

「情報収集だが、素人は動き回らずこの部屋からの観察に徹しろ。毎日続けて観察していれば、何か大きな変化があればわかるようになる。もしそれだけで不満なら、一階の食堂兼酒場で飲んでいる連中の雑談に入るぐらいなら、しても良いだろう。聞くだけだぞ。迂闊に喋るな。素人が派手に動くと、すぐに露見するからな」

「……わかった」

「邸に近寄らないとわからないような情報や街中の噂話とかは、こっちで集めているから教えてやる。いいか、絶対に無理はするな。わかったな?」

「ああ、わかった。済まない」

「それから、宿泊料もいらない。滞在費の心配は無用だ」

「いいのか?」

「ああ。構わん」

「何でそこまでしてくれるんだ?」

「俺の方こそ知りたいよ。俺の雇い主とお嬢様の御意向だが、全く大した気に入られようだよ。お前さんたちが何をやったのかは聞かないがな」


 主人は嘆息し、それ以上は何も教えてくれなかった。良く分からない不思議な話だが、有難いことなのでそのまま受け取ることにした。多分、ケンが何かやらかしてくれたんだろう。


---------------------------------


 マットが部屋に戻ってまた暫く子爵邸を観察していると、ニードが戻ってくるのが見えた。さらに、衛兵たちが二人、三人と邸に入っていく。普段には無いことだ。出兵の準備かも知れない。


 二人でさらに邸やその前の通りをじっと見ていると、扉を叩く音がした。マットが緊張しながら扉を開くと、宿の主人が立っていた。

 主人は部屋に入ると扉を閉じ、二人に近付いて小声で言った。


「王都からお偉い人が大勢来るらしい。子爵の邸で泊め切れないかもしれないので、あっちの宿に何人かを泊める準備をするようにと、命じられたそうだ」


 主人はそこでさらに声を小さくして、二人をじろっと見ながら続けた。


「どうやら監察使らしい。『どこかの連中が王都に訴え出たらしい』という話が流れ始めている」

「そうなのか」

「ああ、それから、下に来た方が良い。傭兵ギルドから来た連中が飲んでいるんだが、妙な依頼が出ているようだ」

「妙な依頼?」

「そいつらに直接尋ねてみるんだな。こっちはこっちで衛兵に伝手(つて)があるから当たってみる」


 そう言うと主人は部屋を出て行った。



 少し時間を空けてマットが食堂兼酒場に降りると、何人もの傭兵が酒を飲んで雑談をしている。毎日ここに顔を出しているうちに見知った連中がいるので、話し掛けてみることにした。


「よう、昼間から御機嫌だな?」


 すると一人の男が顔を向けてつまらなそうな声で返事をした。


「ああ? 御機嫌じゃねえよ。毎度毎度のやけ酒よ」

「愚痴話かい? どうしたんだ?」


 マットが連中の間に椅子を引き寄せて座ろうとすると、中の一人の女が言ってきた。


「そんなとこだけどね。話を聞きたいなら、一杯奢ってよ」

「ああ、いいとも。おーい、ここの全員に良いビールを一杯ずつ。俺もだ」


 それを聞いて、湿気(しけ)た顔をしていた連中の顔が揃って明るくなった。現金なやつらだ。大きな円卓の奥の席に座っている、一番年嵩の男がマットに向かってニカッと笑って「ありがとよ」と礼を言うと、愚痴話を再開した。


「前にも言ったろ? ここんところ、街道を行き来する商人がめっきり減って、護衛の美味しい依頼が減っちまってよ。使いっ走りとか、どぶ浚いとか、畑荒らしの兎狩りとか、苦労ばっかり多くて報酬の少ない依頼ばっかりでよ」

「景気が悪い話だな」

「そんで、そんな依頼受けても仕方ないから、毎日こうやって安酒ばっかり飲んでるんだわ」

「今日はどうだったんだ? 妙な依頼があったらしいとか、あの親父が言っていたが」


 マットが探りを入れてみると、女の傭兵が長い髪の毛の先をいじりながら無造作に答えた。


「ああ、けちな依頼だわよ。ここの代官からの依頼でさあ、衛兵の人数が足りないから、うちらに衛兵のふりをして、一緒にどっかの村に行って欲しいんだと」

「何しに行くんだ?」

「わかんない。行けばわかるって。盗賊団の捕縛かとも思ったけど、この領内で盗賊団なんて、とんと聞かないしね」

「へえ。でも、どこか知らねえけど、行くだけでいいなら楽な仕事じゃねえか」

「それが、依頼料がね」


 女が言うと、傭兵たち全員が顔を見合わせて、一斉に溜息を吐いた。


「安いのか?」

「二十リーグ」

「結構な額じゃねえか」


 マットが訝しげに言うと、女は顔の表面に冷たい笑顔を張り付けて応じた。


「三日でね」

「三日掛かりの仕事か。そりゃあ、安いな」


 マットが同情すると、横から別の男が付け加えた。


「しかも、全額後払いときたよ」

「え? 普通、半金前払いじゃねえのか?」


 そのぐらいは傭兵でなくても知っている。マットが尋ねると、また女が答えた。


「ええ、そうよ。ギルド経由ならね。でも、急ぎで手元に現金がないんだってさ」

「えらくしみったれた代官様だな」

「領主様はどこの店でもツケが利くからね。月末の一括払いだから、現金は手元に置かないんだろうさ」


 女が肩を(そび)やかすと、また横から男が口を挟んだ。


「半金前払いでないとギルドは受け付けないから、ギルドを通さない自由依頼扱いでその額だ。もし何かあって、死んじまったらタダ働きだ。馬鹿馬鹿しくって、誰も請けねえよ」

「でも、どっかの村へ行くだけだろ?」

「ふん、そんなこと、わかるもんか」


 男が鼻先で(わら)いながら言う。すると他の連中も口々に文句を言いだした。


「あの代官、あっちこっちで税を絞り上げて暴れ回って、嫌われまくってんだろ。またどっかへ強請(ゆす)りに行くんだろうさ。そこで揉め事になったら、暴力沙汰に巻き込まれかねねえ」

「衛兵が足りないから傭兵で数合わせしようとしてんのさ。衛兵が行くのを嫌がるような仕事でその金じゃ、話にならないわね」

「あいつ、ギルドにいた連中に五倍の額を吹っ掛けられてたぜ」

「おいらは十倍でも嫌だね。後払いだぜ? あの男がまともに払うわけないだろう」


 喋り出すと止まらない。次から次へと不平不満が飛び出してくる。


「で、何人ぐらい集めてたんだ?」

「多ければ多いほど、って言ってたけど……そんなこと聞いてどうするんだ?」


 マットがさり気なく人数を尋ねると、そこまで憂さを晴らすために大声で喋っていた男が、ぴたっと話を止めて真顔を向けてきた。マットは知らず知らずのうちに乗り出していた身を慌てて反らせて両手を前で振った。


「いや、どうもしない。もし美味い話で枠が余ってるなら、行ってみようかとかちょっと思っただけだ」

「お前、ギルドに登録してたか?」

「してないけど、自由依頼なら、登録してなくてもいけるんだろう?」

「ああ、そうだ。行くなら、募集は今日中だ。明日の朝に出発だそうだ」


 男がまた緊張を解いて答えると、年嵩の男が釘を差した。


「おい、変な事を教えるな。止めとけ、止めとけ。素人が危ないことに手を出すな。それこそ、報酬を踏み倒されても文句も言えないし、誰も助けないぞ」


 これ以上の話を引き出すのは無理だろう。年嵩の男の忠告を受けて、マットは切り上げることにした。


「ああ、確かにそうだな。止めとくよ。ありがとよ。じゃあな」


 そう言って席を立った。彼がその場を離れて階段を登っていくと、傭兵たちは話を再開した。


「あいつ、最近ここで良く見掛けるけど、何やってるんだ?」

「さあなあ」

「やたらと人の話を聞きたがるから、情報屋か何かじゃねえか?」

「どこかの貴族の手の者とか?」

「それにしちゃあ、格好とか田舎臭いぞ。体付きは農民にしか見えん」

「わからないわよ。情報屋なんてそんなもんだから。この領が関税を上げてから街道の通りが悪くなってるから、様子を見に送り込まれたのかもしれないわ」


 だが詮索が一周すると、年嵩の男が肩を聳やかして言った。


「何だって構わんさ。愚痴を聞かせただけでタダ酒を飲ませてくれるなら、大歓迎だ」

「違いねえな」


 円卓を囲んだ全員が頷くと、奢られたビールを喉に流し込んだ。



 マットは部屋に戻った。

 必要な情報はほぼ得られた。兵力はわからなかったが、しつこく尋ねて疑われては良くない。行先は間違いなく開拓村だろう。監察使が来ると知って慌てて兵を出すからには、訴え出た自分たちの所以外はありえない。明朝出発なら、明後日には村にやってくる。それまでに知らせを届けなければ。


 身支度を整え、軽食と水、それに夜間用の松明だけを背嚢に入れて準備をしていると、扉が叩かれた。慌てて背嚢を隠してから応じると、入って来たのは宿の主人だった。


「兵力は、代官本人を除いて衛兵が十六人だそうだ。傭兵はまだ決まっていないが、あの条件では十人も集まるまい。多くても五、六人だろう。行先は隊員はまだ聞かされていないらしいが、もう考えるまでもなかろう。出るなら裏口から出ろ。暫くの間、そちらに人が近付かないようにしておく」


 主人はそれだけを言うと背中を向けた。


「わかった。いろいろ済まない」


 マットが礼を言っても相手は振り返らなかった。


「気にするな。それよりも幸運を神様と四精に祈ることだな」


 そう言いながら出口に向かい、軽く一度手を振ると扉を閉めて去って行った。


 

 隠した背嚢を取り出し、もう一度中身を確認する。後事をライナーに託すと、マットは主人に言われたように裏口から宿を出た。


 一つ深呼吸をして気を静めてから通りをゆっくりと歩きだす。気は急くが、変に目立ってニードの手下に見咎められたら大変だ。

 以前にノーラさんに言われた要領を思い浮かべた。教わってから今日まで毎日何度も何度も口に出して唱えて覚え込んだものだ。読み書きができれば書き付けて持ち歩けたのにと思ったが、村で文字が読めるのは村長一家と他には数人しかいないのだから悔やんでも仕方がない。只管(ひたすら)繰り返して頭の中に刷り込んだ。


 領都の中の人通りが多い所では目立たないように、『人の流れに乗る、抜かない、邪魔しない』を心の中で唱えながら歩く。

 街道に出て、人目が無くなったら早足にする。それでも走ったりはしない。走れば、もしも転んだ時に怪我をする恐れが強くなるし、それに一日掛かりの長丁場なのだ。体力を消耗して結局は村への到着が遅くなるのがわかりきっている。

 街道際に良い水場があるところでは、必ず水を飲み革袋にも補給して、暫く休憩することも忘れない。ずっと歩き通すことはできないのだから、途中で潰れてしまわないようにするのが肝心だ。どうせ今日は夜通し歩くことになるだろう。

 松明は麓のフーシュ村から見られない場所に来るまで灯さない。幸い今日は望月の数日前、日暮れてすぐに月明かりがある。


 大丈夫、それもこれも訓練した通りにやればいい。この知らせを届けることが俺の役割だ。このために偵察班としてライナーと二人で足を鍛えて準備してきたんだ。俺は俺の役割を果たす、それだけだ。

 マットは心の中で自分に言い聞かせながら歩いた。



 領都を出て人通りが減り、少し気持ちが落ち着き掛けた時、前方から二騎の衛兵がこちらに向かってくるのが見えた。一人は男、もう一人は女だ。街道の巡回を終えて領都に戻るところだろう。


 マットは緊張を隠し見咎められないようにするため、少しだけ視線を落とした。歩調は変えないように気を付ける。だが、意識すればするほど(かえ)って足運びがぎこちなくなる気がする。

 ある程度近付いたところで道端に寄り、頭を下げてやり過ごすことにした。これは宿屋の主人が教えてくれた。代官が連れてきた連中が衛兵に加わってからは領民の皆がそうしているらしいから、怪しまれることは無いはずだ。


 蹄音(つまおと)が近付いてくる。頭を下げたままじっとしているマットの視界の中に二頭の馬の脚が入ってきて、通り過ぎていく。かと思ったら、目の前で止まった。

 どういうことだ。だが、変に動いてはいけない。困惑したままじっとしているマットの耳に衛兵たちのやり取りが入ってきた。


「どうした? 衛兵長の点呼に遅れるぞ」

「ええ、ちょっと。先に行ってくれない? すぐに追い付くから」

「構わんが、遅れるなよ。ここのところ、衛兵長も機嫌が悪いからな。遅れたらきつく叱られるぞ。巻き添えは御免だ。代官だけでも腹一杯なのに、衛兵長からも剣突(けんつく)を喰らわされたんじゃあ(たま)らない」

「わかってるわ。大丈夫」


 そして一頭が動き始め、通り過ぎて行った。その蹄の響きが遠くなった頃にマットの頭の上から声が降ってきた。


「ねえ、あなた」


 マットの体がびくっと動いた。動揺してはならないと思っても止められない。だが、衛兵にこんな風に声を掛けられたら誰でもそうなるだろう。大丈夫、まだ大丈夫だ。


「へえ。何でしょうか」


 声が震えそうになるのを懸命に抑える。何だというのだ。何か怪しまれることをしてしまったのか。マットは頭の中でノーラに教わったことを数え上げながら返事をした。


「あなた、ネルント開拓村の者よね」

「へえ、そうっす」


 『できるだけ嘘は()かないこと』。ノーラさんが、もしもの時の心得として言っていた。嘘を吐くと、どうしても態度が不自然になる。それで怪しまれた時にはその嘘を守るために別の嘘を吐かなければならなくなる。辻褄が合わなくなって嘘が露見したら疑いが一気に深まり、取り調べが厳しくなる。


「領都には何の用事で?」

「知り合いんとこに、野暮用っす」


 これも嘘ではない。宿屋の主人は今ではもう知り合いだ。中身は曖昧にしておけば、次に何を言っても食い違いにはならない。


「そう」


 そう言ったきり、女衛兵は黙った。一息、二息、時間が流れる。沈黙に耐え切れず、マットはつい、顔を少し上げて衛兵の顔を見た。

 その頬に傷はない。髪の色も違う。ニードと一緒にマーシーさんを六尺棒で殴り付けたあのボーゼと呼ばれた女ではない。顔に見覚えがある。確かあの時に、衛兵長たちと一緒に止めに入った中の一人だ。ボーゼに後ろから組み付いて棒を振れないように抱きかかえてくれた女衛兵だ。

 マットがそう気が付いて少しほっとしたところにまた問いが降ってきた。


「ねえ、あの男はどうなったの?」

「あの男?」

「わかるでしょ? ほら、代官に楯突いて、その、棒打ちにされたあの男よ」


 問う顔が強張り少し蒼くなっている。

 マーシーさんのことか。何の探りを入れられているのだろうか。どういうつもりか分からない。だが、分からないのだから、ノーラさんの言葉通りにした方が良い。嘘は吐かない。


「へえ、足を折られて暫く歩けやせんでしたが、しばらく前からは起き上がれるようになって、今は何とか松葉杖で歩けるようになりやした。おかげさんで」

「そう」


 マットの返事を聞いた女衛兵の顔が一度に緩んだ。血色が戻り、「ふぅっ」と大きく息を吐いている。


「それは良かったわね」


 そう言うと周囲を見回して誰もいないことを確かめ、馬上から身を屈めて顔をマットに近付けて囁いた。


「大事にするように。早く良くなることを祈ってるわ」


 そして脚で馬の腹を圧して合図を出し、速歩で領都の方へ去って行った。

 怪しんでいたのではない、心配してくれていたのだ。マットは安堵の息を吐きながら見送った。

 その後ろ姿が見えなくなるとまた村を目指して街道を歩きながら、今の出来事を反芻した。


 衛兵の中にも暴力を嫌い、自分たちに同情してくれる者もいるのだ。もしかすると、ニードに対して内心では反感を抱いているのかもしれない。それでも、衛兵である以上は代官に面と向かって反抗することはできないのだろう。


 今回の出兵に今の女衛兵は参加するのだろうか。できればそうして欲しくない。もし参加したとしても、自分は戦闘班ではない。直接に戦うことはない。

 けれど、もしマーシーさんのことを心配してくれたあの女衛兵が俺たちの仲間の誰かの手に掛かって死んでしまったら。それを知った時に自分はどう思うだろうか。どんな気持ちになるだろうか。考えるだけで嫌なもので胸が一杯になり苦しくなってくる。それでも、今更止めるわけにはいかない。もう後には引けないのだ。


 マットはノーラが言った『覚悟』という言葉の意味を噛み締めながら村への道を歩き続けた。


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