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閑話5 ヴァルゴの場合

この話は第1話のヴァルゴ視点です。

 「えー、本日はお日柄もよく、故人あらため君たちが私の世界、エターナルに転生したことを心よりお祝い申し上げます。」

 気づくと俺はなぜだか知らないが広場に立たされてそしてどこから話しかけられているのわからない、周りの人間がざわざわと話雑音がひどいのだがそれを貫通している気がするのだ、この声は。普段の耳の鼓膜から音を拾う感じではなく、脳に直接響いているような不思議な感じの声だ、突然のことに思考の端に追いやりたいと思うがいやでも聞かされる羽目になっている、これを無視できる人間がいたなら大分肝が据わっているに違いない。

 「君たちは今日からこのエターナルという世界に存在している小島で戦闘の訓練をしてもらうよ、そして1年たったらこの世界のどこかに飛ばしてそこで大いなる災いに備えてほしいんだ。」

 しばらく話を聞いていてこの声の主は神を自称していることが判明し、それで周りがまた騒がしくなったりとして頭痛が痛いことが起きりすぎているのだが、しばらくすると急に周囲が静かになる。いやこれは……。

 見渡すと周りの全員がアホ面下げて空を見上げている、どうやら空に俺たちに話しかけている存在がいる様だった。

 当の俺もそれは見事なアホ面をしていたに違いない、今までそれでも何かの間違いかいたずらだと思っていたのだ。空に浮かぶだなんて……。

 「もちろん、君たちは全員、日本に存在していた時から優秀なスキルを保持しているとはいえ、モンスターと戦うことも異世界で生きて、働いている人間たちにそのまま通用するとは思ってないさ。だからこの島の中央にダンジョンを設置した。君たちには1年間このダンジョンで戦い、スキルを磨き、そして生き延びてほしい。拒否権はない、いやなら死ね。」

 神は俺たちの動揺を意に介さず説明をし続けている。少しは待ってほしいし、しかもこれは説明をしているつもりなのだろうか、脅迫か何かの間違いではなかろうか。

 「とはいえ、ここでいちいちすべてを説明するのは面倒だ、なのであらかじめ私がこの世界の手引書をしたためておいた。いつでも確認でき、そして君たちの生存を助けてくれる素晴らしいものだ。出し方を教えてあげるね。心の中でメニューと念じるだけで出るよ。しばらく時間を上げるからみんな確認してご覧。」

 ここにきて初めて神は俺たちに親切心を見せてくれたと思う。ようやく一息つけるとともに急いで確認しなければいけない。あいつが待つといった時間は一体何分なんだろうか。急いでメニューと念じる、『うお!』と思わず驚いてしまう。無理もない、目の前にホログラムで映し出したような板が表示される、一番最初のページは名前が設定できる場所と保持スキルが表示されており、直感でスワイプ操作をすると次のページへと移りアイテムボックス、自身のステータス、ポイントなどいろいろなものを管理できる複合的なものだった。ゲームならセーブの項目があっただろうがそれはなかった。

 俺は急いでメニューを読み漁る、神が言っていた手引書もすぐに見つかった、だけどこれみんな読むのだろうか?かなり大事なことも書いてあるけど見づらくて、さらに項目が多い、これだけの量を読破するだけで2,3日は覚悟しないといけないかもしれない。

 「すいません、それっていったいどうやったら出せるんですか?」

 すると隣からか細い声が聞こえてきた、何?俺に話しかけてきてんの?邪魔しないでほしいんだけど……。

 仕方なく声の方を向くとそこには金髪の女の子がいた、急に話しかけられ少し不機嫌だったがそんなものは吹っ飛んでしまう、小さい子には優しくしろって習ったしな。

 しかし俺を見るなり女の子はてを組み祈りのポーズを組んだ、そして神よ……!とか祈りを捧げ始めた、それ自体は妙に様になっているのだが、いやなんで急に祈る。

 そして俺はまたか……と心の中で嘆息した、そうだ俺はいつも見た目で損をしている、初対面の人間には高確率で怖がられ、駅前で喧嘩が起ころうものならそこをたまたま通りかかっただけの俺も連れていかれ、そして幼稚園の近くを散歩している子供の集団には泣かれる。

 だがまあこういう時不機嫌な声を出すのは悪手だ、できる限りおどけて、優しい声色を出すことを心がけて俺は女の子に話しかけてやる。

 「おいおい、話聞いてなかったのか?っていうかなんで目を閉じて祈る?なんでだ?」

 まあ俺も実際神の話なんて半分も聞けちゃいない、あいつは人に話を聞かせるつもりがないのだろう。

 だけど目の前の女は異質だった。

 「話って何?」

 そっから!?何も話を聞いちゃいねえ、この展開に全くついていけてねえじゃないか!

 仕方がないので懇切丁寧に俺の知りえる情報を教えてあげた。アホ女は理解力は悪くはなかったようでこちらにお礼を言った。

 「ありがとう、ところでさっきの答えだけど目の前に熊がいて食べられそうだったから祈ってたの、来世はアイスが食べたいって。」

 は?ああ、先ほどの俺の聞いた質問の後半の部分を律義に答えてくれたのだろう。いや意味わからんわ……。

 「お前、人の話聞かないやつなんだな、ここに集まった奴らは全員日本人だ。だから食わねえよ。」

 そう言って俺は周りを見渡す、それみろどこにも熊なんていやしねえ。だからさっき説明してやったじゃねえかここには日本人しかいない……いや?

 目の前の女を改めて観察する、こいつ金髪だ、明らかに日本人ではない、いや待て神は日本にいる人間という意味で言っただけでこいつがハーフの可能性だってある。

 「なあ熊って、」

 思わず考えたことがそのまま声に出てしまう。女は不思議そうな顔をして俺を指さす、俺は俺自身を……見て、んあじゃこりゃ!

 そこには毛むくじゃらなうでや手があった、アホは俺だったみたいだ、散々メニューの捜査の時に見ていたはずなのに、今まで気づきもしなかったなんて。

 体中をまさぐって確認してみたら基本は人間ベースで毛むくじゃらなだけらしい。ただ顔が明らかに熊だった……そりゃ怖がられるよな……。

 目の前の女も周りを見渡している、熊以外も探しているのだろうか、そして俺はまだメニューの話をしていないことに気づき慌てる、神はあと何分待ってくれるんだ!?

 「話進めていいか?メニューウィンドウは心の中で念じたらでてくるぞ。それでな……」

 急いでメニューについて教える、ギリギリ説明が間に合い神がそろそろ説明を再開するよと告げる。

 またあいつが説明を止める可能性は低い気がする、俺は隣にいる女に頼むから話は聞くようにと懇願するとまた祈られた、ほんとに勘弁して……。

 空を飛んでもねえくせに、飛んでもねえ奴の隣にきちまったぜ……とほほ……。

 

 

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