㊺ペリウィンクルの過去2
前投稿から少し間が空いてしまいました、すみません。
少し血生臭い表現がありますのでご注意下さいm(__)m
子を産んだ女を森へと帰そうとしたが当然女は頑なに拒んだ。
「後生です、どうかこの子の側に居させて下さい…決して帝国の方々に歯向かう様事は致しません、私に出来るうる限り何でも協力しますから…お願いしますお願いします」
「だが、ペリウィンクル殿下からそなたを王国へ帰せと命じられてるのだ…」
「お願いします、この子と引き離すくらいならいっその事ひと思いに処分して頂いた方が…この子を置いて戻るなど苦しみでおかしくなってしまいます」
女は床に頭を擦り付け懇願した。
ルアドは困り果てペリウィンクルに相談する事にした。
「何?帰るのを拒否しただと?」
「はっ、子と離れたくないと懇願されております」
「───ならば子共々殺してしまおうか」
「っ!!殿下!」
「はっ、冗談だ...なんだ、ルアド?文句でもあるのか」
「……、私からもお願いします。彼女の願いを聞き入れてやって下さいませんでしょうか」
「ルアド貴様、俺に意見する気か?」
「いいえ、その様なことは…ですがあまりにも哀れな女です。私が責任を持って監視しますので、どうか…」
「ふ…ん、まぁ、良い。だが絶対に外に漏らすなよ?もし少しでも塔の外であいつらの事を耳にした時はお前もろとも処分するぞ覚悟しておけ」
「わかっております。殿下、感謝致します」
ルアドは早速離れの塔へ向かう。
扉を開ければ女が愛おしそうに我が子を眺めている。
「赤子の側にいても良いと殿下の許可が降りた」
「!!!本当ですか!?」
ルアドの言葉に歓喜し白い頬をほのかに赤く染め潤んだ瞳で見つめてきた。
その可愛らしさといったら…ルアドは高まる鼓動を隠すように淡々と言う。
「だが、もし少しでも逆らうような事があれば…わかるな?」
「はいっ!勿論わかっております…そもそも従属の首輪もしてますし逆らうなど出来ませんわ」
女が首に嵌めていた従属の首輪を手で擦る。
ルアドは女に近付くと鍵を取り出し首輪を外した。
「ルアド様っ!?よ、宜しいのですか…?」
「私は君を信用している。その代わり決して裏切らぬように」
「ありがとうございますっ…」
首輪を外した女の首には長い間着けていた為か赤い痣が痛々しく残っていた。
可哀想な事をした…、もっと早く外してやれば良かったな。
ルアドは女と長く接するうちに彼女にどんどんと惹かれていく自分に気が付いていた。
美しさもそうだが、女の慎ましさや優しげな雰囲気もとても好感を持てたし、少しでも女の側にいれる様わざと用事を作り足しげく塔へと通いつめていたのだ。
それから数年は穏やかな日々が続く。
────だが終わりを迎える日は突然やって来た。
その日ルアドは朝からペリウィンクル殿下の視察に同行せねばならず女と3歳になったカーマインの世話が出来ず事情を知っている数少ない者に託す事にした。
しかも、その数少ない者達の中でも一番横柄で癖がある奴に頼むしかなかった。今日に限って他の者も所用で手が空いてなかったのだ…不安はあったがどうにもならないため仕方なく城を後にする。
「おい、開けろ開けろっ!飯だ!飯だ!」
乱暴にドアを開けたのはルアドから頼まれた横柄で癖のあるぺドという男だった。
「あ…ルアド様は」
「今日は殿下に同行してる、だから俺が来てやったんだよ、文句あるか?」
「いいえ、とんでもないです。お食事をお持ち頂き感謝致します」
女が食事を受け取ろうと手を伸ばすとその手を男がいきなり掴んだ。
「っ!何をなさいます、離して下さい」
「ほぉ…やっぱりお前、何年経っても美しいな」
男は舌なめずりをしながら女を好色な目で見る。
ゾッとした女は抵抗したかったが男の機嫌を損なえば息子にまで手を出されてしまうかもと躊躇した。
「お戯れはお止めくだ...」
「おかあさんにさわるなっ!!」
「痛てぇっ!」
カーマインは母を助けようと男の足に噛みついた。
「このクソガキが!!!」
男が足に噛みついたカーマインを蹴り飛ばすと、小さくて軽いカーマインは勢いよく吹っ飛んだ。
だが壁に激突する寸前に女が素早く抱き止める。
「カミー!怪我は!?大丈夫??」
「おかあさん、ぼくつよいからへいきだよ」
カーマインは強がってみせたが男に蹴られた顔は赤く擦りきれ血が出ていた。
「ああ!!あぁ、カミー可哀想に…痛かったでしょう」
女はふらりと立ち上がると今までに見せたこともないような恐ろしい顔をして男を睨み付けた。
一瞬怯んだぺドだったが気を取り直すと反抗的な女の態度が癇に障った。
「あ?何だその顔は、俺達に逆らうとどうなるかわかってんだろ?」
女は何も言わずに男を睨む。
「おい、そのガキは寄越せ、俺に傷をつけたんだからな…たっぷり仕置きしてやる」
ぺドがカーマインに手を伸ばしたがその手が届く事はなかった、何故ならば伸ばした手は手首から先が失くなっていたからだ。
「………あ……?」
瞬きをする間もないくらいの出来事たったため痛みもまだ感じていないぺドは呆気に取られたまま唖然とする。
しかし直後に襲ってきた凄まじい激痛がぺドを襲い吹き出した血にまみれ床を転げ回った。
「ぎゃああああああ!!!!!!て、手が!俺の手がっっっっ」
血塗れになったぺドが興奮と痛みの中大声で叫ぶといくら離れの塔とはいえ騒ぎを聞き付けた数人の兵が部屋へとなだれ込んで来た。
「何事だ!っ!お前はぺドか??いったい…」
「貴様は誰だ!!不審な女と子供がいるぞっ」
事情を知らない兵士のため女と子供を見て不審人物だと認識する。さらに───…
「!!こいつっ!人間ではないっ、獣人だっ!」
怒りで我を忘れた女は人間の姿を保てず所々に獣人の様相が出てしまっていた。
「捕らえろ!反撃するならば殺せっ」
兵士はそう叫ぶと女と子供を捕まえようと向かって来る。女は子供も守ろうと向かってきた兵士に素早く噛みつく。
「ぐわっっっ!」
「おいっ!そいつから離れろ!」
噛みついた女の後ろから別の兵士が剣で切付けて来た。
「くっっ」
背中を切付けられた女は噛みついていた兵士から離れすぐにカーマインの元に戻り守る様に抱き締めた。
「おかあさん、たいじょうぶ??せなかいたくない??おかあさんっ」
カーマインはボロボロと涙を流し母を心配する。
「カミー、お母さんは全然平気。だってお母さん物凄く強いのよ、何があってもカミーを必ず守るからね」
カーマインに向けていた優しい眼差しを一変させ兵士達を鋭い眼差しで睨みつけた。
「女、大人しくしろ…何故獣人がこの国にいる。抵抗するならば子供もろとも殺す事になるぞ」
女は考えた。ここで抵抗しカミーを連れて逃げ切れるだろうか…とても無理だ。私だけではカミーを危険に晒してしまう。
だが、ここにいても同じだ。ぺドに深い怪我を負わた上に事情を知らない兵士達にも自分とカミーの存在を知られてしまった。
私もカミーも処分されてしまうかもしれない。
覚悟を決めた女は獣人の能力を最大限に解放した。
それは巨大化した蛇の姿だった。
「うわぁぁぁ!へ、蛇!何だこの大きさは!!」
「俺達だけでは無理だ、応援を呼べっ!魔法騎士団に援護を頼め…ぐあっ」
兵士が蛇の尻尾で強烈な一撃を受け弾け飛ぶ。
巨大化した蛇の前では魔法が使えない人間などはほとんど無力であった。
分厚鱗に覆われた皮膚は兵士の剣などもろともせず弾き返す。
「こっ、この化物めっ」
襲ってくる兵士には構わず女はカーマインを自分の上に乗せると目にも止まらぬ速さで男達の間をすり抜けて行く。
「待てっっ!!!逃がすなぁ!」
女は必死だった。とにかく応援が来る前に森の中まで逃げなくてはならない。
後ろからどんどんと人間の声が増えてきてるのがわかる。早く、早く逃げなければ。
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