➈最悪な朝食
***翌朝
「え…?」
私はエララの言葉に一瞬戸惑ってしまった。
「ですから、今日から朝食は食堂にて皆様とご一緒に取って頂きますので」
ここへ来てからはずっとこの部屋で1人食事を取っていた。怪我の事もあったし体調もすぐれなかったからだ。
回復したならば当然な事なんだけどね…
アラリオン様と庭園に行く時に会った後に城主のドリスタン様に面会させてもらい感謝とお礼を述べたが今の所他のご家族にはお会いしていない。
話によると奥様は10年程前にお亡くなりになられ、アラリオン様のご兄弟がいらっしゃると、お兄様のオリオン様とジュノー様だったと思う。
お父様のドリスタン様は人間の私にもとても優しく対応してくれてほっとしたが、多分ご兄弟はアラリオン様と似たような感じなのではないかしら…もしかしたら更に酷いかもしれない、少し気が重いわ。
でも私はお世話になっている身、断れない…
「ええ、これから朝食は皆様とご一緒させて頂くわ」
そろそろ回復してきたし国へ帰らなければ、その事もお話ししてみよう。ずっとお世話になりっぱなしも良くないし、何よりまた何か言われたら怖いわ…そもそも獣人の国に人間はいるべきではないのだから。
家族も多分…心配してるはず。
確かドリスタン様が、獣人国から帝国へと書簡を送る手続きをしてくれたと先日聞いた。それから数日たってるから既に私の家族には連絡が届いてるはず…なのに帝国からは何も送られて来ないのね。
可愛がられなかった訳ではないけれど、対して役に立たない私などいなくても変わりないのかしら…
家族から見たら私は異質な存在だろうし。
それにネリスの事も詳しく聞いてみないと。
エララの話しではネリスもだいぶ良くなってるみたいだし2人で帰れる様だったら早めにこの国を出よう、御者の事もあるし…。
「では、そろそろ朝食の時間ですので食堂までご案内致します」
「わかったわ、エララお願い」
恐怖心はあったがそれを無理矢理押し込めてエララに着いていく。
***
食堂に行くと既に全員が揃って私の事を待っていた。
「申し訳ございません、お待たせしてしまって」
私は慌てて謝罪する。
「おはようエイルリス穣、私達も今揃った所だから気にしないでくれ」
ドリスタン様が笑顔で席へと促してくれる。
「では、食事を取りながら息子達を紹介しよう」
既に兄弟達からの鋭い視線に気付きながらもスルーし席に着く。
不穏な朝食が始まる。
あぁ…早く食べて部屋に戻りたいわ…。
不安な気持ちを押し隠してドリスタン様へと微笑んだ
「私の右隣にいるのが長男のオリオンだ。」
食事を取りながらドリスタン様がご子息達を紹介してくれる。
「オリオンだ。まぁ、朝食以外ではまず顔を合わせる事はないだろうからな。あ、それともし城内で会ったとしても気安く声は掛けないでくれ!不快だからな、以上。」
オリオンはギロリと睨み付けながら言う。
ドリスタン様は呆れた顔をオリオンに向けつつ次に次男を紹介する。
「その隣にいるのが次男のジュノーだ」
「ジュノーです。もうだいぶ回復したみたいだし、そろそろ国へ帰れますよね。これが最初で最後の朝食になる事を切に願いますね、ふふ…」
満面の笑顔で言い放つ。
私は部屋どころか国へ帰りたくて仕方がなくなっていた…
ドリスタン様はジュノー様へ注意を促すが何事もなかったかの様に朝食を堪能するジュノー。
「ゴホンッ…。そしてその隣が三男のアラリオンだ…」
ドリスタン様はどことなく疲労感をまといながら言う。
「私とは先日お会いしましたね。改めて宜しくお願いします」
この間は嫌な印象を受けたが今日はとても好青年に見えた。他が酷すぎたせいもある…。普通の返しだが私の中では好感度爆上がりになっていた、が
「この国にいる間に是非とも現実を受け入れる努力をして頂けたら幸いですね」
前言撤回っ!!!…………。
「アラリオン!お前までっ!おまえ達…はぁぁぁ。立派に成長したと思ったがレディに対してこんな無作法な態度を取るとは…情けなくて妻に再会した時に酷く叱られそうだ」
ドリスタン様が頭を抱えて深いため息をついた。
「母上なら逆に喜んでくれますよ、ははっ」
ジュノーが笑顔で言う。
「エイルリス嬢、本当にすまない。息子達を甘やかし過ぎた様だ」
ドリスタン様が気落ちして謝ってきた。
「いえ、大丈夫ですわ。ですがドリスタン様は素敵な紳士でいらっしゃるのにご子息達はずいぶんやんちゃですのね、失礼ですが見た目は成人してらっしゃる風に見えますが実はまだ10歳位とかなんでしょうか?」
「貴様!なんと言った!!!!」
私の言葉に激昂したオリオンが立ち上がり声を荒げた。
ジュノーも先程の笑顔がなくなり据わった目で此方を見ている。アラリオンだけは何事もなく食事を取っている…しかも怒るどころか笑いを堪えてる…何故?
「はははっ!エイルリス嬢の言う通りだな」
ドリスタン様も憤慨とは真逆に軽快に笑った。
「オリオン、無礼だぞ席に着きなさい。図星だからと言って声を荒げるなみっともない」
「父上っ!!!」
顔を真っ赤にし怒りに体を怒りに震えさせながらも渋々座り直す。
その後の雰囲気といったら…
皆言葉もなく食堂には各々が黙々と食べる食器の音だけが響く
すると、沈黙をやぶってドリスタン様が口を開いた。
「エイルリス嬢、此方で困った事や気になる事があったら何でも聞いてくれて良いんだよ?」
ネリスの話しも国へ帰りたい相談もこの状況では話しづらい…後でドリスタン様に時間を取ってもらおう。
あ、そうだわ、前から気になってた事があった!ちょうど良い機会だから聞いてみようかしら
「あの…前から気になっていたのですが、ドリスタン様達は獣人族なんですよね?宜しければ何の種族か教えて頂けますか?」
「!!!」
私が放った言葉は先程オリオン達に言い返した言葉よりもその場の空気を凍らせた。誰も何も言わないがそれだけは鈍感な私でも感じ取れた。
温和なドリスタン様までもが黙り込んでしまう。
え…?私、何かしてしまった??
聞いてはいけないものなの?
心の中で動揺しているとようやくドリスタン様が口を開いた。
「…私達一家は豹族だよ」
「父上!何を…!」
オリオンがまたも立ち上がり強く抗議する。
いったいなんなの、種族を聞くことは失礼にあたるのかしら?やはり人間と獣人ではしきたりもマナーも違うのね難しいわ…
「何か失礼をしてしまったみたいですみません」
「いや、良いんだよ。気になったら遠慮なくどんどん聞いてくれ」
「父上、彼女が獣人国に暫く滞在するならばこの先困った事になりかねませんよ?」
アラリオン様がドリスタン様を嗜める。
「まあ、今は良いじゃないかせっかくの人間のお客様だよ、無礼講だ」
私に向かってニコリと笑うドリスタン様に初めてぞくりと悪寒が走った。




