第7話 泉の女神
「警邏の奴らが3層の攻略に失敗したんだとよ!」
いつものように紅蓮団のたまり場の少し前より寂しくなった茶店で飲んだくれているとカズが嬉しそうにどうでもいいニュースを俺たちに伝えてきた。
「なんだって?あいつらあんなに万全を期すためだとか言って群れて行きやがったのに失敗しやがったのか!」
それを聞いてヒロもまた嬉しそうに笑う。
「リオッちよー、ちょっくら3層行ってパパっとクリアなり原因なり見付けて警邏の連中の鼻あかしてやろーぜー!」
どうやらカズは暇つぶしがてら警邏に恩でも売りたいらしい、確かにいい案だ、少なくとも飲んだくれているよりはずっとましだ。
「んーじゃあ行くか!」
「おう!」
俺がそういうと二人とも元気よく返事をしてダンジョンに向かう準備をし始める。
俺は確かに紅蓮団なんて物騒な団なんかには入りたくはなかったが、だがしかし別に荒事が特別苦手というわけでもない。
今世の肌の色が紫であげく角が生えて明らかに魔王か何かやってるような面よりかはましだったが、前世の日本人だった頃も目つきなどが悪くよくからまれていて自衛程度はしていた。
だからこそあまり気の弱い連中に対してカツアゲまがいのことをする奴や女を見るやすぐナンパするアホにはうんざりとしていたのでボコられて散り散りになって清々したとも思ってはいる。
だがしかしロリコンとかいう変なのに負けたのは困る。あれのせいで俺はロリコンに負けた男に町中周知されてしまった。
なのでここらで人気のある警邏の連中に恩を売っておけば俺の下がった株も少しは上がって暮らしやすくなるもんよ。
なーんてのんきなこと考えながらダンジョンに向かったがどうやらヒロとカズは全然違うこと考えてたらしいな。いや特に考えてねえのか……。
「3層もちょろいもんだな!こんなんじゃ1日でクリアできちまうぜ!」
カズがダンジョンに入ってすぐエンカウントしたオオカミを薙ぎ払い大声でイキリまくる。3匹くらい誰でも倒せるわ!
「おい!カズ!あぶねえだろ!!」
急にヒロが叫んだと思ったらカズの野郎無駄に振り回すもんだから斧をすっぽかして放っちまったらしい、馬鹿じゃねえの!?
手の付けられねえ仲間に注意をしようとしたら『ザボーン!』と斧が飛んで行った方向で水音がする。
3人で顔を見合わせてやっちまった現場を確認しに行くことにした。
するとそこには童話の女神様よろしく泉の女神がカズの斧を模した金の斧と銀の斧を持っているじゃないか!
「おいおい、これはまさか……」
俺がつぶやくと二人とも頷いてくれた、まさかダンジョンの中にこんなギミックがありやがるとはな!
少し興奮しながらカズに早くしろと促すと、嫌がられた、なんでだよ。
「リオっちよー、こんな濡れた女に興奮するだなんて趣味悪いぜ?男なら……こうだろ?」
そういってカズは自分のマントを女神にそっとかけてあげた。
「違うだろ!お前!泉から女神が出てきたらもっと違うことするだろ!こら!女神も頬を赤く染めない!」
ボケまくるカズに突っ込みの一つをかましたら女神の野郎、まんざらでもない態度をとりやがって!お前は早くイベントを進めろよ!
「やれやれ、この女性は確かに美しいがだからと言って女神と表現するだなんて、どうやらこのナンパレース、リオが一歩リードってところかな?」
ヒロも悪乗りなのか何なのか知らねえけどこれ以上自体をややこしくするな!女神が照れに照れて頬に手を当て始めたじゃねーか!
しばらくしてナンパはヒロが成功しその後ようやく女神が「あなたが落としたのはこの金の斧ですが?銀の斧ですか?」と聞いてきてくれた……。




