⑧気持ち急降下
彼は命の恩人である…あるけど、今はもう1秒でも話していたくないエイルリスは早くこの場を離れたかった。
久しぶりの庭園散歩への高揚感もすっかり消え失せた…。だが、エララがせっかく許可を取ってくれたのだからと
思い直し庭園に向かう事にする。
「あの…アラリオン様、お話しの途中で申し訳ありませんが私達は庭園へ向かう途中でしたのでこれで失礼致します」
「あぁ、引き留めてすまなかった。ずっと部屋に籠りっきりだっただろうし今日は心安らぐ時間を過ごすと良い」
会話は和やかで2人とも張り付けたような笑顔だがどちらも目が笑っていない…。
「では」と、少しだけ頭を下げ足早にその場を去る。
苛々しながら悶々と進んで行くとエララが
「エイルリス様、ずんずんと先に進んでおられますが庭園の場所はご存知で?」
私はピタッと足を止める。
「あ…………いえ。その、エララ、案内をお願い…」
「承知しました、私に着いてきて下さいませ」
いそいそとエララについていく。
暫くお互いに無言で歩いていたがどうしてもエララに言いたい事があって呼吸を整えてから言う。
「え、エラエララ」
「はい、何でございましょう?」
…緊張してどもってしまった。
赤くなった顔を誤魔化すため「んんっ」と1つ咳払いをしてから
「先程は私を守ってくれてありがとう…怖かったのでとても、とても心強かったし…それにすごく格好良かったわ」
お礼など言いなれてない私はエララを直視出来ず顔を真っ赤にしながらそっぽを向いて言ってしまう。
あーーーだめよっ!お礼を言うならきちんと相手の目を見て言わないと!こんな簡単な事なのに貴族令嬢だったエイルリスには難易度が高い行為なのだ。これじゃ逆に感じ悪くとられても仕方ないわ。自分の不甲斐なさに悶えていると
「いえ、お気になさらず。あの者達に私が腹が立っただけなので」
エララは私の恥じらいなど微塵も気にしてない様であっさりとしてる。
「そう…でもやっぱり、ありがとう。嬉しかったわ」
私はもう一度、今度は真っ直ぐエララの目を見て言えた。
エララは少し驚いた表情をした後ほんのちょっとだけ笑ってまた庭園へと歩きだす。
さっきまでの不快な気持ちがいつの間にか朧気になり軽い足取りでエララの後を追った。
その後はエララと2人で美しい庭園を散策し嫌な気分次第に晴れていく。
だかアラリオンの言っていた言葉が胸の奥から消える事はなく、じわりと深く染み込んでいった。




