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第7話 迷宮の正体

「スライムを倒したいなら核をねらうんだよ」

 目の前の男はそう言った。どうやらスライムは核に衝撃さえ与えられれば絶命するか弱い生き物だったようだ。

 顔面から突っ込んでスライムの中に頭が入った私がスライムを倒せなかったのは運が悪かったようだった。

 額に角が生えていたら、私だってスライムを倒せたのに。3人組の男たちのうち角がにゅっと生えているだけの見た目はほぼ人間の鬼人を横目で見つつ私は一応男たちにお礼を言うことにした。

 「ほら、スライムの核だ、やるよ。」

 私のお礼に気をよくしたのだろうか、そう言って軽薄そうな糸目の男はスライムの核を2個渡してきた。手の上でコロコロと転がっている核は黒砂糖でつくった飴玉みたいな色をしている。これをメニューに入れればポイントになるらしいが、やり方がわからない。

 どうすればいいものか、核を手の上でコロコロと転がして持て余していると

 「嬢ちゃん、メニューを開いてアイテムボックスに入れてポイントに左上にある変換ボタンを押せばいいんだぜ。」

 見かねた鬼の人が私に説明してくれた。ありがとう。しかし3人組の最後の一人の普通そうな人が小声で鬼をたしなめていた。

 「ばか、神がさっきみんなに説明してただろう、本当にもらっていいのかどうか戸惑ってたとかそんなところじゃないかな。」

 すいません、説明聞いてませんでした。というわけにも言わず私は核をもらったのと説明をしてもらったお礼を言って核を早速ポイントに変換することにした。

 スライムの核はいったい何ポイントになるんだろうか100くらいかな。でも雑魚だしあんまり期待しないでおこうと思っていたが変換してみたら驚きのお値段なんと1つ300ポイントのお値段が付いた。

 「スライムの核は300ポイントなんですね」

 私は思わずそうつぶやいた、それを聞き逃さなかった糸目のいい奴は聞いてもない情報をさらにこちらに教えてくれた。

 「日替わりランチとかいうのを毎日食べていたら一日に1500ポイントくらい使っちまうからな、でも一日に5体もスライムをしばいておけば最低限生きていけるってことだな。」

 すると普通そうな人も続いてしゃべりかけてきた。

 「俺たちはさっき2階まで行ってきたんだけど2階の敵はエレメント、空中を浮遊するスライムみたいなものだったよ。けどエレメントの破片、ドロップアイテムのことなんだけど600ポイントもしたんだ。できれば2階まで行って狩りをしたいんだけど転移門とかはないらしいからここを1階から歩いて行かないといけないのがネックかな。」

 鬼の人も会話に参加したかったらしくてこっちに混ざってきた。

 「でも1階は慣れれば20分もかからずに2階にまで行けそうじゃないか。メニューにマップ機能もあるわけだし。」

 鬼の人の発言で新事実が発見された。どうやらメニューのマップ機能で今まで歩いた場所が勝手にマッピングされるらしい。便利だね。

 さっそくマップを開いてみた、20分も歩いたわけだし結構な距離マッピングされたんじゃないだろうか。

 もしかしたら明日は2階まで行けちゃうかもしれない、そうワクワクしながら私はマップを見たのだが……全然埋まってない。

 このマップ壊れてます。どうしてだろう、しょうがないので3人組に聞いてみることにした。

 しかしながら彼らにもこの現象のことはわからなかったらしい。

 「なんでだろうね、マップは壊れてないみたいだし敵にやられちゃうと入口に戻ってきてマップも消えてしまうのかな?」

 普通そうな男が私と一緒に少し迷宮を歩いてちゃんとマッピングできていることを確認して不思議そうにしていると糸目の人が突っ込みを入れた。

 「わざわざ神が敵に負けたら死ぬし、死んだらそこで終わりだって言ったんだぜ、あれは嘘じゃないだろ、だから負けたら入口に戻ってくるとかそういうことはないと思うぜ。」

 鬼の人も同意見だったらしくさらに言葉を重ねてきた。

 「そうなるとこの嬢ちゃんは20分近くここら辺をウロウロしてたわけになるが、しっかり歩いてたんだよな、そうなると実はこの迷宮に罠があって一定の個所を歩くことになってしまうとかそういうのがあるのかもしれない。」

 さっきまでの雰囲気から一転彼らはまじめに考察を始めた。もしも1階に転生者を惑わす罠があった場合、一気に危険が増すからだ。

 「状況を整理しよう、申し訳ないけどもうちょっとだけ付き合ってもらうよ。まずは迷宮に入ってからの行動を教えてほしいんだけど、いいかな?」

 私は普通の人がそう言ってきてばれてなければいいなと思っていたことがバレバレなことに気づいた。だったらさっさと着替えさせてもらったのに。

 けれどそれについて文句を言ってもしょうがないそう思って迷宮に入ってからの行動を説明することにした。説明は右手を迷宮の壁に添えるだけ。私は謙虚に生きることに決めたのだった。何も言わないほうがいい20分間の探索だったわけではない。

 「てえと、嬢ちゃんは右手を迷宮の壁につけて迷わないように攻略してきたんか、やるじゃねえか」

 鬼の人がほめてくれたね、その調子でほめてください調子に乗れます。

 乗りに乗った私は迷宮に入ってからのいろいろを説明しないで端折りつつ迷わないように右手をつけて歩いていたことや実はスライムに敗北する前に10体ほど倒したことを説明した。少し話を盛っただけだ、ばれやしない。

 ちなみに核のポイントを知らなかったため倒したという嘘は一瞬でばれた、ちょっと和ませたかっただけじゃないですが許してください。

 「嘘をつくのはやめてくださいね、ところで右手の法則にしたがうと入口のすぐここで曲がってないといけないんですけど、ここまっすぐ進んでいますよね、なぜでしょうか?」

 急に流れ変わったな。そう迷宮に入ってすぐは別に心細くなかったので壁に手を添えていなかったのだ、添え始めて歩いたのは5分くらいたってからで……

 普通の人の目が怖い鬼より怖い。あの目に脅迫させられて結局心細くて手を添えただけなことを白状させられてしまった。鬼の人も残念なやつを見る目でこっちを見てる。やめろこっちを見るな。

 「つまりあなたは途中から右手を添えてしまったせいでここの壁が独立してるところを15分ほどグルグルと回っていたらしいですね」

 鬼よりも言葉が鬼な普通の人はマップのちょっと前までいた場所を指さしてグルグルと指でなぞってくれた。なるほどね完全に理解したわ。

「そりゃあ、20分歩いててもスライムと会わないわけだよな……」 

 心は鬼じゃない鬼の人は続きは言わないでいてくれた、その優しさが目に染みて私は涙目になった。

 

 

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