プロローグ
人生は不公平だ。
ある者は大金持ちに生まれ、またある者は貧乏に生まれる。
誰かが健康体で生まれ、別の誰かが障害を持って生まれる。
誰かには生まれてきた時代に評価される分野の才能があって、他方で別の誰かにはそんなものとは尽く無縁の人生しかない。
わがままを言える者、自我を押し通せる者、思ったことを口や態度に出すのを許される者がいて、ただ我慢する者、沈黙し続けるしかない者、いつでもいい人でいなければ生きていけない者がいる。
誰一人、同じ人間はいない。同じ国籍、同じ民族、同じ言語、同じ人種――そうした括りは、こうしたケースには当てはまらない。
それら全てが同じであっても、全く別の存在になり得るのだから。
「はぁ……はぁ……」
だが人生は一瞬で変わってしまう。ついさっきまでのつまらない、閉塞感の具現化みたいな時間の浪費でしかなかったそれが、一瞬で生存のための闘争に切り替わることだってあり得る――らしい。
周囲を確認する。見慣れない空間と、何らかの機械と、死んでいる人間と、このよく知らない場所でもそれが異常であるという事を証明するようにけたたましく鳴り響くサイレン。
「はぁ……っ」
そんな状況でも、この体はどういう訳かやるべきことを理解している――脳みそが理解に手いっぱいな時に。
「……よし」
口がそう漏らす。死体のそばから拾い上げたAKに対してやるべきこと――銃身及び機関部が使用に耐えうる状態かの確認、異常が無ければチャンバー内とマガジンの確認。
そのどちらも突破したそいつの黒い樹脂製ストックを薄い検査衣の肩に当てる。セレクタをフルオートへ。
「ふぅ……」
最後に息を一つ。
生きている目的などなかった。
だが死ぬのは怖い。
なら、今は生きるだけだ。
「よし……」
そこに戸惑いはなかった。不思議なほどに、その現実を受け入れていた。
世の中には色々な奴がいる。
わがままを言える者、人を振り回せる者、自分の都合だけで身勝手に振舞える者、我慢に我慢を重ねる者、いつも誰かの顔色を窺う者、誰かの都合が自分のそれに優先する人生しかなかった者。
なら、撃つ者と撃たれる者だっているに決まっている。死ぬ者と殺す者だって、いるに決まっているのだ。
(つづく)
Q:連載作品が別にあるのに新しいの初めて大丈夫?」
A:やりたくなったんだから仕方ない
という訳で始まります。久しぶりのガンアクション。
近未来でデカい都市で廃墟でガンアクションと、好きなもの全部乗せ、大人のお子様ランチ状態でございます。
いつもの通り、生暖かく見守って頂ければ幸いです。