第12話 辛いが落ちてる
「よお!遊びに来たぜ!」
黄金からグレードダウンした魔王御一行がとうとう私の家にやってきてしまった。
「すっげ!ひつじが草食ってる!俺と遊べ!」
「へーこれが南地区の家なんだね、来る途中も外観は見れたけど俺は東の日本家屋よりこっちの家に住みたかったなあ」
もう来た途端騒がしい連中だった。
今日は梅雨の時期でもたまたま晴れたらしくカズさんは庭でわたあめと遊んで……遊んで?る。
魔王は土産のお茶菓子とお酒を勝手に開けて飲み始めるしヒロさんは家の中の物色で忙しい。円香は、魔王を呼んだくせにまだ寝てるんかい!起こしに行かなきゃ。
「こらー、円香。早く起きなさい~!」
円香の部屋に入るとさっさと体を揺らして円香に起こす。あいつらの相手は私には荷が重いんだ。
「あれーもうそんな時間?」
寝ぐせで髪がぼさぼさの円香をどうにかこうにかしてさっさと下に降りてもらう。
「おいっす、リオ。ねえ酒飲んでんじゃないわよ?本題忘れてんじゃないでしょうね?」
あまり酒に強くないらしくそこまで時間が経ってるわけでもないのにすっかり出来上がってる魔王に円香は怒っていた。ところで今日の本題は家がボロボロにならないこと以外に何かあるのだろうか?
「う~い、平気さ。どうせヒロが説明すっからよ。ところでお前いつの間にそんなでかくなったんだ?」
魔王が壁の振り子時計に話しかけている、もうだめだ。
「ん?ああようやく降りてきたか。おかげでリオはこの様さ。今日置いて行っていいかい?運ぶのめんどくさいんだけど」
ダメに決まってると言ったら、じゃあ殺して神殿で生き返らせるといった、円香は『頼むから外でやってね』と言った。命が安い世界だ……。
「それでメッセージでも聞かれたけど、特に2年後についての情報は俺らも持ってないよ?」
ヒロさんが魔王を床に転がして椅子に座り円香と話す。
私はキッチンで紅茶を注いだ後床に設置されたお邪魔トラップを搔い潜りなんとか給仕に成功する。
「あなたたち数だけはたくさんいたんでしょ?なんかそういう伝手とかないの?」
円香が食い下がるも、ヒロさんはため息をつきながら首を振る。
「元紅蓮団の連中は馬鹿ばっかで使い物にならいどころか足を引っ張る連中だよ。」
「んーそっか、でも2年後一緒の世界に行く方法かそれに準ずる情報が手に入ったら私に教えてね。」
そこで本題は終わったらしく、その後は3人でゲームをしながら雑談に興じることになった。
「ヒロ、リオっち、助けてくれえ、おなか痛い……」
しばらくして外から既存種の草食獣と新種の草食獣が帰ってきて家の中のトラップが増えた。もう紅茶のお代わりはできそうもないね。
「最近転生者の中じゃ仲間内で集まってダンジョン攻略じゃなくて別のことをするのがブームらしいよ。
飲食店を経営したり、前世が科学者だった連中が集まって中央北の城の一室を借り切ってなんか作ったりとか」
木彫りのチェスの駒を動かしているヒロさんはカズのことをガン無視してた。ああ、まって!そこはまずい!
「この前のレイドの失敗のせいと梅雨の時期のせいですっかり皆攻略に及び腰になっちゃったわねー」
円香も無視してる。……ていうかなんで黒の駒をヒロさんと円香が動かして白は私だけなんだろう。あっち1人で1回づつしか動かしてないからルール通りみたいな面してるけど1ターンで2回動かしてるじゃん、勝ち目なくね?
しばらくして白のキングが黒の駒に囲まれて私は負けた、後半はもてあそばれていたわ……。
「ちょっと私外の空気吸ってきますね。」
「おいおいー!負けたからって逃げるのかー?」
「戻ってきたら罰ゲーム受けてもらうわよ!」
私は二人を無視しながら考え事はできないのでその場から逃げ出した。




