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私をあなたの番(運命)にして下さい  作者: ゆきもも


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㊹ペリウィンクルの過去1

「陛下…奴が獣人王国にて捕らわれたとの情報が」


ペリウィンクルはその言葉に苛立ちを隠そうともせず手に持っていたグラスを床に叩きつけた。

グラスは派手な音を立て粉々に割れる。


「何だと…?そもそも何故あいつが獣人王国にいるんだ」

「それは、私にも分かりかねますが…しかし、捕らわれたというのは確かな情報かと」


「そうか。奴の存在も既に持て余していたしな、ならば余計な事を話される前に消せるか?」


「な──っ!宜しいのですか…、それにあの紋があれば陛下を裏切るなど出来ないのでは」

「そもそもが無用な者だったのだ。望まれて産まれて来た存在ではない。すぐに命を出せ」

「………承知しました。すぐに影に実行させます」

「なるべく早く頼むぞ、獣人王国なんて我帝国の足元にも及ばないが無駄な衝突は避けたいからな」

「御意」


ペリウィンクルは豪華な装飾が施された椅子に腰かけると久しぶりに奴─、カーマインの事を考えた。


今から20数年前にペリウィンクルはまだ帝位継承する前の皇太子の立場であった。

その頃から既に皇帝の風格を持ち、他の弟妹の中でも一際異彩を放つ存在だった。


「ペリウィンクル殿下…()()()()捕獲できました」


「何!?やっとか!」

「さすがに苦労しました。この事が公になれば隣国との争いの火種にもなりかねませんから」

「ははは…、その時はその時だ。この帝国が負けるわけがない。獣人王国など捻り潰してやろうではないか」

「で、殿下、その様な物騒な事を大きな声で話されないで下さいっ!」

「まぁ、良い。それより()()()はどこだ案内せい」

「は……」


ペリウィンクルの従者、ルアドが案内した部屋は使用されなくなって久しい塔の中の一室だった。

扉をあければそこには両手両足を縛られ、首には従属の首輪が付けられたそれはそれは美しい女が此方を殺気のこもった目で睨み付けている。


「これはこれは…ずいぶんと美しいではないか、しかも品がある。捕らえた者に褒美を出そう」

「はっ、有り難きお言葉に感謝致します。ですが殿下、この者をそうそう長く監禁は出来ませぬぞ」

「わかっておる、用が済めば記憶を消して森へと返す」

「…承知しました、では私はこれで失礼致します」

「ああ、俺が呼ぶまでは何人足りもここへ近付けるな」

従者が頷き部屋を出ていく。

先程の女に目を向ければ部屋の隅に体を寄せ威嚇して来た。

「まぁまぁ、そう興奮するな。その顔もなかなかそそるが…」

そう言いながら近付いて行くと、女は逃げようと必死でもがく。だが体を拘束されているため身動きが出来ない様だ。


ペリウィンクルは側に屈み女の髪を掴むと強引に顔を引き上げる。

「近くで見ても何とも美しい…帝国でもお前程の女は見たことがない」

女はガタガタと震えてはいるが目線だけは決してペリウィンクルから外さず真っ直ぐに睨み付けてくる。


「その気の強さも気に入った、偶然の拾い物にしては最高級の女を手に入れた様だ。これは、暫く楽しめそうだな」

ペリウィンクルは女を無理矢理立たせベッドへと放り投げた。

女はこれから起こるであろうおぞましい想像に顔を歪めるが最後までペリウィンクルを睨む様にじっと見つめていた。



それから1月が経ち──。


「ペリウィンクル殿下っ!いい加減もう限界です!」


扉の向こうからルアドが叫んでいる。

「皇帝からも殿下の所在を問われ誤魔化す事はもう不可能です。いったいいつまでその女性と引きこもっておられるのですか。それに獣人王国でも騒ぎになっているかもしれません」

その時がチャリと久しぶりに扉が開いた。


「殿下っ!」

「ったく、煩いな…。わかったよ、そろそろ飽きてきた所だ。だが女はまだ手放さない」

「殿下、もし獣人族の行方不明の女性が帝国にいると判明すればとんでもない事態になってしまいます!すぐに記憶を消して解放するべきです」

「まぁ、慌てるな。どうせ記憶を消すのだから今解放しようが1年後に解放しようが変わらぬだろう」

「で、ですがっ」

「反論は認めぬ、手放さないと言ったら手放さぬ!」

「───御意…。」


ペリウィンクルは飽きたと言ったが、それは嘘でいまだにその女に相当のめり込んでいた。たぐいまれな美貌と溢れ出る気品、どんなに穢されようとも強さを失わない目の光。

その全てに深く魅了されていた。

今手放すなど考えられなかった。


それからペリウィンクルは暫く通常業務に戻り溜め込んでいた公務に身を費やしていた。


更に時が経った頃…


「女が身籠っているようです」


ペリウィンクルは驚き目を見開く。

「…な、何だと?あり得ないだろう…。獣人と人間の間には子は作れないと言っていたであろう!!」

「はっ、その様に聞いておりましたし。獣人と人間に子が出来るなど前例はございません」

「ならば俺の前に誰かと…!」

「彼女が殿下と会う前に身籠っていたとなると日数が合いません、殿下のお子と捉えるのが自然かと」

ペリウィンクルは体を震わせ手で頭をかきむしった。

「何故だ何故だ何故だ!!!こんなことが皇帝にバレれば…」

ペリウィンクルは暫く考えゆっくりと顔を上げる。


「子は産ませろ…産まれたら女は記憶を消して森へ放せ。それと、子が産まれても絶対に外に漏れないようにしろ。子の出産に関わった者は口封じに全て処分しておけ」

「殿下、本当にそれで宜しいのですか」

「ルアド、それ以上言えばお前といえど命はないと思え」

「……承知しました」


そして数ヶ月、人間と獣人の初の子供であろう元気な男の子が離れの塔の中でひっそりと誕生した。


その子供は、カーマインと名付けられる。

カーマインは獣人族の女と帝国の皇太子であったペリウィンクルとの間に出来た子であったのだ。


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