表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私をあなたの番(運命)にして下さい  作者: ゆきもも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/49

㊸フィオのもどかしい気持ち

「下で何だか騒ぎがあったようだな」


「うん、これじゃあ今日中には話に行けそうにないや…」

「なんだ、フィオはご子息に話があるのか?」

「うん、体調も良くなったし早く自分の家に戻りたくて」

「いやいや、まだ怪我も完治してないだろ?もう少しここで療養させてもらえばいい。家に帰っても誰もいないじゃないか」

「そうだけど…ここは落ち着かなくて。人も多いしさ」

「お前の母さんもいるんだぞ?いいのか?」

「ここにいれば手厚い看護もしてもらえるし、逆に安心して任せられるよ。俺は家からまた様子を見に来れば良いだけし」


「……そうか、フィオ──、だが何か隠してないか?」

ジルおじさんの言葉に一瞬動揺したがすぐに平静を装う。

「何言ってのさ?全く、隠してないよ。ただ家で落ち着きたいだけだし」

「─…。」

おじさんさまだ納得してないようだがもう何も言わなかった。

実の理由は別にあるけど、家に帰りたいのは嘘じゃない。あの家が俺の全てだから。



フィオはこの村で生まれたわけではない。

ルーンの森に捨てられていた赤子のフィオを父と母が見つけ実の我が子のように大切に育ててくれたのだ。


子宝に恵まれなかった2人は得たいの知れない俺を心から愛し慈しんでくれた、そんな2人が俺は大好きだった。血はつなかってないが本当の両親は今の父と母以外いないと思っている。


それと、俺はいまだに自分の種族がわからない…フィオは既に15歳になる。その歳でわからないなど普通はありえないのにどんなに成長しようと身体的変化も起きず、能力も発動しない。

はっきり言えば今の状態はただの人間と変わりない。いや、人間の方が魔法を使えるだけ上か…。


どれだけ父さん達と同じパームシベット族だったらと願ったか。体も15歳にしてはかなり小さいためパームシベットの村でも違和感なく溶け込んでるし、もしかしたら…その可能性も、まだ残っている。


思ってみればそんな中途半端な自分に番なんておこがまし過ぎたんだ。

番を感じた時は天にも昇る気持ちだったがよく考えればこんな何者かもわからない奴に執着される相手が不憫で仕方ない。だから俺はこのまま会わないという選択をした。会ってしまえば番から離れるなんて出来なくなるなだろう自分の弱さもわかっていた。


自分の番を近くに感じた、それだけで一生分の幸運を使った気がする。君はどんな顔をしていて、どんな声で喋ってどんな瞳の色をしてどんな顔で怒ってどんな顔で笑うのだろう。


ああ…見てみたかったな。

俺の運命の人。



「しかし、さすがに腹が減ったな。下に行って何か探してくるか?」

「お、俺は腹減ってないから…ここにいるよ」

「フィオも昼から食べてないだろ?お腹空いてないのか??」


下手に部屋から出れば番に遭遇してしまう可能性が高くなる、自分の家に帰れるまではなるべく部屋で大人しくしてようと決めていた。

もし出るなら皆が寝静まった夜中にしよう。

「おじさん行ってきなよ、俺は少し休んでるから」

「わかった、パンとか果物があったら持ってくるよ」

「ありがとうおじさん、助かる」

おじさんが下に降りて行きフィオはベッドにゴロンと横になった。

はぁ………どうしても番の匂いが纏わりつく…。

たまらなく心地好い、だが今のフィオには辛くもある。


「──あれ…?」

その時匂いがいつもより濃くなった気がした。

「!!!」

番の匂いがどんどん近付いて来たのだ。

よりいっそう匂いが濃くなりフィオは甘い香りに酔いそうになる。

だめだだめだだめだ!こっちへ来るな!!

そう心の中で叫んだ所で止まるわけもなく、香りは更に強くなる。


あぁ、何て、何て…愛おしいんだ。

顔も見たことがないのに心が悲鳴を上げるくらい番を求めてしまう。

今すぐにドアを開けてこの香りの主に会って思いっきり抱き締めたい。

だがフィオは自分の腕に噛みつきその痛みで会いたくなる衝動を必死に抑えた。


「ううううう…」

早く、早く通り過ぎてくれ…!

フィオの腕からポタリと血が滴り落ちる。

まだだ、早く行ってくれっ!

耐える事数分、やっと匂いが遠ざかっていく。

フィオは全身の力が抜けたようにその場に座りこんでしまう。

「はぁ、はぁ、はぁはぁ」

汗びっしょりだ。腕からも血が出ている。

やばい、おじさんが戻ってくる前になんとかしないと...


「フィオ、パンと果物を少し貰ってきた──ぞ...」

しかし無情にも扉が開きジルおじさんは呆気に取られた顔でフィオを見下ろす。


「フィオ…?お前…」



***



「やはりな」

「え?やはりって?」

「薄々わかっていたんだ、お前の態度から番絡みではないかと」

「そ、そうだったんだ。とっくにバレてたのか」

「お前、自分では気が付いてなかったのかたもしれないが、いつも同じ方向を気にしてソワソワしてたからな」

「え!?…やばい、恥ずかしすぎるんだけど」

「仕方ない、番の事になれば獣人は皆同じ症状になる」

フィオは自分の他に番をみつけた人など会った事も聞いた事もなかった、だから番を見つけた者がどんな風になるかなど知るよしもなかった。

それくらい番に会えるというのは奇跡のようなものなのだ。

自分だって相手がこの国へと来なければ一生知らぬまま生涯を終えていただろう。

本当に偶然の偶然が重なって今この奇跡が起きている。


「それで、フィオはどうするつもりだ?」

「どうするって、何もしないよ。会わないつもりだし」

「はぁ!??自分の番に会わないだとっ!!獣人は人生の終わりまで己の番を探し求めるんだぞ?それがすぐ近くにいるというのに…あり得ない...」


「わかってるけど、しょうがない。相手は人間なんだ、自分の国へと帰れば二度と会えなくなるんだよ?それならば知らないままで終わらせた方がよっぽど楽だろ?」

「確かにそうだが、何もしないうちから諦めるのか?国へ帰ってしまえばもう手が届かない存在になってしまう、その時後悔はしないか?」


「後悔の前にどうやっても手が届かない人なんだ、諦めた方が自分にとっても相手にとっても最善…なんだと思う」

「フィオが良く考えた結果の行動ならばもう何も言わないよ、すまなかったな。お休み、フィオ」

おじさんはそう言って自分の部屋へと戻って行った。

おじさんは俺のためを思って言ってくれたんだろう…

深いため息をつきベッドに転がり布団を頭から被り無理矢理寝る事にする。

フィオのお腹はぐうぐうと食べ物を催促していたが気分的に食欲はなかった。

明日こそは絶対に家へ戻りたいと伝えよう…。

その決意とともにフィオはいつの間にか深い眠りに落ちていった。



***


部屋へ戻ったエイルリスは先程1階で会ったパームシベット族のジルさんという人の事を思い出していた。

先日襲われた親子の知り合いって言っていたわね、結局その被害に遭った男の子には会わせてもらえないのかしら?

少しだけ会ってみたかったな…わからないけど何故かそう感じていた。

明日会えないか聞いてみようかな。でも、人間に敵意をもってるかもしれないし、それに会っても何を話せば良いかわからないわ。

もう帝国へ帰ると決めたんだから会う必要もないのかもしれない。そう思っても何か不思議な引っ掛かりを覚えるのだ。

私ったらどうしたのかしら…?


コンコン


……!こんな遅くに誰?お兄様?


「遅くにすまない、ルリス、少しだけ話がしたい。良いかな?」


その声にエイルリスは息が止まりそうになる。

「り、リオン…」

エイルリスは躊躇うも勇気を出しドアを開けた。

「話って、何?」

「ルリスすまなかった。俺は君にとても無礼な事をしてしまった、許してくれ」

「は──?」

「君に好意を持っていたのは間違いない。そして今もその気持ちは残っているんだ。だが、俺は出逢ってしまった」

エイルリスは胸がムカムカして気持ちが悪くなって来た。

「リリアン殿だ。あの方が番なんだ…俺の唯一、俺の全て」

「あのっ…、もういいですか?リリアン様がリオン…アラリオン様の番なんですね?わかりました。ではお休みなさいませ」

そう言ってドアを閉めようとしたがアラリオンが足を挟んできたので閉めれなかった。


「足をどけてくれません?」

「ルリス、君の気持ちを踏みにじってしまった。本当にすまない…何か詫びをさせてくれないか?俺に出来ることなら─」

「なら、今すぐに出ていってもらえません?それで充分です。あ、後愛称で呼ぶのもやめて下さいね。では」

アラリオンが驚いて足を引っ込めたのでその隙に勢いよくドアを閉めた。


エイルリスは悔しさに唇を噛み締める。

あんな人を好きになっていたなんて悔しくて悔しくてたまらなかった。


あんな人だった?それとも番を見つけた獣人は皆あんな風になってしまうの?

理性的で、でも思いやりもあって芯のあるそんなアラリオンに確かに惹かれていた。

私を馬鹿にして言い合ったりもしたけどそんな所も嫌いではなかった、だが今のアラリオンはまるで別人の様だ。


私が好きになったリオンはもういないのね…。

エイルリスは今ようやく育ち初めていた恋心に終止符を打つことが出来そうだった。


あなたを好きになった気持ちは完全に消えるわけではない、でももうさよならするわ。


エイルリスはこれからのアラリオンの幸せを祈り自分も前へ進んで行こうと気持ちを切り替える事にする。

大丈夫、今辛くてもきっと良いことだってある、必ずあるはず。

でも、今日だけは泣いてもいいかな…

明日になったら笑えるように。


エイルリスはとめどなく流れる涙を拭うこともせずただひたすら悲しみに身を任せた。


さよなら、リオン。

さよなら、リオンを好きだった私。










いつも読んで下さってありがとうございます。少しでも面白いと思って頂けたら評価やブックマークなどをポチっとお願い致します。とってもとっても励みになりますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ