第15話 アガスティア、家を失う
「ああ、どうして」
私がこの奇妙な現象に慌てふためいていると円香が文字を拾ってそのままごみ箱に捨てた。
私とリゼが円香の行動にぽかんとしてると、とっても嬉しそうな表情でリゼにこう言った。
「こんな変な現象ティアの周りじゃ日常茶飯事よ、この程度で驚いてられないわ!」
これを受けてどうやらリゼは少しため息をつき、円香にこう返した。
「どうやら今のところは私の負けみたいね」
何がどうなったのか知らないけどリゼはこんな怪現象を起こす私に内心呆れてないだろうか、ていうかこれ奇病じゃなくて私のせいなの?とか少し考えた。
さっきとは打って変って和やかに机でティータイムを楽しむ私たちは主にお互いがこの島でどう過ごしてきたか話すことになった。
というか共通の話題はこの島の出来事くらいしかないのだ。
「それでね?ティアはエレメント相手に勝てないからって私に猫の物まねをして『みあみあ』鳴いて見せたのよ」
さっきから円香は何が楽しいのか私との思い出話をリゼにしている、ていうかちょいちょい食い違いあるため普通に『へー』と聞いていたら円香に『あんたとの思い出でしょうが!』とキレられてしまった。理不尽なのだ。
「猫の物まねも見てみたいけど!私も何かティアの初めてが欲しいわ!」
どうでもいい話をされまくったせいか少しむくれた表情でリゼは何でもいいから私の初めてが欲しいと抗議をする、これがガールズトークってやつか。
「まあいいですよ」
お詫びもかねて快諾するとリゼが目を光らせ何かを言おうとしたが……。
「ちょっと変なこと言わないでよね!」
円香がおかしなことを言うがリゼがそんな変なこと言うわけないじゃないか。
リゼは少し考えなおした後こう言った。
「じゃあ手作りのご飯が食べたいわ!」
「それは円香が初めてですね」
残念ラピュタパンは円香のものだ。
「じゃあ髪をとかしてあげる!」
「それも円香がやってます」
「じゃあじゃあ、ご飯をあーんってして!」
「ずっとまえに私がやったわ~」
その後もつらつらとリゼはやりたいことを言うが大体円香としている。
「はあ、はあ……」
リゼがとうとう疲れてしまったらしく椅子から崩れ落ちよろめいている、円香は椅子の上に立ち勝ち誇っている。
そのまましばらくぶつぶつとリゼが考え込んでいて、私は少し心配になって近づくと涙目になったリゼが顔を急にグイっと上げてきたので私の顔と意図せず近づいたきた格好となった。
「じゃあ、添い寝して!」
度アップでみるリゼの顔はやっぱ美人さんだなとのんきなことを考えてしまう、本当なら恥ずかしいから慌ててしまうところだが残念、初めてじゃないのでこれも却下なのだ。
「すいませんそれも円香としてます」
「そんな!二人はもうそこまで関係を進めてしまってるのね!」
リゼは泣き崩れてしまった。
りぜがめそめそと泣いている「めそめそ」
円香は嬉しそうに仁王立ちだ「ぽたぽた」嬉しいが落ちてやかましい。
どうかこれで落ち着いてほしいと「みあみあ」と鳴いてみる、思ったより恥ずかしい。
いつの間にか戻ってきたカズもいる「ぶんぶん」
それに振り回されてわたあめもうれしそうだ「めえめえ」
「ようやく痛みが治まってきたぜ……」
魔王が呻きながら立ち上がる。
「おいコラ!ロリコン!てめえ今日という今日は許さねえ!」
「ファイアボール」
かっこよく啖呵を切った魔王にリゼはノールックでファイアボールを無常に放ち、そして明らかにメラゾーマレベルの攻撃は魔王はおろか私の家を燃やした。
え?




