第百五話 国王への直談判
前話翌朝
国王と王妃は二人揃って困惑していた。
昨日、ピオニル子爵領の臨時領主を引き受けたユーキが今朝早くに面会を願い出てきた。今日の午後に任命を控えているというのに、しかも『大至急、国王陛下と妃殿下に内密に相談に乗っていただけないだろうか』とのことだ。
如何にも深刻そうに思えるが、何事であろうか。
家に戻って両親に反対されたとか、一晩経って決心が揺らいだとかではあるまいか。しかし領に関することであれば、王妃に同席を望んだりはしないだろう。一体どういうことであろうか。
二人は午前の政務のうち急ぎのものを手早く済ませて国王の執務室に集まると、ユーキを呼ぶように侍従に命じた。
「ユーキのやつ、何事であろうか。臨時領主は荷が重い、やっぱり止めたいとか言い出さぬであろうな」
「ユーキはそのような、前言を簡単に翻すような者ではないと思いますわ。マレーネもユリアン卿も反対はしなさそうですし」
「では、別件か。お前は、何か心当たりは無いのか?」
「いいえ。何事かは、妾も思い当たりませぬ」
「厄介事でなければ良いのだが……」
二人が苛々しながら待っていると、ほどなく侍従がユーキの来室を告げた。
「ユークリウス殿下がいらっしゃいました」
「おお、早く入れろ」
国王の声に応じてユーキが入ってきた。だが、いつものユーキとは様子が違う。
背は丸まり頬は赤く、扉の所でもじもじしていたかと思うと、同じ側の手と足を同時に動かしてぎこちなく歩いてきて二人の前に立った。見るからに緊張している。
「ユークリウス、来たか。どうした」
国王が声を掛けると、「こほっ、こほっ」と咳払いを繰り返す。
「お、お早うございます」
「挨拶は良い。何事だ」
「はい、陛下。じゅつ、実は、お願いしたいことができまして。昨日の、おこた、お言葉に甘え、参りました」
「う、うむ、何だ。言うてみよ」
朝の挨拶の声も用件を告げる声も硬く高い。口が乾いているのか滑舌も悪い。それほどまでの重大事か。
驚く国王にも緊張が移り、応じる言葉が縺れそうになる。
「はい、二つあります。一つは、陛下が昨日の御裁断を件の村にお知らせになられる際に、御使者にその村の住人宛の私信を託したく、そのお許しを頂きたいのです」
だが、ユーキが言い出したことを聞いて、国王の緊張は一気に緩んだ。横で王妃も安堵の息を大きく吐いている。
「何だ、そんな事か。それなら儂に言うまでもなく、使者に直接頼めばよかろうに」
「いえ、陛下の御名代を無断で私事に使うのは良くないと思いまして」
「お前は相も変わらず糞真面目だのう。そんな些事、気を遣うことも無かろうに。ピオニル領の黒縮病では果敢に焼却を独断したくせに、成長しているのかしていないのか、全くわからんな」
「畏れ入ります」
「まあ良い。おい、手配を頼む」
やれやれとばかりに首を振りながら国王が控えていた侍従の一人に向かって言うと、侍従は頭を下げて了解を示した。
「それで、もう一つは何なのだ? 同じような詰まらんことではあるまいな?」
国王に催促されて、ユーキはいきなり不自然に反らんばかりにまで背を伸ばした。
「えーと、ゴホン、私には詰まらなくはないのですが、オホン、陛下と妃殿下にとっては詰まらない些事かも知れません。エホン」
そして顔を赤らめ、咳払いを繰り返す。手はそわそわと落ち着きなく動き続ける。どうやら次の話が本題らしい。
「む? 何だ?」
「ゴホン、はい、あの、コホン、えーと、実は」
「早く申せ」
「はい、あの、できればお人払いを願わしく……」
「それほどの重大事か?」
「えーと、オホン、重大事ではないかもしれませんが、人前では申し上げにくく」
「余人に聞かれたくない? いったい何事なのだ」
どうやら私事らしい。国王は訝しげにしながらも、侍従侍女に合図した。彼らも不審げな顔をしてやり取りを聞いていたが、合点がいかないながらも頷いて次々と部屋を出て扉が閉まった。
「さあ、これで良かろう?」
「はい、有難うございます。実は、その、えーと」
「まだ言い難いのか。まあそこに座れ」
「はい」
呆れ声の国王の命に従い、ユーキは応接用の長椅子に移動して浅く腰を掛けた。国王と王妃も移動してきて、ユーキと向き合って座る。
「深呼吸せよ」
「はい……」
「もう一度だ」
「……」
「少しは落ち着いたか?」
「はい」
「では、思い切って言え」
促され、ユーキは思い切り息を吸うと、両膝に手を置き、頭を下げながら言った。
「実は、妃を娶りたく、お許しください!」
聞いていた二人の目が点になった。
国王は無言で固まっている。王妃は扇子を拡げて口元を覆っているが、こちらは口が開いたままになっているようだ。
「いえ、今すぐということではなく! いずれではありますが、御許可と御相談をお願いしたく参りました!」
ユーキは言い切ると、頭を下げたまま口を一文字に結んで、目だけで二人の方を見上げている。その頬は真っ赤になったまま、いやもう顔全体から首まで赤を通り越して紅に染まっている。
国王と妃の頭がゆっくりと動き出した。首から上だけを横に向け、互いに顔を見合わせる。目と目で頷き合ってユーキに向き直ると、国王がなんとか問い返した。
「『き・さ・き』と申したか?」
「はい!」
瞬時も経ず、ユーキが即座に答える。
「結婚したいと申すのか?」
「はい!」
「お前、いったい、いつの間に……相手は、どこの家の令嬢だ?」
「いえ! 貴族家の令嬢ではありません!」
「では誰なのだ?」
「菫さんと申します! 花園楼と言う妓楼の禿です!」
「か、むろ……」
また国王が絶句した。
すると替わりに王妃が尋ねてきた。
「ユークリウス、声を下げなさい。頭を上げて。その者と、好き合うておるのですか?」
「はい」
「本当ですか?」
「はい」
「妃と聞きましたが、側室ではなく正室、正妃なのですね?」
「はい」
「事情を話しなさい」
「実は、幼い時に出会い、ひと目で好きになりました。その後は長らく会えなかったのですが、昨年漸く再会し、私の想いを受け入れてもらえました。その後は手紙を交わして互いに心を確かめ合ってきましたが、ピオニル領に赴任すると当分会うことも手紙を頻繁に交わすこともできなくなると思い、この際、将来妃になってくれるようにと昨日に望みを告げ、受けてもらった次第です。私の、いえ、二人の想いは確かなものです」
ユーキが目を伏せか細い声で羞かしそうに語ると妃は目を細めて頷いた。
「……そうですか。昨年に。全く知りませんでした」
「内緒にいたし、申し訳ありません」
「それは構いませんが。それまで、幼い時からずっと想い続けていたのですか。良く隠し通しましたね……」
「はい。メリエンネ様には見破られましたが」
「そう。それにしても、また会うことができたとは、幸運でしたね」
「はい。再会が叶うとは思っていなかったのですが、街角で出逢うことができました。本当に偶然で、神と四精の御恵と感謝しています」
「そうですか。それで、想いを告げたと」
「はい」
「そしてその後も愛を確かめ合っているのですね」
「はい、想いを込めた手紙を何度も交わしました」
ユーキの答えのひとつひとつに、妃は何度も頷く。その微笑みはとても嬉しそう、いや、楽しそうだ。すると国王がまた立ち直って気遣わしげに尋ねてきた。
「ユークリウス、世の中には、傾城、傾国ということがある。言いたくはないが、妓楼の娘ならば、その者の手練手管に掛けられているのではないか?」
「いえ。そのようなことはありません。先方から、何かを求められたことは一切ございません。そもそも、菫さんはまだ妓女ではありません」
胸を張って答えるユーキに国王は「むぅ……」と唸ったが、問いを続けた。今度は声が厳しい。
「もし儂が駄目だと言ったらどうする? ピオニル領を投げ出すとでも脅すつもりか?」
「いえ、そのようなことは致しません。領政に精一杯努めて栄えさせ、陛下にお返しした後にお許しを得て王族からお放ちいただき、庶民となって菫さんの所に参ります」
「そこまでか……」
国王は言葉に詰まり掛けたが、気を取り直すとユーキに向かって身を乗り出した。
「そうなる前に、お前の妃を儂が決めると言ったなら?」
ユーキは肩を一瞬びくりと動かしたが、胸を張ったまま堂々と答えた。
「陛下に従います」
「何と?」
「私は生涯、菫さん一人だけを愛し抜きます。また、言うまでもなく、陛下の命には従います」
「意味がわからん。どういうことだ?」
首を捻りながら訝しげに問い返す国王に、ユーキはぎこちないながらも笑顔になって答えた。
「私の成人の儀の際に、陛下は『妃を愛せよ』と諭してくださいました」
「確かに言ったが、それがどうした?」
「であれば、私が愛せぬ者を妃にせよと陛下が命じられるはずがない。私は陛下を心から信じ奉っております」
「それは……」
国王がポカンと口を開けたまま、三度言葉を失った。
王妃は二人のやり取りを黙って聞いていたが、国王の呆け顔を見てお腹に片手をやって笑い出した。
「ホホホホホ……」
なかなか止まらない笑いに、国王も釣られて笑う。
「ハハハハ……」「ホホホホ……」
暫く止まらない二人の笑いにユーキが当惑していると、王妃が笑顔のままで判定を下した。
「これは陛下の負けですね。お認めなさいませ。陛下のそのお口、久々に拝見しましたわ」
「いや、これは参った、降参だ。ユーキ、笑って済まなかった。嘲笑うておるわけではない。まさかお前がと思うと、何だか嬉しくなってしもうてな。そうか、そうか、そういう相手がおったのか」
「妾もです。笑ってごめんなさいね、ユーキ」
笑いがようやく収まると、国王と王妃はユーキに笑顔で言った。
「ユーキ、勿論相手の意向は確認せねばならんが、真に好き合うているのなら、是非もない。エルフと依木を割くような真似は、儂にはできんわい」
「ユーキ、このことは両親やお祖母様もお認めに?」
「いえ、両親にも祖母にもまだ報告しておりません。菫さんと再会したこと、手紙を交わしていることは知っているようなのですが」
「何だと? 全くマルガレータもマレーネも儂らに秘密にしおって。彼奴等め、さては儂らを驚かすつもりだったな。全く油断ならん連中だ。だが、ユーキ、なぜ儂らに先に?」
「はい、王族の婚姻には何よりもまず陛下と妃殿下のお許しが必要と思いまして。両親には知らせずに参りました」
「何とまあ。お前らしいが、どこまで真面目なのか……」
「陛下、嬉しいことではありませんか。陛下と妾をそこまで大事に思ってもらえるとは」
「うむ。マレーネたちの呆気に取られる顔が目に見えるようだな。うむうむ。そうだ、そうだな。うむ、良くやった、ユーキ」
満足そうに頷き右の眉毛を二度上げて何事かを考えている国王に、ユーキはまたもじもじとしながら願い出た。
「陛下、それで相談させていただきたいことが」
「何だ?」
「菫さんは庶民、それも妓楼の生まれです。王族と結婚するのにどう事を進めれば良いか……」
「ああ、そんなもの、どうとでもなるわ。心配するな」
心配そうにするユーキを、だが国王は一笑に付した。横から王妃も楽しそうに口を出す。
「ユーキ、妓楼出の者を側室ではなく妃とするとなると、貴族や国民からいろいろ言われることになるでしょう。その覚悟はできているのですね? もう、後戻りはできませんよ?」
「はい! 誰に何と言われようと、菫さんを護ります!」
「むぅ……この部屋、熱いな……窓は開いている筈だが……」
ユーキが叫ばんばかりに力を込めて断言すると、国王は左手で襟元を拡げ、右手で顔をパタパタ扇いでみせた。王妃はそれを「陛下、お静まりを。ユーキも静かに」と軽く窘め、そして宣言した。
「ユーキ、その言葉、確と聞きました。後は妾に任せなさい。その菫とやら、心根が確かなら適当な貴族家の養女にさせ、王城で侍女見習として修行させましょう。其方に相応しい者となるよう修養を積ませ、もう良いとなれば其方に嫁がせましょう」
王妃の提案にユーキは驚いた。王城の侍女やその見習は、なまじなことではなれない、貴族令嬢の出世街道の入口だ。妓楼出であっても王家に仕える者となれば、そうは悪口も言えないだろう。格別の配慮である。
「お心遣い、有難うございます」
「その菫、今、いくつですか?」
「十三です」
「ならば成人の儀まで暫しの間はありますが、急いだほうが良いでしょうね、陛下」
「うむ、どこぞの貴族に知られると、妙な邪魔が入るやも知れん」
「ええ、今日中に手を打ちます。その者の心中をきちんと確かめ次第こちらに引き取って、マレーネたちにもこちらから知らせます」
王妃が手筈をすらすらと述べる。ユーキは急いで口を挟んだ。
「妃殿下、その際花園楼には私も共に参り、彼女の側におりたいのですが」
だが、王妃はきっぱりと否を言った。
「ユーキ、その気持ちはわかります。ですが、なりません」
「何故でしょうか。私は、何者からも彼女を護ると誓いを立てたのです」
「これはそれとは別の事です。良く考えなさい。いかに愛しくても菫の心は菫だけのもの。違いますか?」
「いえ」
「王族の正妃は格別に大変なものです。『愛さえあれば』などと生易しくはいきません。相当の覚悟が必要です。もし仮に菫がそれには耐えられぬと正妃ではなく側室を望んでも、客と妓女でおりたいと思っていても、貴方がいてはそうは言えますまい? 貴方が側におれば、何を言っても貴方に気を遣ったと思われてしまうのです」
「それはそうかも知れませんが……」
「それに王家の使いに自分の心を告げるのに、貴方の支えが必要などと、弱いことでは王子の妃は務まりません。支え合うとは凭れ合うのとは異なります。互いが一人で立ててこそ、相手が躓いた時に支えられるのです。それとも、菫とは、常に支えを欲しがる情けない娘なのですか?」
「いえ、そのようなことは決してありません」
「そうでしょうね」
そこまで言って、王妃は一度口を閉じた。そしてユーキに微笑み掛け、優しく諭した。
「ユーキ、その娘を心から愛しているのでしょう? 本当に信じているのでしょう? それならば、自分一人で、自分の言葉で、自分の道を選ばせてあげなさい。例えどれほど愛していても、相手を自分の思い通りにしようとしてはなりません。愛と支配は全く異なるものなのです」
「わかりました。お教え、腑に落ちました。私は彼女を信じております。よろしくお願い申し上げます」
ユーキは得心したのだろう、今度は確りと強い口調で答えた。
国王はその様子を満足げに確かめて、笑顔で楽しそうに言葉を添えた。
「心配するな、ユーキ。お前の選んだ娘に間違いはない、儂はそう思うぞ。気は揉めるだろうが儂らに任せて、領の方の準備に全力を尽くしてくれ。ああ、マレーネたちには、こちらから知らせるまでは決して何も言ってはならんぞ。迂闊に広まるとどんな支障が起きるかもしれんからな。こちらの準備が整うまでは黙っていよ。必ず、だ。今日ここへ来たことを何か尋ねられたら、そうだな、領政についていろいろ相談していたと言っておくのだ。良いな?」
「承知しました。有難うございます。何卒、よろしくお願い致します」
「うむ、首尾は追って知らせる。下がって良い。また午後に任命の場で、な」
「はい、失礼致します」
そう国王に返事をして胸を張って立ち上がり確かな足取りで出て行くユーキは、入ってきた時より随分と背が高く見えた。
ユーキが去って扉が閉まると、国王は妃に向かって慨嘆した。
「何とまあ、あのユーキが……まだ十八だろうに」
「そうですわね。まだ十八と言えば、陛下はまだまだ遊び盛りの始め頃でしたわね」
妃に冷たく返されて、国王は「オホン」と咳払いをした。
「何だ、早くに身を固めて政に精を出してくれるなら、何も言うことは無い。国にとっても喜ばしい限りだ。だが、貴族の中には、ユーキを狙っていた娘共もおっただろうになあ」
今度の慨嘆には、妃も「ふぅ」と溜息を吐いて同意した。
「おりましたでしょうねえ。妾も幾人かの奥方から縁繋ぎをそれとなく相談されましたから」
「そうだったのか?」
「ええ、マレーネに全て素っ気なく断られましたが、こういうことだったのですね」
「してみると、その菫とやら、恨まれるだろうなあ」
「それは誰を娶っても同じです。少なくとも庶民には受けが良いと思いますわ」
「そうかな? 妓楼の禿だぞ?」
「ええ。身分を超えて燃え上がる恋……幼い頃に読んだお伽話の恋物語のようですわ……妾もこの齢になっても忘れておりません……」
王妃が両手を顔の前に組み、夢見がちに宙に視線を泳がせる。国王はその様子に身を引きがちになりながらも応じた。
「そ、そうか、ほどほどにな。しかし、まさかユーキが妓楼の娘を見初めて口説き落とすとは。この齢になっても、人とはわからぬものなのだな」
「あの子のことですから、真面目に直向きに想いを伝え続けたのでしょうねえ。ただ、花園楼というと、十年ほど前にショルツ侯爵の所の継嗣の事件があったような」
「そう言えば、そうだな。噂話が流れてきたが、酷いものだった。だが昔の話だし、先代のショルツもあの頃に無関係だと言っておった。何があっても問題なかろう」
「そうですね。先代は、夫人が体面を非常に気にして、ずっと否定して回っておりました。ですが、当代は武骨なところはあっても話はわかる者ですから、もし関係があっても大丈夫でしょう。一応こちらでも調べておきます」
「頼んだぞ。しかし、見事にやられたな。ユーキ、確かに成長しておる。認めざるを得んな」
国王が嘆くように言うと、王妃は開いた扇子を口に当て、楽しそうにくすくすと笑いを零しながら応じる。
「陛下のあのお口、マレーネの時以来ではありませんか?」
「全く、ユーキはマレーネには似ておらんと油断しておったが。何のことは無い、真面目な分、マレーネより質が悪い。よもや何年も経ってから反撃を喰らうとは思わなんだ。まあ良い。その分も加えてマレーネたちに仕返ししてやるとしよう」
そう言いながらにたりと笑い、国王は右の眉毛を上げ下げする、王妃も楽しげな顔を崩さない。
「あらあら。それにしても、複雑な事になる前に話してくれて良かったですわね」
「全くだ。結局のところ、恋とかいうものは、隠れてこそこそやっていては碌なことにならん。フェブラーも、ユーキのように堂々と言ってきてくれていれば、あんな面倒にはならなかっただろうに」
「過ぎた事を言っても仕方ありませんわ。結局、ユーキはマレーネたちが真っ直ぐ育てたという、それだけのことでしょう」
「それも認めざるを得んな。だが、この好機は逃さんぞ。マレーネめ、見ておれよ」
「あらあら。どうなることかしら」
国王は不敵に、王妃は面白そうに。二人の「ふ、ふ、ふ、ふ」という笑い声が部屋に響いた。




